システム農学
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4 巻, 1 号
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投稿論文
  • 榎 幹雄
    1988 年 4 巻 1 号 p. 62-73
    発行日: 1988/02/29
    公開日: 2024/02/05
    ジャーナル オープンアクセス
    都市近郊における森林利用の最適化を図るため森林利用計画システムを提案し、大阪府岸和田市をケーススタディとして森林の最適空間配置と林業政策のあり方を検討した。森林の配置計画では、まず計画地域をメッシュ区分して各メッシュの立地適性に関する因子をもとに立地区分を行い、林業的利用として適切なメッシュを選択した。次に林業的利用メッシュについて森林の機能に関する自然的、経済的、社会的因子から主成分分析により総合的な森林の機能特性分析を行い、木材生産、水源涵養、災害防止、保健休養の4機能を主成分スコアとして数量化した。このスコアをもとにメッシュ毎に高いスコアをもつ森林機能を選択し、最適配置図を得た。一方、この配置計画にともなって派生する林業政策上の諸問題を明らかにするため、森林所有者の森林利用に対する意識をアンケート調査によって解析した。そして配置計画から導かれた最適な森林利用とアンケート調査から得られた森林所有者の意識を軸に計画地域を類型区分し、各類型において森林利用を適正にする林業振興、森林保全施策を検討した。
  • 黒川 泰亭
    1988 年 4 巻 1 号 p. 74-86
    発行日: 1988/02/29
    公開日: 2024/02/05
    ジャーナル オープンアクセス
    育林投資を実行する主体が行うべき最も重要な経営上の意志決定は、どの林分をいつ伐採し、どの林分を残すかを判断し林分の成熟期を決定することである。林分の経済的成熟期の決定については、伝統的には林業較利学の中で取り扱われてきた。林業較利学は、計算の厳密さの点では優れているが、静態的計算モデルを前提とするため実践性が乏しいという欠点を持っている。この問題に対して、線形計画法の1種である多段階線形計画法が有効に利用できる。本稿では、まず育林投資における計算モデルを明らかにし、次にこの計算モデルをもとに育林投資の最適計画の策定に関する多段階線形計画法の適用の方法と適用結果について検討した。その結果、林分の経済的成熟期の決定問題に対して有効な策が提示できることが明らかにされた。この方法により、育林投資の最適化における林分の長期的取り扱いが具体的に把握でき、育林経営に関する意志決定に対して有効な情報が提供できる。
  • ―都市近郊の場合―
    榎 幹雄
    1988 年 4 巻 1 号 p. 87-98
    発行日: 1988/02/29
    公開日: 2024/02/05
    ジャーナル オープンアクセス
    都市近郊における森林所有者の森林・林業に対する意識をアンケートにより調査し、数量化手法を援用して解析を行った。森林機能に対する認識はコウルマン・モデルによる属性の規定力パラメータを計測した結果、経済的機能評価意識を規定する属性としては地区、所有規模における影響が強く、公益的機能評価意識を規定する属性としては職業、年齢による規定力が大きかった。森林・林業問題に対する認識は経営意欲を軸として明瞭に区分され、「林道」、「相続税」などに強い反応を示していた。数量化手法を用いた定量化により森林所有者の意識構造に3つの軸が導出され、それぞれ「経営意欲」、「経営方向」、「森林機能認識」を示す軸と解釈できた。これらの軸における属性グループのサンプルスコアをもとに意識構造の地域特性を求めた結果、都市近郊における森林所有者の高い公益的機能認識と森林総合利用化への意識が認められた。以上の結果をもとに都市近郊における林業政策のあり方について検討を行った。
  • ―中国林業を対象として―
    于 暁明
    1988 年 4 巻 1 号 p. 99-120
    発行日: 1988/02/29
    公開日: 2024/02/05
    ジャーナル オープンアクセス
    森林は人類の搖藍であり、人類の生存には欠かすことのできない基本的要素である。ゆえに、現代的な意味での林業の経営分析とは、林業の生態効益の確保を前提に、林業の経済効益を最大にするための最適生産量と最適伐期齢の決定問題でなければならない。しかるに、これまでの林業経営分析では、このうちの森林の生態効益は、これを全く考慮せず、ひたすら経済効益のみを追求してきた。それのみか、中国では経済効益すらも追求してこなかった。そのため、中国林業の発展は大きく阻害された。この障害を除去するために、本論文では、先ず社会主義国中国においても林業生産の商品経済化を推進するよう、その林業経営指導思想の転換を図る必要のあることを論証した。ついで、それを前提に、新しい林業経営分析のあり方を明かにした。具体的には、新しい観点に立っての最適生産量と最適伐期齡決定の問題を明らかにした。周知のように、林業は他のいかなる産業よりもはるかに長期の生産期間を必要とし、それが林業の最適生産量および最適伐期齢を決定するにあたり最大の困難事となっている。本論文は、この最も厄介な時間処理の問題に取り組んだものであり、具体的には、時間を直接可変的変数として取り扱う代わりに媒介的変数として取り扱うことによって、森林の生態効益を確保しながら、その経済効益を最大化するための手法を開発した。すなわち、中国林業を対象に「時間媒介的最適意思決定理論」の実用化を、コンピュータ・シミュレーションによって明らかにしたものであり、あわせて、その政策的意義の重要性を問おうとしたものである。
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