医療と社会
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26 巻, 2 号
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巻頭言
産官学シンポジウム2016講演録
ASEANにおける医薬品アクセス問題と企業進出―インドネシアでの調査を踏まえて―
開会挨拶・来賓挨拶・座長趣旨説明
基調講演
パネルディスカッション
研究ノート
  • 奥野 友理子, 本屋 愛子, 高嶋 克義, 徐 恩之
    2016 年 26 巻 2 号 p. 167-178
    発行日: 2016/08/10
    公開日: 2016/09/02
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,病院組織における新たな医療機器の導入に対する医療従事者の態度が,医療従事者の自己犠牲志向の程度と病院組織の部門間連携の状況によって影響されることを明らかにすることである。

    本研究では,病院組織における新機器の導入に関する問題をイノベーション受容の視点から捉え,医療従事者の自己犠牲志向と部門間連携が新機器受容を高めることについての仮説を導出したうえで,医療従事者を対象とする質問票調査データに基づく仮説検証を実施した。その結果,医療従事者の自己犠牲志向が低い場合においては,部門間連携による新機器受容への正の影響が強まるものの,自己犠牲志向が高い場合には,その影響が弱くなることが確認され,医療従事者の自己犠牲志向の程度が部門間連携と医療従事者の新機器受容の正の関係を抑制する働きをすることが示された。この結果から,自己犠牲志向が高い場合には,医療従事者が他部門を巻き込むことへの配慮が高まり,新機器受容の意向を抑制することが推測された。このことに基づけば,病院組織の新機器導入を進めるためには,医療従業者の心理的要因を考慮する必要があり,部門間連携か自己犠牲志向の一方を高めるような戦略が有効であるという実践的インプリケーションを導くことができる。

  • 中田 達大, 楊 珏, 馬奈木 俊介
    2016 年 26 巻 2 号 p. 179-196
    発行日: 2016/08/10
    公開日: 2016/09/02
    ジャーナル フリー

    医療システムの持続可能性について考える際,いかに医療支出を抑えながら医療の質を維持・向上していくかが重要である。診療報酬制度は医師へインセンティブを与えるため,医療の質と医療支出に影響を及ぼす重要な医療政策と認識されている。

    本研究は1990年から2013年のOECD34カ国のパネルデータを用いて,報酬制度が医療の質と医療支出に与える影響について定量的に検討する。さらに,それらの影響が国の所得レベルに応じて,いかに変化するか考察する。対象はプライマリ・ケアの出来高払い制度,人頭払い制度,給与制度であり,変量効果モデルを用いた。分析結果から分かったことは以下の3点である。

    1)所得レベルの向上に伴い,医療の質に関しては,出来高払い制度が最も大きな効果を得られる制度である。さらに,報酬制度が総医療支出に及ぼす影響に有意な差がない結果から,医療の質(指標として潜在喪失人年を用いた)と支出面の観点からの評価では,出来高払い制度が他の制度よりも優れている可能性がある。

    2)報酬制度は患者負担と公的機関負担の医療支出の両方に有意な影響を与え,公的医療支出への影響が所得レベルの向上に伴ってより強まる。

    3)所得レベルが向上した時に,患者負担と公的機関負担の医療支出を増加させる効果は出来高払い制度が最も大きい。その理由として,医療技術の向上が与える影響について議論した。

    以上の結果は,今後の報酬制度のあり方に関する議論に重要な示唆を与え得る。

  • 医療分野の視点から
    加藤 明日香
    2016 年 26 巻 2 号 p. 197-206
    発行日: 2016/08/10
    公開日: 2016/09/02
    ジャーナル フリー

    目的:国内外の2型糖尿病患者が経験するスティグマに関して,実践的な医療分野の視点から,今日までどのような研究が進められているのかを把握することを目的として,文献レビューを行う。

    方法:PubMed,MEDLINE,PsycINFO,CINAHL,医中誌,CiNiiの検索エンジンを用いた。文献検索に用いたキーワードは,PubMedとMEDLINE,PsycINFO,CINAHLでは“type 2 diabetes AND stigma”,医中誌とCiNiiでは「2型糖尿病ANDスティグマ」とした。選択論文は,1963年1月~2015年7月に発行された査読付き原著論文とした。

    結果:分析対象となる研究論文は合計15本であった。2型糖尿病患者が経験しているスティグマを主題として取り組んだ研究論文が2本,他に研究主題があり,その分析結果として2型糖尿病患者のスティグマが検出された研究論文が13本であった。研究デザインは,質的研究13本,量的研究2本であった。2型糖尿病患者におけるスティグマの影響は,診断前・診断直後の健康行動からすでに始まっており,その影響は治療開始後の自己管理行動に及び,長年にわたる闘病生活において,2型糖尿病患者が社会的サポートを受けることを難しくしていることが明らかとなった。

    考察:今後,2型糖尿病患者の自己管理行動を支援する介入研究に発展させていくためには,現在「スティグマ」という広い概念として研究されているところを,「実際のスティグマ」「感じられたスティグマ」「内在化されたスティグマ」の3つの概念に分け,それらを定量的に測定する2型糖尿病患者のための尺度を開発し,まず,その影響の大きさと分布を正確に明らかにした上で,最も有効な介入ポイントを特定していく必要があると考える。

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