この論文では,長期連続観測の結果に基づいて,一年間を通してみた琵琶湖の流況の特徴を調べ,同じデータを使用してスペクトル解析を行った。
最初に,ベクトルダイヤグラムを描いて,成層期と非成層期,上層と下層の流れを比較した。その結果,成層期の上層には環流の存在を示す一定方向の流れがあり,非成層期には環流は存在しないことが分かった。
次に,上層の水温の変化と流れの関係を調べた。下層の水温は年間を通じて約7℃と一定であり,上層の最高水温は約30℃で,較差は20℃以上になる。そして,非成層期の流れの変動は小さいが,成層が進み上層の水温が約10℃を越えると,流れの変動が激しくなり,流速の平均値が不規則に変化する。これは,成層する事によって,風の影響が上層にだけ閉じこめられ,下層までおよび難くなったために,非成層期に比べて,相対的に風速の弱い成層期の方が,風の影響のために流れが不規則に変動するものと思われる。風と流れの関係は複雑であり,簡単な相関分析では互いの関係は見いだせなかった。
最後に,長期連続観測のデータを使用して,FFTによってスペクトル解析を行った。風の強制振動である80~90時間と24時間周期の成分が見られ,日周変化を示す24時間の成分は非成層期に特に顕著である。40~50時間周期の内部波はあまり明瞭には見つからなかった。20時間周期の慣性振動と,11時間~17時間周期のボアンカレ波による周期成分も見られることがあった。
抄録全体を表示