本研究では，東日本大震災で大きな被害をうけたとされる日本の自動車業界を対象にしたサプライ・チェーンリスク・マネジメント(Supply Chain Risk Management; SCRM)の実証分析をし，日本の自動車業界におけるSCRMの現状と課題の調査を行う. 分析は，47社のアンケート調査を基に行った．アンケート調査によって得られたデータを基に仮説検定，共分散構造分析，因子分析を行った結果，日本の自動車業界では，サプライ・チェーンの脆弱性やサプライ・チェーン・リスクの影響を認識しているが，発生確率に関しては捉え方が異なり，対策が不十分である現状を明らかにした．さらに，サプライ・チェーンへ影響を及ぼすサプライ・チェーン・リスクの関係を今後明確にする必要があるという課題を示した．

本論文では，ファジィランダム変数係数を等式制約式に含む多目的単純リコース問題について考察する．多目的ファジィランダム単純リコース問題に含まれるファジィランダム変数係数を取り扱うために，可能性測度に対する可能性レベルγの概念を導入する．可能性レベルγをパラメータとする多目的ファジィランダム単純リコース問題に対して，パレート最適解の概念を導入し，パレート最適解集合の中から意思決定者の満足解を導出するための対話型意思決定手法を提案し，フィリピンの天水農業問題に適用する．この農業問題問題では，乾季における水資源供給量の不確実性をファジィランダム変数係数で表現し，確率的不確実性と主観的あいまい性を同時に考慮した各種作物の最適割当面積を決定する．

本研究では，日本料理レストランの店舗における調理場の労働時間削減を目的として，担当組み換え方式の導入を試みた．従来日本料理レストランでは，1従業員が1調理場所を担当するため，需要の変動に対する投入労働時間の弾力性が低いことが課題であった．この問題を改善するため，事前に作業計画を組みやすい時間帯は行動観察によって調理作業を統合し，必要工数を削減するとともに，状況に応じて1従業員が複数調理場所を担当するセル類似のミニキッチンを導入することで工数削減を図る担当組み換え方式を実店舗に導入し，同方式の労働時間削減に対する有用性を検証した．その結果，１）下処理作業が多く，作業計画を組みやすい開店前，およびミニキッチンの稼働が可能である夕食時間帯は担当組み換えの効果が高いこと，２）担当組み換えにより，調理に必要な労働時間投入の弾力性向上が可能であること３）ミニキッチンで調理するためには高スキル従業員が必要なため，パート従業員比率の高いファストフードやファミリーレストランへの導入は容易ではないことがわかった．

Negotiation procedures between a supplier and a retailer in a supply chain model including buyback contract have been studied in recent years. The negotiation procedures in the above studies have consisted of three successive steps: (i) show the necessity that the conclusion of the contract based on a set of contract parameters brings respective incentives to both of the supplier and retailer, (ii) present a mutual relationship between contract parameters of guaranteeing simultaneously optimalities of both of the supplier and retailer, and (iii) determine a unique combination of contract parameters using the Nash bargaining theory. Through successive steps (i)-(iii), some sets of contract parameters have been screened step by step, and eventually, an optimal set of contract parameters has been uniquely decided in step (iii) as a bargaining solution. However, the mathematical significance of respective conditions derived in steps (i) and (ii) for the bargaining solution of step (iii) has not been fully explained. Therefore, we reconsider respective roles of steps (i) and (ii) in the negotiation procedure based on a supply chain model including buyback contract. Then, we confirm the usefulness of the negotiation procedure consisting of three successive steps in the preceding studies.