トウモロコシ幼植物のカルシウムとマグネシウム吸収における,元祖間の拮抗作用を数量的に解析するため,培養液中カルシウムおよびマグネシウム濃度をそれぞれ 0.5 ,1.0,1.5,2.0,2.5 mmol L^<-1> として,カルシウム濃度を変化させたカルシウム系列とマグネシウム濃度を変化させたマグネシウム系列を設けて,4週間,通気水耕栽培した.前者系列にはマグネシウムを,後者には塩化カルシウムをそれぞれ 1.5 mmol L^<-1> ずつ加えた.3週間または4週間培養後,幼植物の葉身,茎,根,について,カルシウムおよびマグネシウム含有率を測定した.培養液にカルシウムを添加すると,組織中カルシウム濃度は若干上昇し,マグネシウム濃度は低下した.また,培養液にマグネシウムを添加すると組織中マグネシウム濃度は上昇し,カルシウム濃度は若干低下した.カルシウム系列について,0.5 mmol L^<-1> 区の組織中カルシウム濃度に対する各区のカルシウム濃度増加量(ΔCa) と,組織中マグネシウム濃度に対する各区のマグネシウム濃度の減少量 (ΔMg) を求め, ΔMg/ΔCa値を求め,各区の値を平均して,カルシウムのマグネシウム吸収に対する抑制効果とした.葉身部で,3週間目の抑制効果は 18.93±9.31 ,4週目で13.42±8.74 となった.マグネシウム系列についても,上記と同様の考え方で ΔCa/ΔMg 値を求め,マグネシウムのカルシウム吸収に対する抑制効果とした.葉身部で3週間目に 0.69±0.58,4週目には 0.15±0.05 となった.マグネシウム吸収に対するカルシウムの抑制効果が,カルシウム吸収に対するマグネシウムの抑制効果にくらべ,きわめて大きい.前報でトマト幼植物の場合は,マグネシウムの効果が大であったことと比較し,植物のカルシウム吸収量の相違により,各元素の吸収抑制効果が変化することが明らかになった.
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