射水平野は富山県のほぼ中央に位置し, 日本海に面している.この平野 (約80km
2) は沖積世初頭において海であったのが, 河川の埋積作用の結果できたものである.
著者は, 平野内に散在する深度30~100mの井戸23個所について, その溶存成分の化学分析をおこない, 次の結果を得た.
(1) Key diagramによる水質区分をおこなった結果, 海水の浸入は平野中央部 (海岸線より約4km) にまで及んでいる.特に, 海岸地帯に存在する井戸水は極端に海水の浸入を受けており, そのNa/Cl値は海水よりも小さく, 逆に, Ca/Cl値は海水より大きな値を示し, さらに, 2価鉄イオン, 2価マンガンイオンおよびアンモニウムイオンは著しく多量認められ, 土壌粒子によるイオン交換作用を端的に示している.
(2) 溶存アルゴン量を基準にして, 溶存酸素や溶存窒素の飽和度を検討した結果, 平野中央部の井戸水は溶存酸素が著しく不飽和であり, 溶存窒素は過飽和となっており, 埋積地層に由来する還元的環境をよく現わしている.
(3) 溶存メタンが認められる井戸水は割合多いが, 溶存水素が認められる井戸水は殆んどない.このことは, 還元状態の進んだ環境では, メタンと共に生成した水素は微生物の代謝基質として利用されるためであると考えられる.
(4) 溶存アルゴンをトレーサーとして, 著者の任意時測定法によって地下水の流速を求めた結果, 庄川右岸の三角州地帯では20~80m/dayの値が得られた.
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