行政データを用いて原単位法により、千曲川流域(犀川流域を含む)における窒素負荷発生量の変遷を過去30年間にわたり調べた。流域内の窒素負荷発生量は22,000~25,000 ton N yr
-1であり、最大の窒素負荷発生源は畜産廃棄物、次は人間排出物(屎尿+雑排水)、農耕地からの流出の順であった。家畜飼養頭数・農耕地面積の減少にともない、畜産・農耕地由来の窒素負荷発生量は減少している。流域内の化学肥料流通量は、標準施肥量から算出した農耕地における必要施肥量を1980年頃より下回るようになり、その分、畜産廃棄物の農地還元が進んでいるものと推察した。化学肥料使用量の減少とそれを補う形での畜産廃棄物の農地還元、さらに屎尿処理施設・浄化槽・下水処理施設の普及の結果、千曲川への窒素負荷流入量は、1990年代半ばには1970年に比べ約40%減少し14,000 ton N yr
-1程度になっている。今後さらに窒素負荷流入量を削減するには、下水処理効率の改善と農耕地からの窒素流出防止が効果的であろう。
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