近年、フィリピンにおいては、国民所得の向上により温帯野菜の需要が急増している。しかしながら、その主産地は、気象的条件により高地山岳地帯に限定されており、高地山岳地帯への農地拡大が急激に行われてきている。これらの主産地においては、伝統的な耕作方法による慣行型農耕システムでの野菜栽培がなされている。さらに、こうした高地山岳地帯の温帯野菜主産地においては、森林破壊、地力衰退、土壌流出等が、環境負荷として重大な問題となってきている。
以上の認識を背景として本研究における目的は、種々の環境負荷を与えているとされる慣行型農耕システムの下での野菜生産方式の性格を数量的な分析を用いて把握することである。具体的な課題は、第1に生物学的・化学的技術(Biological and Chemical Technology)生産関数の計測により要素結合構造の把握と効率格差を確認することであり、第2にBC技術生産格差と土壌肥沃度、土壌流出度等の耕地属性指標間の関係を把握することである。分析の結果、第1の課題に関しては、BC技術生産関数で把握される生産過程は、規模に関して収穫逓減の状態であり、肥沃度の低位な圃場で、経常投入財を集約的に利用していることから、経常投入財の要素貢献が十分になされていないことが明らかとなった。次に、第2の課題に関しては、緩傾斜地の土壌流出や地力低下等の耕地条件は、与件の問題として土地節約的な生産技術で高収益を実現していることが明らかとなった。今後、野菜生産の持続的発展のためには、環境保全型農耕システム導入の必要性が強く示唆される結果を示している。
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