インドネシアの首都ジャカルタ市では、近年の急激な都市化の影響で、河川および地下水の水質汚染が深刻な問題となっている。これまで河川については、水質汚濁指数(
WPI, Water Pollution Index)を用いたジャカルタ市流域の水質汚染に関する多くの研究が進められてきた。その一方で、現在も飲み水として利用される地下水については、降雨(雨季と乾季)や地質、地形等の複雑な影響で空間的な分布を評価することが困難なことから、その研究例は少ない。そこで本研究では、ジャカルタ市における地下水の水質汚染について、雨季と乾季における
WPI の空間的分布の違いについて明らかにすることを目的とした。河川および地下水の調査は、Jakarta Environmental Management Board(BPLHD)によって、2007 年7 月(乾季)、2007 年11 月(雨季)と2008 年8 月(乾季)の三時期に行われた。調査は、67 地点の河川水と市内75地点で地下水をサンプリングし、実験室で水質32項目について分析した。以上で得られた水質調査データを用いて、各地点における
WPI を算出した。以上で得られた雨季と乾季における河川と地下水の
WPI から、ジャカルタ市内における空間分布パターンを比較した。その結果、流域上流の南地区から下流にあたる北地区に向けて汚染が進んでおり、その傾向は降雨量の少ない乾季に顕著に現れていることが明らかとなった。以上より、ジャカルタ市北地区の住民においては、特に乾季の地下水の利用に注意が必要であることが示唆された。
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