高吸水性ポリマー混合土壌からの蒸発,塩類の洗脱ならびに混合土壌における野菜の生育と養分吸収の関係について検討した.用いたポリマーはビニルアルコール・アクリル酸ナトリウム供重合体を主成分とするもの(略称SIG),土壌は花こう岩由来のマサ土(砂質土壌),水田作土(沖積土壌)および黒ボク土(火山灰土壌)である.結果は次のように要約される.1)同一条件下でのSIG混合土壌からの積算蒸発量は,対照区に比べて小さかった.深さ別の水分分布をみると,下層の乾燥はSIG区のほうが対照区に比べて緩慢であったが,表層は対照区に比べて短期間に強く乾燥したこれはSIG内部から表面(蒸発面)への水の移動量が蒸発量を満たし得ないことならびにSIGの乾燥と収縮によって生じた空隙による液状水の移動抑制のためと解釈される.2)SIGを土壌に混合すると塩類(NH_4^+, NO_3^-, K^+)の洗脱を抑制する.これは,ゲル構造による塩類の"機械的閉塞",陽イオンの吸収(交換)および陰イオンの排斥という三つの働きの相殺的集計と見なすことができる.一方,リンの洗脱は砂質土壌では促進され,火山灰土壌では認められなかった.3)野菜の栄養成長は,土壌の種類,かん水頻度,野菜の種類によらず,SIGの混合区のほうが優っていた.その程度はかん水頻度が多いほど,またSIG混合割合が多いほど大きかった.生育量の差は,草丈,葉数,地上部重と地下部重および葉長×葉幅に現われた.地上部の充実度合を乾物率と地上部重/草丈比でみると,対照区と同等またはこれより優っており,苗質も同様であった.また,SIG混合はトマトでは第一番花が開花するまでの日数を短縮し,生殖生長も促進した.栄養生長と生殖生長の促進は次の理由によるものと考えられる.(1)SIG混合により土壌の保水量が増加したこと,(2)土壌の物理性が改善された(気相の増加)こと.4)SIG混合土壌で育成したトマトとキュウリの地上部の養分吸収で共通しているのは次の点であった.(1)N含有率はSIG混合区のほうが対照区より低い,(2)三要素の吸収量とNに対するP_2O_5とK_2Oの吸収量の比率は,逆にSIG区のほうが対照区より大きい.このことからすると,SIG混合土壌で栽培した野菜のほうが対照区より水ストレスの受け方が軽いと判断された.
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