米生産において生育指標の計測や推定は、追肥の意思決定、仕分け集荷のためのタンパク質含有率の推定および収量・品質の決定要因の解析等を行う際に欠かせない。本研究では、植物面積指数(
PAI)および葉緑素計値(
SPAD値)に基づき、単位土地面積当たりの稲体の乾物重(
PDW)、株当たりの茎数(
NT)、乾物重当たりの葉身窒素含量(
Ndw)、単位葉面積当たりの葉身窒素含量(
Na)および単位土地面積当たりの稲体の窒素吸収量(
NU)の生育指標を推定する方法を提案した。各指標の推定式の予測精度を評価するとともに、予測精度に影響を与える要因を明らかにした。その結果、
PDWの推定式のクロス・バリデーション時の平均相対誤差(
MRECV)は、出穂期までの生育期全体では23.3%であった。一方、生育時期別では分げつ盛期が48.3%と大きく、生育後期になるにつれて小さくなった。登熟中期の推定式は5.7%であった。
NTの推定式の
MRECVは、出穂期までの生育期全体では9.5%であったが、分げつ盛期の
MRECVは16.2%と他の生育期に比べて大きかった。
PDWと
NTの推定式の説明変数は生育後期ほど変動が大きく、推定式への観測データの寄与が大きかったことが、分げつ盛期の予測精度が低かった理由であった。
Ndwおよび
Naの推定式の
MRECVは、それぞれ15.3%、13.4%であった。
Naの予測精度が向上した理由は、
Naが
SPAD値と同様に葉厚に依存して変化する指標であるので、
SPAD値との線形関係の差異が各生育期において小さかったためである。
NUの推定式の
MRECVは、出穂期までの生育期全体では9.8%、登熟中期が4.0%であった。
NUの予測精度は主に
SPAD値による単位植物面積当たりの稲体の窒素含量の予測精度に依存した。
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