システム農学
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33 巻, 3 号
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シンポジウム論文
  • 塩見 正衞
    2017 年 33 巻 3 号 p. 69-76
    発行日: 2017/12/30
    公開日: 2018/10/22
    ジャーナル フリー

    農業研究に中心をおいた農学が専門化・深化していく中で、当然の帰結として研究領域は細分化・尖鋭化していった。このように細分化・尖鋭化した農学を再統合して一つの新しい学際的研究としての領域を構築することを目指し、1984年、「システム農学会」が設立された。2016年10月、東京大学本郷キャンパスにおいてシステム農学会の設立30年を記念し、「これまでの活動を振り返り、これからの30年をどのように進めていくか」についてのシンポジウムが開かれた。わたしは、システム農学会の活動を、(1)システム研究の発展、(2)個別の専門研究領域への貢献、(3)国際的あるいは日本の農業技術への貢献、また(4)日本の農業政策に対する影響力などの観点から厳しく振り返り、将来を見通さなければならないと述べた。本論はわたしの当日行った講演をまとめたものである。

  • 広岡 博之
    2017 年 33 巻 3 号 p. 77-84
    発行日: 2017/12/30
    公開日: 2018/10/22
    ジャーナル フリー

    システム農学はこの50年以上にわたり発展してきたが、モデル化手法は様々な分野において中心的な分析手法であった。本論文では、農業システムモデルの簡単な歴史と今後の展望を要約し、検討した。最初に、従来の実験的アプローチとシステム論的アプローチの相違を明らかにした。次に、わが国と海外における農業システムモデルの歴史を概観し、モデル開発の目的として、生態系、群、個体、細胞、遺伝子レベルでは植物(作物)と動物(家畜)生産システムの理解、そして農家、地域、国家、地球レベルでは意思決定や政策決定を支援するための情報を提供することの2つであることを指摘した。最後に、将来システム農学が貢献できる新しい分野として、農業システム、持続的食料システム、食料の安全保障システムの3つを統合したモデルの開発とシステム生物学から得られた分子遺伝レベルの情報を統合したモデルの開発を提案した。

  • 守屋 和幸
    2017 年 33 巻 3 号 p. 85-88
    発行日: 2017/12/30
    公開日: 2018/10/22
    ジャーナル フリー

    「システム」という用語の一般的な定義は「相互に影響を及ぼしあう要素から構成されるまとまりや仕組みの全体」であるが、「システム」は柔軟性に富んだ多義性を有している。そこで、「システム」に関して、工学分野のみならず生物学分野などでの定義について言及するとともに還元主義とシステム論的アプローチの比較を行う。さらに、農学と農業の関係に触れ、農学・農業におけるシステム論的アプローチの必要性につて言及し、システム農学会の今後の課題等について述べる。

  • ―なぜシステム農学は生まれ、なぜ成長できなかったか-
    川島 博之
    2017 年 33 巻 3 号 p. 89-94
    発行日: 2017/12/30
    公開日: 2018/10/22
    ジャーナル フリー

    システム農学会がなぜ設立され、なぜ成長することができなかったかについて考察した。設立された理由は、農業の諸科学が細かく分かれすぎており、現実の問題を解決できなくなっているとの思いがあったためである。分野を超える学問分野が必要とされた。だが、日本人はシステム的な思考を好まない。これは日本人が島国でコメを作っていたからだと考えられる。日本人はコメを作るために小さな村に生きて来た。また、島国であるために、大陸にある国に比べて平和だった。そんな環境に育った人々は、他の分野には介入しないことによって、村の平和を保ってきた。このような気質がシステム農学の発展を妨げることになった。
    システム農学を、統計を用いた農学と定義しようとする試みもあったが、統計は他の分野でも用いられていることから、それによってシステム農学が大きく発展することはなかった。リモートセンシングとの組み合わせは、一時期、有力な分野になったが、グーグル・アースに代表されるように衛星画像が一般化した現在、それによってシステム農学を発展させることはできない。システム農学は、最初の志に立ち返って、多くの分野を統合するような研究を行う必要がある。

シンポジウム資料
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