日本土壌肥料学雑誌
Online ISSN : 2424-0583
Print ISSN : 0029-0610
92 巻, 6 号
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目次
報文
  • 安藤 薫, 日置 雅之, 遠山 孝通, 黒野 綾子, 小田 紫帆里, 柏木 啓佑, 瀧 勝俊, 中村 乾, 加藤 英孝, 鈴木 克拓, 馬場 ...
    2021 年 92 巻 6 号 p. 439-446
    発行日: 2021/12/05
    公開日: 2021/12/16
    ジャーナル フリー

    中干しのある移植栽培では,出穂期前後計6週間にわたり湛水状態で維持する場合に比べ,3日間湛水・4日間落水(3湛4落)を6回繰り返すことで玄米中無機ヒ素濃度の低減が可能とされている.本研究ではV溝直播栽培における落水によるヒ素低減効果および出穂期前後に実施する4日間落水の回数を6回から3回に減らした場合の効果の解明を目的とした.V溝直播栽培において,落水を繰り返すことで体積含水率の低下および酸化還元電位の上昇は早まる傾向を示した.土壌溶液中の総ヒ素濃度は湛水区に比べて落水区で低下し,玄米中無機ヒ素濃度は落水3回区,落水6回区で湛水区と比べて有意に低下し,落水3回区と落水6回区の間に有意差はなかった.また,コメの収量は出穂期前後に晴天・高温が続いた年は落水によって減少傾向を示したが,平均的な気温で推移した年は減少しなかった.V溝直播栽培は移植栽培に比べ根が表層0–5 cmに集中しており,晴天・高温が続くとイネが水ストレスを受けやすい可能性が示唆された.落水によって土壌水マトリックポテンシャルが−70 kPaとなる場合もあり,イネが水分ストレスを受け整粒歩合が低下した可能性が考えられる.したがって,V溝直播栽培では高温・晴天が長期間続く場合を除き,出穂期前後計6週間に4日間の落水を3回行うことで収量を落とすことなく落水6回に近い玄米中無機ヒ素濃度低減効果を得ることができると考えられる.

  • 原 嘉隆
    2021 年 92 巻 6 号 p. 447-458
    発行日: 2021/12/05
    公開日: 2021/12/16
    ジャーナル フリー

    大麦作で低収となる湿害の要因解明のため,滞水して生育等が悪かった湿潤圃と,滞水しないが湿害の発生を図るため灌水した灌水圃と,灌水しない非灌水圃において,大麦を栽培し,湿害に関係すると考えられた含水率,酸素濃度,酸化還元電位(Eh)を作土または耕盤で経時的に計測した.3年の試験で少雨等により生育差がみられない場合もあったが,大麦の収穫した地上部乾物重は湿潤圃<灌水圃≦非灌水圃という傾向で,湿潤圃は他と比べて低かった.含水率は,通常,作土が耕盤より低いが,降水後は作土でより高まり,作土が耕盤よりも高くなる場合もあった.酸素濃度は,降水後で低く,作土よりも耕盤でその傾向が強く,0に至る場合もあった.一方,降水が少ない場合,1月が最も高く,5月が最も低く,温度に依存する飽和溶存酸素濃度を反映していた.Ehも降水後に低く,作土よりも耕盤でその傾向が強く,また条間よりも株元で低い傾向があった.降水が少ない場合,時期による差異は小さかったが,降水による低下は3月以降で大きく,5月には−0.1 Vまで下がる場合もあり,中には一時的に−0.2 Vまで下がる計測地点もあった.以上から,暖地の滞水しやすい圃場では,3月以降の暖かい時期に降水等によって湿潤条件が続くと,土壌における酸素濃度とEhが著しく低下することが確認され,これらの著しい低下が湿害の発生に関わっていることが推察された.

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