わが国の農耕地土壌に対する各種有機性廃棄物コンポスト施用の影響を明らかにするため,8土壌群12点の土壌に対して豚ぷん,下水汚泥,都市ゴミの各コンポストを添加し,6か月間培養して土壌養分の経時変化を検討した.結果を要約すると,以下のとおりである.1)NH_4-Nは,豚ぷん区で培養初期に高濃度を示したが,その後急減し,6か月後にはすべての土壌で微量になった.この傾向は,石灰質灰色台地土,暗赤色土および砂丘未熟土で顕著であった.汚泥区では豚ぷん区と同様に初期に高いが,その後の減少の程度は土壌によって異なり,褐色低地土,灰色低地土,一部の褐色森林土および赤色土では6か月経過後もかなりのNH_4-Nの残存が認められた.都市ゴミ区では,6か月間を通じてすべての土壌でNH_4-Nはきわめてわずかにすぎなかった.2)NO_3-Nは,コンポスト添加により,ほとんどの土壌のすべての区で経時的に急速に増加した.この増加は,コンポスト間では豚ぷん>都市ゴミ>汚泥の順であった.6か月後のNO_3-N含量は,各コンポスト添加区とも,黒ボク土,一部の褐色森林土,褐色低地土,灰色低地土が勝った.3)都市ゴミ添加の場合,各土壌とも初期に,コンポスト分解によって生成した無機態窒素が一時的に有機化することがわかった.また石灰質灰色台地土および暗赤色土では,アルカリ反応によりNH_4-Nの一部が揮散し,さらに可分解性有機物を多量に含む土壌では,硝酸の一部が脱窒によって失われる可能性のあることを指摘した.4)有効態リン酸は,特に豚ぷん区で石灰質灰色台地土と暗赤色土が常に高い含量を示した.また,黒ボク土では,コンポスト分解によって生成した有効態リン酸の一部が固定されて無効化することが明らかになった.5)交換性カリウム含量は,すべての土壌で経時変化はわずかであった.また,各土壌とも,交換性カリウム含量はコンポストのカリウム含量にほぼ比例することが認められた.6)交換性カルシウム含量は,石灰質灰色台地土と暗赤色土で常に高く推移した.その他の土壌の交換性カルシウム含量は,コンポストのカルシウム含量にほぼ比例し,経時的な変化はわずかであった.7)以上から,添加コンポストに対する反応が土壌群あるいは土壌統群により異なる傾向を有することが明らかにされ,土壌類型別に有機性廃棄物投与に関する基礎的な指針が提示された.
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