システム農学
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36 巻, 1 号
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研究論文
  • -離散型選択実験による実証研究-
    清水 祐哉, 大石 風人, 園田 裕太, 加藤 弘樹, 木村 義彰, 広岡 博之
    2020 年 36 巻 1 号 p. 1-13
    発行日: 2020/02/25
    公開日: 2021/03/03
    ジャーナル フリー

    現在、世界各国の生産活動の肥大に伴い、二酸化炭素やメタン、一酸化二窒素などの温室効果ガス(GHG)の排出が問題となっている。そのような中、家畜生産からのGHG排出に対する削減方策の1つとして、有機性排出物をメタン発酵させるバイオガスプラントの利用が検討されているが、それには大規模な設備投資を必要とするため普及が難しいのが現状である。したがって、農家がバイオガスプラントを導入し稼動し続けるためには、国や地域行政の補助が欠かせないと言えるが、そのためにはバイオガスプラント導入に対する農家の潜在的な経済負担可能額を事前評価することが重要となる。そこで本研究では、北海道の酪農家を対象として、計量経済学的手法である離散型選択実験を用いて、酪農家がバイオガスプラントの導入・維持に対し潜在的な経済負担可能額としてどれだけの支払意志額(WTP)を示すかを定量評価することを目的とした。本研究では、2017年10月から11月にかけて北海道酪農家38戸を対象にアンケート調査を行った。離散型選択実験の対象であるバイオガスプラントに対し、「発電量」、「GHG削減量」、「公害低減効果」および「費用」の4属性で選択セットを作成し、解析には条件付ロジットモデルおよび混合ロジットモデルを用いた。その結果、いずれのモデルを用いてもバイオガスプラントの属性のうち「発電量」が大きいものに対する選好が最も大きく、WTPも大きい値を示した。また、「発電量」ほどではないものの、「公害低減効果」と同様に「GHG削減量」に対しても選好の推定値は正に有意な値となり、酪農家がバイオガスプラント導入によるGHG削減効果に対しても潜在的に価値づけしていることが明らかとなった。混合ロジットモデルでWTPを推定した結果、対象の酪農家がバイオガスプラントの導入に支払えると考えている金額は乳牛1頭あたり年間約1.1万円という結果となった。

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