現在、世界的に維持可能な循環型社会の形成が求められており、旧来の資源浪費型社会から維持可能な循環型社会に向けて、地域農業の役割を改めて考える必要がある。有機性廃棄物の最終的な還元先となる地域農業の振興を伴わずに、有機性廃棄物の循環利用システムを考えることは難しいからである。この有機性廃棄物の循環利用と地域農業振興を両立させた事例として、立川町生ごみ堆肥化循環システムを取り上げ、堆肥生産センターと一般家庭、畜産農家、稲作農家それぞれとの関係、さらにシステムの維持費用とその意味を分析した。このシステムにおける有機性廃棄物の生ごみ排出者から堆肥利用者への流れは「地域内収集・堆肥化・域内利用型」で、町内の一般家庭の生ごみ全量を堆肥化し、町内の稲作農家がこの堆肥の全量を利用している。この方式は、堆肥生産量が堆肥利用量に規定されることから、稲作農家の堆肥利用量を増やす必要があり、地域農業を振興する必要があった。実際に、稲作農家の減農薬・減化学肥料栽培米の生産量は、堆肥生産量の増加に伴って増加しており、地域農業振興の成果は、畜産農家のコスト低減、稲作農家の収入増加として現れた。立川町地域資源循環システムは、一般家庭、畜産農家、稲作農家を結びつけることによって、個別では解決できない問題を解決したのである。このシステムは、毎年約2,396万円の町の費用負担によって維持されている。この維持費用によって、生ごみ処理費用代替分約403万円、稲作農家の収入増約2,561万円、畜産農家におけるコスト低減、一般廃棄物のリサイクル率向上という効果が得られている。
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