システム農学
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20 巻, 1 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
招待論文
  • 小澤 克己
    2004 年 20 巻 1 号 p. 2-8
    発行日: 2004/04/10
    公開日: 2022/06/03
    ジャーナル フリー
  • ~土地利用、鳥獣対策、産直市PRの実例
    藤山 浩
    2004 年 20 巻 1 号 p. 9-15
    発行日: 2004/04/10
    公開日: 2022/06/03
    ジャーナル フリー

    本論文は、2002年から2003年にかけて島根県中山間地域研究センターにおいて整備・公開されたWeb-GIS(インターネット公開型地理情報システム)について、環境調査、森林情報や鳥獣対策、産直市情報などのホームページを中心に、その機能と成果および今後の発展可能性について集約したものである。島根県中山間地域研究センターを中心に運営されているWeb-GISの特徴は、インターネット上の地図でわかりやすく地域情報を提供するだけでなく、利用登録さえすれば地域住民自らが発見情報や発信したい情報を写真付きで入力できるところにある。このような住民自身の情報発信を中心に置いた情報循環こそが、住民を主人公とした地域マネジメントを実現する条件整備となると考える。今後更に、Web-GISの普及と連動し、中山間地域等にレンジャー等の現地情報発信要員を配置することを政策提案したい。

  • -水田農業の大規模経営体のためのパソコン用ソフトウェア-
    三浦 修平, 小林 一
    2004 年 20 巻 1 号 p. 16-22
    発行日: 2004/04/10
    公開日: 2022/06/03
    ジャーナル フリー

    農業者の高齢化や後継者の減少により水田の流動化が進むとともに作業受託面積が増加する中で、地域農業の担い手として、大規模経営体の果たす役割が重要になってきている。大規模経営体では、規模拡大に伴う圃場数の増加・分散による作業管理、労務管理の煩雑化、作業圃場の誤認などの問題が生じている。これを解消するために分散圃場条件での作業の効率化や農地の作業受託期間の把握、作業受託圃場の位置確認等へ利用できるコンピュータシステムに対する要望が高まってきている。そこで、これまで鳥取大学で開発を進めてきた「一筆圃場管理システム」の成果をふまえ、大規模経営体が経営する各圃場の特徴や生産性、日々の作業実施状況を把握し、圃場毎に適した作業計画や各種作業の進行管理、労務管理に活かすシステムを開発し、その現地適応性について検討した。本システムは、白地図の圃場一筆ごとに土地条件、作付作物、栽培管理、作業受託等に関する情報のデータベースを構築する。この情報と白地図を連動させ、地図上に色付けして表示させる。これにより圃場情報を効果的に活用し、農業者のための作付けや作業計画等の意思決定支援を行う。本システムでは、以下のような効果が期待できる。・シミュレーションによる転作圃場の団地化やブロックローテーションを考慮した作付計画の作成。・稲作の低収要因解析による適切な作業計画の作成。・作業進捗状況にあわせた作業の進行管理や臨時雇用の人員配置。・受託作業料金、小作料の計算を自動的に行うことによる事務作業の大幅な軽減。

  • 大黒 正道, 高橋 英博, 寺元 郁博
    2004 年 20 巻 1 号 p. 23-31
    発行日: 2004/04/10
    公開日: 2022/06/03
    ジャーナル フリー

    大規模水田作経営体では、借地及び作業受託圃場が分散していることが多いため、移動等に時間を要し作業効率の低下を招いており、春作業計画を立案する際には、圃場の分散を考慮して作業計画を立てる必要がある。そこで、代かきから移植までの圃場毎の作業予定日を圃場分散が小さくなるように計画立案者に提示するシステムを開発した。開発したシステムは、GIS上での品種配置の決定、各圃場の移植予定日の決定、各圃場の代かき予定日の決定の順に計画を策定し、各圃場の作業予定日は、春作業期間の圃場分散度の総和が最も小さくなるように遺伝的アルゴリズムを用いて決定する。圃場分散度とは、一日の作業の対象となる各圃場中心の平面座標をGISにより求め、その平均値を圃場分散の中心点とし、その中心点から各圃場の中心点までの距離を平均した値である。本システムで計算したある大規模水田作経営体の春作業計画における圃場分散度の平均は約200mで、実際の作業における圃場分散度より約40%減少する。

研究論文
  • -霞ヶ浦流域の魚類を事例として-
    水野 敏明
    2004 年 20 巻 1 号 p. 39-52
    発行日: 2004/04/10
    公開日: 2016/10/31
    ジャーナル フリー

    2002年の改正土地改良法では、農地の自然との共生がうたわれており、農地利用変化が湖沼などの生態系に与える影響を定量的に示す必要性が高まっている。とりわけ水田は、直接的には魚類の繁殖や産卵場所としての機能をもっているが、肥料投入などによる水質汚濁を介して間接的に魚類へ悪影響も与えている可能性がある。そこで、本研究では霞ヶ浦流域を事例として取り上げ、グラフィカルモデリングの一種で間接効果と直接効果が混じる因果関係の解析にすぐれているパス解析を応用し、魚類を中心とする湖沼生態系の統計モデルを構築して、農地利用変化が湖沼生態系へ及ぼす影響を定量的に明らかにした。研究は、最初に定性的背景によるコンセプトモデルを因子分析により推定検証し、次に湖沼生態系のパスダイアグラムを構築してパス解析を行い、最後にモデルの適合度が比較的良いものに関して考察するという手順で行った。その結果、米作付面積の変動によるドジョウの生息量指数の変動への標準化された総合効果は0.331であった。フナの生息量指数の変動への標準化された総合効果は0.079であった。本研究の統計手法ではデータ間の共変動による不確実性を伴うため、解釈に制限はあるものの、その結果から、フナなどと比較するとドジョウは農地変動の影響を受けやすいことが定量的に明らかとなった。また、本研究により、グラフィカルモデリングが農地利用変化による湖沼生態系への影響評価に応用できる可能性を示した。

  • 植山 秀紀
    2004 年 20 巻 1 号 p. 53-63
    発行日: 2004/04/10
    公開日: 2016/10/31
    ジャーナル フリー

    中山間地域の気候資源を活用した、作物立地配置のための基礎的な資料を得ることを目的に、50mメッシュの地形情報を用いてステップワイズ重回帰分析により、岡山県御津郡加茂川町の気温分布を評価した。また、メッシュ気候図としてよく用いられる気象庁メッシュ統計値による、1kmメッシュ気温分布図と50mメッシュ気温分布図で把握される気温分布を比較した。重回帰分析の結果、月平均最高気温分布は、季節に関係なく平均標高により決定されるが、月平均最低気温分布は、季節により異なる。夏期の月平均最低気温分布に最も大きな影響を及ぼす要因は、月平均最高気温と同様平均標高と考えられる。そして春、秋、冬期の月平均最低気温分布は、地形や河川の有無等、様々な要因により決定されると考えられる。また、夏期だけでなく、斜面温暖帯が形成される春、秋、冬期においても、比較的大きな河川をもつ谷の月平均最低気温は高かった。月平均気温分布は、月平均最低気温と同様の特徴を示したが、斜面温暖帯の形成される地域の気温は低かった。50mメッシュ気温分布図とメッシュ統計値による1kmメッシュ気温分布図で把握され、加茂川町の月平均最高気温分布の特徴は同様であった。しかし、1kmメッシュ内には平均約1℃の気温差が存在し、1kmメッシュ気温分布図の値をそのまま農地に適応するには難点がある。また、斜面温暖帯を十分表せないため、標高の高い地域の1kmメッシュ気温分布図による月平均最低気温分布は、50mメッシュ気温分布図と異なる。

  • ―山形県立川町地域資源循環システムを事例として―
    藤科 智海, 綱島 不二雄, 小沢 亙
    2004 年 20 巻 1 号 p. 64-73
    発行日: 2004/04/10
    公開日: 2016/10/31
    ジャーナル フリー

    現在、世界的に維持可能な循環型社会の形成が求められており、旧来の資源浪費型社会から維持可能な循環型社会に向けて、地域農業の役割を改めて考える必要がある。有機性廃棄物の最終的な還元先となる地域農業の振興を伴わずに、有機性廃棄物の循環利用システムを考えることは難しいからである。この有機性廃棄物の循環利用と地域農業振興を両立させた事例として、立川町生ごみ堆肥化循環システムを取り上げ、堆肥生産センターと一般家庭、畜産農家、稲作農家それぞれとの関係、さらにシステムの維持費用とその意味を分析した。このシステムにおける有機性廃棄物の生ごみ排出者から堆肥利用者への流れは「地域内収集・堆肥化・域内利用型」で、町内の一般家庭の生ごみ全量を堆肥化し、町内の稲作農家がこの堆肥の全量を利用している。この方式は、堆肥生産量が堆肥利用量に規定されることから、稲作農家の堆肥利用量を増やす必要があり、地域農業を振興する必要があった。実際に、稲作農家の減農薬・減化学肥料栽培米の生産量は、堆肥生産量の増加に伴って増加しており、地域農業振興の成果は、畜産農家のコスト低減、稲作農家の収入増加として現れた。立川町地域資源循環システムは、一般家庭、畜産農家、稲作農家を結びつけることによって、個別では解決できない問題を解決したのである。このシステムは、毎年約2,396万円の町の費用負担によって維持されている。この維持費用によって、生ごみ処理費用代替分約403万円、稲作農家の収入増約2,561万円、畜産農家におけるコスト低減、一般廃棄物のリサイクル率向上という効果が得られている。

  • -規模効果のパターンとその源泉-
    平澤 明彦, 川島 博之, 大賀 圭治
    2004 年 20 巻 1 号 p. 74-85
    発行日: 2004/04/10
    公開日: 2016/10/31
    ジャーナル フリー

    国の規模が穀物の自給率に与える影響を調べた。とくに、先行研究で不明であった規模効果の内容と源泉を明らかにすることを主な課題とした。157カ国、1994-98年時点の国別集計データによるクロスセクションの国際比較分析を行った。人口は穀物自給率の規定要因分析における国の規模の適切な指標である。回帰分析により、耕地賦存と所得水準を統制した上で、穀物自給率に対する人口の寄与がプラスであることが確認された。次に耕地賦存、所得水準を統制した偏相関分析の結果から、人口が大きい国では、土地節約的な増産による輸入代替的なパターンによって、小さい国と同程度の消費水準を保ちながら、高い自給率が実現していることが明らかとなった。また、規模効果は①国レベルの外部効果であり、②輸送コストではない自給促進的要因であり、③競争優位に貢献しない。こうした特徴は何らかの政策介入、特に国内農業保護を示唆していると考えられる。そこで26ヶ国、82-87年時点のデータを用いて農業保護率(穀物の%PSE)の回帰分析を行った結果、人口と%PSEには正の偏相関があることがわかった。こうした分析結果と国際貿易論で一般的に挙げられる規模効果の源泉は一致しないため、一般の産業とは異なる特殊要因が働いていると考えられる。大きな国ほど国際市場の供給制約が厳しいため、安全保障上の理由から自給指向が強まり、それが高い保護率にも反映しているのだと解釈できる。

  • 張 福平, 魏 永芬, 秋山 侃, 西條 好迪
    2004 年 20 巻 1 号 p. 86-96
    発行日: 2004/04/10
    公開日: 2016/10/31
    ジャーナル フリー

    放置された竹林の増加は、景観の悪化を招き、森林資源や農耕地への侵食から、やがて地域または流域規模の環境問題に波及することも懸念されている。本論文では、高解像度衛星IKONOS データ、中解像度衛星Landsat ETM+データ、およびこれら両データに基づきIHS変換により作成した複合画像のそれぞれに対して、最尤分類法およびツリー決定法を用いて岐阜市周辺(14,280 ha)における竹林の抽出を行い、現地調査結果に基づき分類の精度を評価した。その結果、衛星データにより竹林の分布状況を把握できることが確認された。異なる5時期のLandsat ETM+データの中では、3月のデータによる竹林の分類精度が最も良いこと(61.9%)が明らかとなった。さらに、IKONOS、Landsat ETM+の単独データより、両者の複合画像を用いた場合の竹林分類精度は高く84.9%に達した。この結果を用いて、対象域における竹林面積は89.6 ha と推定した。

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