システム農学
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34 巻, 2 号
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研究論文
  • リエラ 麻子, 日野澤 義子, 築城 幹典
    2018 年 34 巻 2 号 p. 29-40
    発行日: 2018/05/31
    公開日: 2019/02/12
    ジャーナル フリー

    北海道および岩手県の生産技術体系をもとに、生産体系の異なる飼料生産を含む酪農の環境影響について、ライフサイクルアセスメント(Life Cycle Assessment, LCA)を用いて評価した。北海道の4種類(乾草、低水分牧草ロールサイレージ年3回刈り、放牧草、トウモロコシサイレージ)、岩手県の2種類(牧草ロールサイレージ年3回刈り、トウモロコシサイレージ)の飼料生産について、それぞれ3種類の施肥方法(化学肥料型、堆肥併用型、スラリー併用型)での環境影響を比較した。また、この結果を自給飼料生産の環境影響として加味し、北海道の4種類(40、60、100、400頭規模)、岩手県の2種類(40、100頭規模)の酪農体系について環境影響を比較した。評価項目は、地球温暖化負荷(Global warming load, GWL)、酸性化負荷(Acidification load, AL)および富栄養化負荷(Eutrophication load, EL)とした。飼料生産体系の機能単位はTDN1 kg当たり、酪農体系の機能単位は生産牛乳1,000 kg当たりとした。その結果、自給飼料生産時は有機質肥料を多用した施肥型において環境影響が高くなる一方で、酪農全体では、家畜排泄物の有効利用となるため、有機質肥料を多用した施肥型の影響が低くなることが明らかになった。酪農全体における北海道と岩手県との比較では、GWLで大きな差は見られなかったが、ALでは岩手県が高く、ELは北海道の方が高い結果となった。飼養頭数規模別では、生産規模が大きいほど環境影響は低くなるという結果が得られた。日本版被害算定型影響評価手法であるLIME2による環境影響の統合化の結果では、アンモニア由来のALの被害額が最も高かった。以上の分析結果から、酪農による環境影響は、家畜排泄物を自給飼料生産に有効利用するとともに、機械などの利用効率を高めることで軽減できることが示唆された。

  • 石塚 直樹, 岩崎 亘典, 坂本 利弘
    2018 年 34 巻 2 号 p. 41-47
    発行日: 2018/05/31
    公開日: 2019/02/12
    ジャーナル フリー

    2016年4月14日と4月16日に震度7を観測した平成28年度熊本地震(以降、熊本地震)は、大きな被害をもたらした。地震による被災農地圃場では、被害状況により復旧に向けた対策が異なってくる。このため、熊本地震が農地の地表に及ぼした影響について、ドローンを用いて調査した。ドローン空撮画像にSfM・MVS処理を行うことで3次元モデルを作成し、国土地理院の地理院地図から取得した座標値と地上における簡易測量結果を組み合わせることで、DSMを作成した。その結果、圃場の不陸量(圃場の平均標高値からの差)が計測・評価可能であることを明らかにした。ドローンで計測した不陸量は、公共測量の承認を受けた航空機LiDAR測量と比較したところ、有意な差が認められない精度を有していた。ドローンによる不陸計測の利点は、本研究で使用した機材においては、計測コストが航空機LiDAR測量の約1/3であり、加えて、迅速に機動的な観測が可能な点である。さらに、ドローン観測により確認された規則的な地表面の不陸について素因を探った結果、不陸の凹部が1962年撮影の航空写真の水路部分と一致しており、熊本地震により圃場基盤整備前の水路の埋め立て部分が沈下したことを明らかにした。

短報
  • 村上 幸一, 武田 慎吾, 峰友 佑樹, 中西 充, 佐鳥 新, 伊藤 那知, 竹内 佑介
    2018 年 34 巻 2 号 p. 49-54
    発行日: 2018/05/31
    公開日: 2019/02/12
    ジャーナル フリー

    日本の農業における作物の成分分析は、専門機関での破壊検査による方法が多い。しかし破壊検査は検査回数の増加に伴い、コストの増大や収量低下を招く。そのため非破壊での成分分析手法の確立が必要となる。本研究ではハイパースペクトルデータを用いた、非破壊での結球レタスの成分分析手法について検討した。具体的にはハイパースペクトルカメラから得られたスペクトルデータと、破壊検査で得られた含有無機成分の2つを、開発したPythonプログラムを用いて簡易に相関分析を行う手法について検討した。本手法により、リン、カルシウム、マグネシウムにおいて、ハイパースペクトルデータと相関の高い波長帯があることを確認した。ただし、カルシウムとマグネシウムの成分データ間には高い相関があるため、単波長反射強度と単相関係数からの成分濃度の推定には限界がある。今後の課題として、正規化スペクトル指数(NDSI)を用いた有効な2バンドの組み合わせの検証などが挙げられる。

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