1)北海道における主要作物について,比較的高収をあげた状態下での各種養分要素の吸収量,収穫指数について調査し,各種作物の収穫物の圃場よりの持ち出しによる要素の持ち出し量,および収穫残渣である茎葉を圃場に還元した場合の要素の回収量について論じた.2)収量対応要素吸収量(収穫物乾物1t生産に対応する要素吸収量)はN,P,K,Ca,Mg,Znなどでは作物ごとに比較的安定した値を示したが,Fe,Mn,Cu,B,Na,Siなどでは作物特性に加えて土壌条件によって大幅に変動した.3)要素吸収量は収量対応吸収量と収量の積で表すことができ,たとえばテンサイでは収量が高いために各要素とも吸収量が多く,一方,ダイズのN,イネのFe,Mn,Si,テンサイのNaなどについては,収量対応吸収量が大きいために吸収量が多かった.4)要素の収穫指数はN,Pで高く80%以上の作物が多いのに対し,Ca,Fe,Siでは低く数%の作物が多かった.なお,収穫指数の作物間差も大きく,たとえばN,Pの収穫指数はダイズでは85%以上であるのにテンサイでは50%以下であり,Kについてはダイズ,バレイショで60%以上であるのにイネ科作物では10%程度であった.5)以上の資料に基づいて作物栽培を行い,収穫物を圃場から持ち出した場合の要素持ち出し量および収穫残渣を圃場に還元することによって回収しうる要素量は,作物種,要素の種類によって著しく異なることを指摘した.
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