陸水学雑誌
Online ISSN : 1882-4897
Print ISSN : 0021-5104
ISSN-L : 0021-5104
61 巻, 3 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
  • 堀 麻衣子, 森川 和子
    2000 年 61 巻 3 号 p. 223-231
    発行日: 2000/10/30
    公開日: 2009/06/12
    ジャーナル フリー
    秋川中流域西青木平橋において,河床石面付着層に生息する原生動物の個体数密度および種類構成の季節変動を1997年10月から1998年12月にかけて調査した。原生動物の個体数密度の変動は,付着層の乾重量で表わされる現存量の変動とほぼ一致しており,さらに付着層のクロロフィル量,細菌密度とも有意の相関関係を示した。しかし,乾重量が同じように最大値を示した1998年2月と5月の原生動物の個体数密度を比較すると,5月の値は2月の値の約半分にとどまり,原生動物固有の変動も見られた。新たな付着層の形成に伴って,まず鞭毛虫が検出され,続いて肉質虫,繊毛虫が加わった。原生動物を鞭毛虫類,肉質虫類,繊毛虫類,判別不可能の4グループに分けてその構成割合をみると,ほとんどの試料において鞭毛虫類が優占しており,優占種はBodo spp.(ボドヒゲムシ)であった。
  • 平 誠
    2000 年 61 巻 3 号 p. 233-239
    発行日: 2000/10/30
    公開日: 2009/06/12
    ジャーナル フリー
    尾瀬ケ原の池溏における,甲殻類プランクトンの現存量と種組成を,1996年と1997年に調査した。各池溏を通じて出現頻度が高かったのは,橈脚類のAcanthodiaptomus pacificusと枝角類のDiaphanosoma brachyurum, Daphnia roseaの3種で,このうち出現個体数が最も多かったのはA.pacificusであった。主要な3種のうち,A.pacificusの優占度とセストン量の間には負の相関関係があり,D.roseaの優占度とセストン量の間には正の相関関係のあることが認められた。また,甲殻類プランクトンの現存量と池溏のセストン量との関係を調べたところ,両者の間には負の相関があり,甲殻類プランクトンの現存量,特にA.pacificusの出現量が多い池溏ほどセストン量が少なく,池水も透明になる傾向がみられた。この結果は,池溏のセストン量が甲殻類プランクトンに影響されていることを示唆している。一方,A.pacificusの抱卵数は,セストンの多い池溏で高くなる傾向がみられ,セストン量の多い池溏の方がA,pacificusの餌条件はむしろ好適であることが認められた。
  • 竹内 良範, 山田 卓三
    2000 年 61 巻 3 号 p. 241-250
    発行日: 2000/10/30
    公開日: 2009/06/12
    ジャーナル フリー
    ヘビトンボProtohermes grandis (Thunberg, 1781)(広翅目,ヘビトンボ科)の生活史を,兵庫県内の4河川(杉原川,越知川,円山川,木津川)で比較した。また,各河川の水温条件と餌条件が,生活史や成虫の体サイズにどのような影響を及ぼしているか検討した。木津川では大部分の個体が2年の幼虫期間を有していたが,他の3河川では,幼虫期間が2年の個体と3年の個体が混在していた。上陸間近の終齢幼虫は,杉原川ではおよそ6月から8月上旬まで,越知川と円山川では6月から7月中旬まで採集されるのに対して,木津川では5月しか見られなかった。杉原川では成虫の出現期間が最も長く(6~9月),木津川では最も短いと推定された。木津川では終齢幼虫の頭幅が他の3河川に比べて小さく,成虫も小型化していると推定された。4河川の年間の積算温量(≧12℃)は1300~1900℃dayであった。日本から台湾(中華民国)にかけて分布するヘビトンボ属4種15個体群の生活史の比較調査から,年積算温量900~2300℃dayにおいて幼虫期間が2年,または2年と3年が混在することが知られており(Hayashi,1994),本研究結果はこの範囲内に包含された。また,この15集団の比較調査から,幼虫期に利用可能な餌の個体数密度(とくに大きな餌の密度)が低下している河川では,幼虫の成熟時の体サイズ(終齢幼虫や成虫の体サイズ)が小型化することが示されている。本研究においても,終齢幼虫の体サイズが小さかった木津川では,他の3河川に比べて餌の個体数密度(とくに大型の餌の密度)が低い傾向があった。逆に,大型の餌の個体数密度が高かった杉原川,越知川,円山川の3河川では,成虫の体サイズが,これまで知られているヘビトンボ属の個体群の中でも,最大の部類に位置づけられることが明らかとなった。
  • 三橋 弘宗
    2000 年 61 巻 3 号 p. 251-258
    発行日: 2000/10/30
    公開日: 2009/06/12
    ジャーナル フリー
    東京都多摩川水系秋川において,ニッポンアツバエグリトビケラNeophylax japonicus とコイズミエグリトビケラNeophylax koizumii の流程分布及び生活史の調査を行なった。上流域にはニッポンアツバエグリトビケラが,下流域にはコイズミエグリトビケラのみが分布しているが,比較的広範囲で両種の分布の重複がみられた。両種が同所的に生息する地点で生活史の調査を行なった。この2種はともに年一化の生活環をもち,ニッポンアツバエグリトビケラは,コイズミエグリトビケラよりも3ケ月早く12月に初齢幼虫が,1ケ月早く10月に成虫が出現した。両種間で幼虫,蛹,成虫の出現期間にずれがあったが,幼虫期の一部と前蛹期では,出現期間の重複が認められた。両種の幼虫が重複して出現する時期に,微生息場所の物理環境条件を調べたところ,両種間で齢期構成は異なるが,ニッポンアツバエグリトビケラはコイズミエグリトビケラと比して,より流速が早く水深が深い場所に分布していた。また,両種ともに前蛹期と蛹期が生活環の半分以上の期間を占め,この時期に集合性を示すことがわかった。
  • 草野 晴美
    2000 年 61 巻 3 号 p. 259-266
    発行日: 2000/10/30
    公開日: 2009/12/11
    ジャーナル フリー
    北海道の3ケ所の水域においてオオエゾヨコエビの生活史と繁殖形質を調べ,比較した。大きな湧水流(恵庭市)では一年を通して幼体から繁殖中の成体まで見られ,小さな湧水流(札幌市)および湖(千歳湖)では繁殖期が秋から春に限られる世代のそろった一年性の生活史が見られた。成体サイズは恵庭<札幌<千歳の順に大きく,卵サイズには恵庭>札幌≒割千歳,一腹卵数には恵庭<札幌<千歳,また一腹卵容積には恵庭≒札幌<千歳の関係が認められた。これらの結果を各生息場所の環境条件と対応させたところ,水温変動が大きな所では繁殖期が水温の低い秋から春に限定され,また餌条件がよい所では成体サイズや一腹卵数が大きくなることが示唆された。また本種の卵サイズは全体として,同属の湖沼種と流水種の中間的な値であったが,札幌・千歳では小卵多産的,恵庭では大卵少産的な傾向が認められた。
feedback
Top