システム農学
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27 巻, 4 号
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研究論文
  • 山本 由紀代, 平野 聡, 内田 諭
    2011 年 27 巻 4 号 p. 137-148
    発行日: 2011/10/10
    公開日: 2015/06/04
    ジャーナル フリー
    高解像度衛星画像の普及にともない、人間の目視判読に近い分類結果が得られるオブジェクト指向分類が注目されている。オブジェクト指向分類は、対象画像を均質空間に分割する領域分割と、分割された領域をクラス特徴量に基づいて分類するふたつのステップによって実行される。テクスチャや形状など、多様な特徴量を分類に反映できることはオブジェクト指向分類の大きな利点であるが、的確な土地利用分類図を作成するには、分類に先立って行われる領域分割もまた重要な意味を持つと考えられる。そこで本研究では、インドネシア・スマトラ島南部のプランテーション地帯を撮影したQuickBird 画像から、①圃場区画、②作物の生育ムラ、③播種及び植え付け方法、に関わる農地の情報を把握するための領域分割用パラメータ及びクラス特徴量について検討した。本報告ではオブジェクトの均質性を形状情報で規定する “shape”と不定型さで規定する “compactness”に対してそれぞれ0.1、0.5、0.9 を与え、これらを組み合わせた9通りの試行の中から目視によって最適な組み合わせを決定した後、オブジェクトのサイズを規定する “scale parameter” を調整する手順を提案する。これにより、圃場区画を示す道路の形状や、生育ムラによって生じるパッチを領域分割に反映させるための定性的な知見が得られた。さらに、本手順で決定したパラメータによる領域分割結果に対して、スペクトル特徴量、テクスチャ特徴量、形状特徴量の組み合わせの中から最小クラス間距離が最大となる特徴量を用いて分類すると、パラメータを調整しなかった場合(マルチスペクトルデータ用デフォルト“shape”=0.1, “compactness”=0.5 を適用)に比べていずれも分類精度が3~32%向上し、とくに①圃場区画と②作物の生育ムラについては良好な分類結果が得られた。
  • -「危機の年」とその対処行動に注目して-
    佐々木 夕子, 田中 樹, 伊ヶ崎 健大, 真常 仁志, 飛田 哲
    2011 年 27 巻 4 号 p. 149-157
    発行日: 2011/10/10
    公開日: 2015/06/04
    ジャーナル フリー
    西アフリカ・サヘル地域の村落で農耕民および牧畜民の生業と暮らしを理解するため、ニジェール共和国南西部に位置するファカラ地域において、最近20 年間に地域住民が「危機の年」と認識した年とその際の対処行動について聞き取り調査を実施した。聞き取りの対象には世帯の異なる農耕民27人、牧畜民38人、農耕民女性40人を選定した。聞き取り調査の結果、同じ地域に居住していても生業を異にする農耕民と牧畜民とでは「危機の年」や対処行動が異なることが明らかとなった。また牧畜民の多くが家畜を売却することで危機に対処している一方で、農耕民は政府からの食糧援助や様々な生業を複合的に組み合わせることによって対処していることが分かった。さらに、この地域の2 ヵ村の農耕民女性に実施した聞き取り調査から、乾季に行われる小規模な野菜栽培が新たなオプションとして危機の回避に有効であることが示唆された。以上より、同じ地域に居住しながらも、生業の違いや乾季の副生業の有無などによって「危機」の認識や感受性と、その対処行動は大きく異なることが明らかとなり、干ばつや飢饉の常襲地域とよばれるサヘル地域の生業に内包されるリスク管理の仕組みを捉えることができた。
  • TRAN Thanh Duc, 田中 樹, 水野 啓, 小林 広英, 岡本 侑樹, LE Van An
    2011 年 27 巻 4 号 p. 159-166
    発行日: 2011/10/10
    公開日: 2015/06/04
    ジャーナル フリー
    近年、ベトナムは急速な経済発展を遂げている。一方で、ベトナム中部、中南部および北部山岳地域では、貧困問題の解決に向けた取り組みがなされている。貧困削減は、依然として地域開発支援における緊急の政策課題である。異なる社会・生態的環境のもとで、人々の暮らしや生業、世帯経済は多様であり、貧困の度合いやその状況は一様ではない。貧困削減に向けた地域開発支援の前提として、農業生態的特徴、生業活動および貧困に関わる生活環境について、地域の特性を踏まえて把握することが必要である。Tam Giang ラグーンに位置するHuong Phong コミューンのVan Quat Dong村とTien Thanh village村を調査地として、本研究では、生業活動と世帯収入源の特徴、貧困に関係する暮らしの状況の特定、これらの状況とベトナム政府が定める貧困指標(経済指標)との比較を行った。対象地域の主たる世帯収入源は、稲作、家畜飼養、ラグーンでの養殖であった。中でも、稲作は、種生業であり、世帯収入の多くを占めていた。これらの生業活動が行われる場は、低地であり、しばしば季節的な洪水に見舞われる。貧困指標(経済指標)に従うと、貧困世帯の割合は、Van Quat Dong 村で24%、Tien Thanh village 村で20%を数えた。一方で、貧困を反映すると考えられる幾つかの状況をみると、季節的洪水に比較的脆弱と思われる家屋が81%、トイレのない世帯が40.5%、慢性疾患を持つ家族を抱える世帯が40%であった。し尿やごみ、家畜小屋からの汚水は、暮らしに利用される周辺の河川や水路、ラグーンに流れ込んでいた。これらの数値の比較は、貧困指標のみで必ずしも地域の実態をうまく説明できないことを意味し、貧困の程度を知るには、自然災害への備え、衛生、健康および栄養状態などを考慮する必要があることを示している。
  • -東北部の事例-
    松本 成夫, パイサンチャローン コブキエット, 森 隆
    2011 年 27 巻 4 号 p. 167-178
    発行日: 2011/10/10
    公開日: 2015/06/04
    ジャーナル フリー
    バイオマス資源のエネルギー・マテリアル利用の開発において、バイオマス資源の広い面積での生産、収集・輸送、地域で異なる性質などから、地域を単位として多段階利用するバイオマスリファイナリーの発想は重要である。このような資源をくまなく利用するシステムにおいては、地域のバイオマス資源の発生量および利用実態の把握が重要である。本研究では、バイオマス生産量の高いタイの東北部における農作物副産物と作物加工工場有機廃棄物の生産量およびその利用実態を明らかにした。農作物は東北部で栽培面積、生産量ともに多い稲、キャッサバ、サトウキビを対象とし、農家圃場調査、農家への聞き取りおよび現地圃場試験の結果を基に、農作物副産物の生産量および利用状況を明らかにした。また、これらの作物を加工する精米所、キャッサバデンプン工場、キャッサバチップ工場、製糖工場に聞き取り調査を行い、有機廃棄物の量およびその利用先を明らかにした。圃場調査、聞き取りは主に2004~05 年に行った。これらの結果を基に、2003~05 年のコンケン県を事例に、これらバイオマス資源の利用可能量の見積もりを行った。その結果、食料を除くバイオマスは、稲および精米所から1.87 M t、キャッサバおよび加工場から0.62 M t、サトウキビおよび製糖工場から2.63 M t発生し、そのうち、利用可能なバイオマス量はそれぞれ0.37 M t、0.35 M t、0.42 M t発生していると見積られた。
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