ブラジル,リオ・ドッセ湖沼群のドン・ヘルベシオ湖,ジャカレ湖およびカリオカ湖の生産層における尿素分解速度を雨季と乾季に現場法で測定した。表面水における尿素分解速度(尿素に由来する炭素の懸濁物への取り込み速度と,二酸化炭素として水中へ放出される速度の合計)は,ジャカレ湖の雨季に得られた低い値を除いて,15~41μmol urea・m
-3・d
-1であり,深度とともに減少した。富栄養化したカリオカ湖では,高い尿素分解速度が測定された。尿素分解の大部分は,二酸化炭素の放出の分画であった。表面水中の尿素の回転時間は,ドン・ヘルベシオ湖では雨季で6日,乾季で7日,ジャカレ湖では雨季で280日,乾季で8日,そしてカリオカ湖では雨季で4日,乾季で2日であり,これらの回転時間は深度とともに増加する傾向が認められた。本研究結果は,尿素はバクテリアよりも植物プランクトンによってより分解され,熱帯湖の生産層でも,雨季乾季ともに,尿素は速やかに循環する生元素化合物であることを示している。
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