システム農学
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27 巻, 2 号
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研究論文
  • 加藤 陽平, 大石 風人, 熊谷 元, 石田 修三, 合原 義人, 岩間 永子, 永西 修, 池口 厚男, 荻野 暁史, 広岡 博之
    2011 年 27 巻 2 号 p. 35-46
    発行日: 2011/04/10
    公開日: 2015/06/04
    ジャーナル フリー
    本研究では、メタン低減効果が期待されているアマニ油脂肪酸カルシウム(Ca)を利用した肉用牛肥育生産における環境負荷低減効果とその経済性を評価することを目的として、線形計画法およびライフサイクルアセスメント(LCA)の手法を用いて、アマニ油脂肪酸Ca の給与レベルに応じた環境影響および飼料コストの変化を検討した。一般的な肥育飼料にアマニ油脂肪酸Ca を飼料中乾物重量に対し0.0、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5 および3.0%添加した計7 種類の想定飼料それぞれに対して、線形計画法による最適化を行った。肥育後期(19~29 か月齢)において上記7 種類の飼料を用いた生産システムをそれぞれ想定し、飼料生産、飼料運搬、飼養管理、家畜および堆肥化における化石燃料の使用やふん尿からの揮散により発生する環境負荷物質量およびエネルギー消費量を計算した。算出された環境負荷物質量に、物質ごとの環境影響の重み付けを行うことで、地球温暖化、酸性化、富栄養化およびエネルギー消費の各環境影響項目に与える影響の大きさを推定し、飼料費との関係について検討した。機能単位は肥育後期における黒毛和種去勢肥育牛1 頭とした。最適飼料設計の結果、アマニ油脂肪酸Ca の添加レベルの上昇に伴い、濃厚飼料の量が低減する傾向が見られ、3.0%添加時においてはアマニ油脂肪酸Ca の1.6 倍量の濃厚飼料を節減できた。飼料費は添加レベルの上昇に伴い増加したが、地球温暖化、酸性化および富栄養化に与える影響は低減する傾向が見られた。特に、地球温暖化に与える影響は、3.0%添加時において、無添加時に対して約8.9%の低減が見られた。以上の結果から、アマニ油脂肪酸Ca の添加レベルを上げることにより、飼料費は増加するが、メタン低減効果および濃厚飼料の節減効果によって地球温暖化、酸性化および富栄養化に与える影響を低減させることが示された。
  • 塚田 英晴, 深澤 充, 小迫 孝実
    2011 年 27 巻 2 号 p. 47-54
    発行日: 2011/04/10
    公開日: 2015/06/04
    ジャーナル フリー
    放牧地における中大型哺乳類の種多様性の測定を目的とした自動撮影装置による調査において、年次、季節、使用機材、放牧条件、誘引物(匂いおよび餌)、設置場所といった諸要因が調査結果に及ぼす影響を評価した。さらに中大型哺乳類の生息確認に要する自動撮影調査での調査努力量を推定した。その結果、確認種数や各動物種の撮影頻度に対して、程度の違いはあるものの検討した要因のすべてが影響していた。したがって、自動撮影調査を実施する際にこれらの要因を考慮しないと、データのバイアスとなりうることが示唆された。生息種確認に要した調査努力量は、調査地間で大きく異なり、事前に調査努力量の適正値を想定することは困難であった。そのため、自動撮影調査による生息確認に必要な調査努力量は、予備調査を実施した上で調査地毎に判断する必要がある。
  • ―神戸市東灘区を事例として―
    布施 綾子
    2011 年 27 巻 2 号 p. 55-62
    発行日: 2011/04/10
    公開日: 2015/06/04
    ジャーナル フリー
    都市部におけるイノシシによるヒトへの危害防止を目的として、2002 年に神戸市において日本で初めて「イノシシ餌付け禁止条例」が制定された。条例が施行され8 年以上が経過したが、条例制定の前後でイノシシの出没状況がどのように変化したかは明らかにされていない。本研究の目的は山林に隣接した神戸市六甲山南部の市街地のイノシシの出没状況と住民の意識から、イノシシとヒトとの関わり方について検討することにある。まず、条例施行前の2000~2001 年に神戸市東灘区天上川流域にてイノシシの出没状況を調査した。次に、条例施行後の2009 年9~12月に、イノシシの出没現場踏査、インタビュー調査、アンケート調査、イノシシの追跡調査、イノシシに対するヒトの意識調査を行った。結果は、条例施行後は道路上でのイノシシ出没頻度は減少し、イノシシへの間接的な餌付け場所となるゴミ集積場での被害も減少することを示した。一方で、河床に生存するイノシシの個体数は増えていることが観測され、河床の段差工の高低差が大きく山に帰る事ができず封じ込め状態にある事が明らかになった。また、市民の条例に対する認識度は74%と高いにも関わらず、天上川河床に生息するイノシシへの直接的な餌付け行為は継続されていた。河床のイノシシに対するヒトの意識は好意的なものが多く、餌付けは感情に基づいたものと言える。餌付け禁止条例の効果はある程度認められたが、今後イノシシとヒトとの適切な関わりを構築するには、イノシシの生息環境やヒトの感情に配慮した施策が求められる。
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