本研究は, 絵本場面の母子会話におけるラベリングに関して, 子の参加の仕方と母親の援助について, 発話連鎖の分析によって検討したものである。10, 12, 15, 18, 21, 24, 27カ月児とその母親66組を横断的に観察した。3冊の絵本を介しての母子の会話を5分問観察した。その結果, 年長児は, 母親の慣用的ラベリングを受けずに慣用的ラベリングを遂行するようになることが明らかとなった。年長児は, 母親の情報請求に対して慣用的ラベリングで答えるようにもなった。母親の側も, 子の月齢の増大とともに, より能動的な役割を子に対して要求していた。母親は年長児に対して情報請求でエピソードを開始していた。また, 母親は, 年長児の慣用的ラベリングに対しては, 精緻化情報の提供・請求で応答するようになった。これらの結果から, 絵本場面での母子によるラベリングにおいて, 子は月齢の増大とともに母親からの援助がクないもとでのラベリングの遂行者となり, 米国の母親よりも情緒志向的であるといわれる日本の母親も, 子の月齢の増大とともに足場作りの度合いを弱め, より複雑な会話構造へ子の慣用的ラベリングを組み込むという教授方略をとることが明らかになった。
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