システム農学
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18 巻, 2 号
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投稿論文
  • -Benguet州Buguias郡Natubleng村を事例として-
    寺内 光宏
    2002 年 18 巻 2 号 p. 130-141
    発行日: 2002年
    公開日: 2023/12/04
    ジャーナル オープンアクセス
    近年、フィリピンにおいては、国民所得の向上により温帯野菜の需要が急増している。しかしながら、その主産地は、気象的条件により高地山岳地帯に限定されており、高地山岳地帯への農地拡大が急激に行われてきている。これらの主産地においては、伝統的な耕作方法による慣行型農耕システムでの野菜栽培がなされている。さらに、こうした高地山岳地帯の温帯野菜主産地においては、森林破壊、地力衰退、土壌流出等が、環境負荷として重大な問題となってきている。  以上の認識を背景として本研究における目的は、種々の環境負荷を与えているとされる慣行型農耕システムの下での野菜生産方式の性格を数量的な分析を用いて把握することである。具体的な課題は、第1に生物学的・化学的技術(Biological and Chemical Technology)生産関数の計測により要素結合構造の把握と効率格差を確認することであり、第2にBC技術生産格差と土壌肥沃度、土壌流出度等の耕地属性指標間の関係を把握することである。分析の結果、第1の課題に関しては、BC技術生産関数で把握される生産過程は、規模に関して収穫逓減の状態であり、肥沃度の低位な圃場で、経常投入財を集約的に利用していることから、経常投入財の要素貢献が十分になされていないことが明らかとなった。次に、第2の課題に関しては、緩傾斜地の土壌流出や地力低下等の耕地条件は、与件の問題として土地節約的な生産技術で高収益を実現していることが明らかとなった。今後、野菜生産の持続的発展のためには、環境保全型農耕システム導入の必要性が強く示唆される結果を示している。
  • 2. 現地詳細調査に基づく生態系炭素貯留量の推定
    賈 書剛, 秋山 侃, 小泉 博
    2002 年 18 巻 2 号 p. 142-151
    発行日: 2002年
    公開日: 2023/12/04
    ジャーナル オープンアクセス
    森林生態系における炭素貯留量を正確に評価するため、岐阜県高山市で1ヘクタールを10 m×10 mずつ100区に分割した冷温帯落葉広葉樹林(樹齢約50年の二次林)を用いて、生態系を構成する7つの部分別の炭素量に関する詳細かつ系統的な現地調査を行った。この森林生態系の地上部を①樹木、②林床のササおよび③立枯れ木に、地下部(土壌圏)は④リター、⑤粗大有機物、⑥根系および⑦鉱質土壌に分けて炭素貯留量を測定した結果、それぞれの貯留量は1ha当たり71.4 tC、2.8 tC、5.3 tC、15.3 tC、4.6 tC、22.9 tCおよび318.3 tCと推定され、生態系合計では440.6 tCとなった。当森林生態系を植物体部分と土壌部分に分けると、107.0 tCと333.6 tCであった。本研究は100区画について生態系の各構成部分すべての炭素貯留量を実測しているため、推定結果を生態系構成部分(例えば地上部と地下部や、植物体と土壌や、植生・リターと粗大有機物・土壌など)や、地形類型および土壌類型などのいろいろな生態系の内部構成の立場から、読み直して検討できる点で利点があった。また、土壌炭素貯留量の推定方法の改善に関連して、石礫率の適用および計算に用いる土層の深さの影響についても論述した。本研究における推定の手法や結果は、現在世界中で実施されている地球温暖化に対応した炭素循環研究のうちの冷温帯林生態系の炭素貯留量推定の一研究事例として、位置付けられるものである。
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