発達心理学研究
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5 巻, 1 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
  • 長田 由紀子, 長田 久雄
    原稿種別: 本文
    1994 年 5 巻 1 号 p. 1-10
    発行日: 1994/06/30
    公開日: 2017/07/20
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, 高齢者の回想の特徴および回想と適応との関係を若年者と比較し, 老年期における回想の意味を検討することである。われわれは, 目常生活において自然に起こる回想の量を測定するために, 8項目からなる回想尺度を作成し, 質問紙を用いて個人の回想の量の測定を行なった。対象者は18〜24歳の132名 (学生群) , 40〜64歳の97名 (壮年群) , 65〜95歳の133名 (老年群) であった。回想の量について3群の差を検討した結果, 他の2群に比べて学生群の回想の量が多いことが示された。老年群でよく回想をする者は現在満足度が低く, 死について意識することが強く, 死の不安が強い傾向が示されたが, 回想に対して「気分転換」や「重荷から解放される」という効果を感じていた。結果から, 青年期における回想は自我同一性の確立を反映している可能性が示唆された。また, 老年期において回想を行なうことが, 死を意識することと関係があることが示された。老年期における回想の高頻度と, 満足度の低さとの間に関係が示されたが, この結果は, 回想による人生の統合が失敗に至ったことを示唆するとともに, 不適応状態への対処として回想が用いられる可能性を示唆するものであった。
  • 湯沢 正通
    原稿種別: 本文
    1994 年 5 巻 1 号 p. 11-21
    発行日: 1994/06/30
    公開日: 2017/07/20
    ジャーナル フリー
    本研究では, 上位カテゴリーが幼児による特徴の帰属や帰納的推論にどのような役割を果たしているかを検討した。実験1では, 21人の5歳児と19人の6歳児に, 動物, 虫, 野菜それぞれの12の正負事例を提示し, 各カテゴリーの特徴を持つ事例を選択させた。その結果, 動物, 虫, 野菜として選ばれた正事例が選ばれなかった正事例よりも特徴を持つものとして高い比率で選択された。実験2では, 21人の5歳児と18人の6歳児に, 動物, 虫, 野菜として選ばれたlつの事例が実験1と同様の特徴を持つことを教示したうえで, 12の正負事例からその特徴を持つ事例を選択させた。すると, 動物, 虫, 野菜として選ぱれた正事例が特徴を持つものとされる選択比率が, 実験1の場合よりも有意に増大したが, 動物, 虫, 野菜として選ばれなかった正事例では, 選択比率が実験1と変わりがなかった。これらの結果から, 幼児が上位カテゴリーに基づいて特徴を帰属したり, 帰納的推論を行うことが示唆された。
  • 宮本 美沙子, 中田 美子, 堀野 緑
    原稿種別: 本文
    1994 年 5 巻 1 号 p. 22-30
    発行日: 1994/06/30
    公開日: 2017/07/20
    ジャーナル フリー
    Markus, & Nurius (1986) が, 可能自己の研究に用いた自己概念の調査項目を援用し, 青年と高齢者の, 現在の自己認知, 将来の可能自己を調ベ, それと自尊感情, 達成関連動機などとの関係を究明することを目的とした。青年 (大学生, 18〜24歳, 男子118名, 女子136名) と高齢者 (60〜77歳, 男子118名, 女子58名) を対象に, 自己概念 (現在の自己の認知, 将来なりたい自己, なれそうな可能自己, なることの重要性) , 自尊感情, 達成関連動機 (達成動機, 失敗不安動機, 成功不安動機) , などについて質問紙法により調査した。その結果, 成功不安動機は大学生の方が得点は有意に高いが, 可能白己, 自尊感情, 達成関連動機 (成功不安動機以外の) については, 高齢者の方が得点は有意に高かった。現在の自己の認知を因子分析した結果4因子が抽出され, そのうちのコンピテンスの因子および幸福感・満足感の因子は, 大学生も高齢者も, 可能自己と有意な相関を得た。家族関係の因子に関しては, 高齢者では可能白己と関係があったが, 大学生では関係はなかった。共分散構造分析モデルにより分析した結果, 自尊感情と達成関連動機 (成功不安動機以外の) は, 現在の自己から可能自己へのパスにおいて影響を与えていた。
  • 池田 智子, 松見 法男, 森 敏昭
    原稿種別: 本文
    1994 年 5 巻 1 号 p. 31-40
    発行日: 1994/06/30
    公開日: 2017/07/20
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, 言語内・言語間ストループ, 逆ストループ課題を用いて, 日本人の大学生と中学生が, 英語と目本語という2つの言語をどのような処理経路を経て処理しているのかを明らかにすることであった。被験者は, 言語内ストループ課題では, 色名単語の単語を無視して, 色に対する命名を行った。また, 言語内逆ストループ課題では, 色名単語の色を無視して, 単語に対する読み上げを行った。これらの課題においては, 単語の言語と反応言語は同じ言語であった。一方, 言語間ストループ課題と言語間逆ストループ課題では, 単語の言語と反応言語は異なっていた。この言語内, 言語間ストループ, 逆ストループ課題における両被験者群の干渉のパターンは, 被験者の英語学習の段階と求められた反応の種類によって, 2言語の処理経路が異なることを示唆する結果であった。本実験の結果について, 単語連結仮説と概念媒介仮説という2つの仮説から考察を加えた。
  • 針生 悦子, 大村 彰道, 原 ひろみ
    原稿種別: 本文
    1994 年 5 巻 1 号 p. 41-50
    発行日: 1994/06/30
    公開日: 2017/07/20
    ジャーナル フリー
    これまでの研究 (針生, 1991) から, 3歳児は, 新奇なラベルの指示対象を既知物と未知物の中から選択するよう求められると, 未知物を選択しがちであることが, 示されてきた。彼らは, 課題文脈にふさわしいのが既知物であることを示唆されたときですら, そのような選択を行った。これはおそらく彼らが, カテゴリー名は相互に排他的だと仮定しているためである。本研究は, このようなとき幼児が, 未知物も文脈にふさわしいと考えることで, 相互排他性と文脈との葛藤を解決している可能性について検討した。研究1では, ラベルの指示対象は未知物だと一見, 文脈に反した解釈をする子どもに, 解釈内容の説明を求めると, その中に, 未知物が課題文脈にふさわしいことに言及する者のいることが見いだされた。研究2では, あらかじめ未知物が文脈にふさわしくないことを害げ, 上のようなかたちでの葛藤解決をできなくすると, ラベルの解釈において, 4歳児は相互排他性を用いなくなるが, 3歳児はそれを用い続けることが見いだされた。ここから, 文脈中で提示された新奇なラベルを未知物の名称として解釈するとき, 4歳児だけが, 相互排他性と文脈との葛藤を解決していることが示唆された。
  • 井上 徳子
    原稿種別: 本文
    1994 年 5 巻 1 号 p. 51-60
    発行日: 1994/06/30
    公開日: 2017/07/20
    ジャーナル フリー
    チンパンジー幼児の自己鏡映像認知の発達過程を, 縦断的観察 (実験I) と横断的観察 (実験II) によって検討した。実験Iの被験体は生後9週齢から人工哺育で育てられたメスのチンパンジー頭で, 実験開始時に76週齢, 実験終了時に87週齢だった。ケージ内に鏡を設置し, 1日1試行10分間の呈示を47試行おこなった。被験体が鏡呈示事態において示したさまざまな行動を50種の行動型として記述した。さらにこれらを社会的反応, 探索反応, 協応反応, 白己指向性反応, 複合反応の5つの行動カテゴリーに分類した。被験体は社会的反応や探索反応から, 協応反応や自己指向性反応へと出現行動カテゴリーを変化させ, 最終的には複合反応を示すに至った。いわゆる「自己意識」の成立の指標とされる自己指向性反応を被験体が示したのは1歳半をすぎてからだった。実験IIでは, 過去に鏡に関する経験を持たない1歳4カ月から4歳11カ月のチンパンジー幼児17頭を被験対象とした。1試行40分間の鏡呈示を実施し, 試行中に出現した鏡に関する行動を, 実験Iと同様の行動カテゴリーに分類した。40分間の試行内における鏡に関する行動は3歳半以上の被験体で特に変化した。社会的反応は最初の10分間で急減し, その後, 自己指向性反応およぴ複合反応が出現した。各行動カテゴリーの加齢に伴う出現変化も同様の傾向がみられた。年少の被験体は社会的反応を主に示し, 年長の被験体は自己指向性反応や複合反応を示した。横断的観察で得られた自己鏡映像認知の発達過程は, 縦断的に観察したチンパンジー幼児やヒト乳幼児の例と同様だった。だが自己指向性反応が現われ始めた時期は横断的観察では3歳半頃で, 繰り返し鏡が呈示された実験Iの被験体よりも, 約2年遅れていた。自己鏡映像の認知能力は, 加齢に伴う成熟と, 自己鏡映像に関する学習経験量によって決まることが示唆された。
  • 仲村 照子
    原稿種別: 本文
    1994 年 5 巻 1 号 p. 61-71
    発行日: 1994/06/30
    公開日: 2017/07/20
    ジャーナル フリー
    この研究の目的は子どもの死の概念の発達を調べるものである。3歳から13歳までの男女205名の子どもたちに個別に面接し, 死に関する9の質問に答えてもらった。結果は, 幼児期の子どもは大人がもつような死の意味とは違ったものとして理解している。生と死は未分化であり, 現実と非現実の死の区別がなされておらず, その子ども独自の自由な死の概念を形成していると思われる。そして自分は死なないと思っている。児童期あたりから死の現実的意味である普遍性, 体の機能の停止, 非可逆性を理解するようになる。彼らは誰でもいつかは死ぬし, 死によって体の機能は停止するし, 再び生き返ることは出来ないことを理解する。これらの自覚から死は自分にも起こり得ると考えるようになり, それはやがて死後の世界ヘの想像, 願望, 希望が膨らみはじめると思われる。特に年齢が高くなるにつれて人間は死んだらまた生まれかわるという「生まれかわり思想」の増加が目立った。全年齢を通して変化のないものは死はいやな感じであるという感情であった。
  • 柏木 惠子, 若松 素子
    原稿種別: 本文
    1994 年 5 巻 1 号 p. 72-83
    発行日: 1994/06/30
    公開日: 2017/07/20
    ジャーナル フリー
    「親となる」ことによって親にどのような人格的・社会的な行動や態度に変化 (親の発達) が生じたかを, 就学前幼児をもつ父親と母親346組を対象として比較検討を行った。加えて, 子どもや育児に対する感情・態度及ぴ性役割に関する価値観の測定も行い, 母親の職業の有無, 父親の子育て・家事参加度との関連で分析を行った。その結果, 「親となる」ことによる発達は柔軟性, 自己抑制, 視野の広がり, 自己の強さ, 生き甲斐など多岐にわたるが, いずれの面でも父親より母親において著しいこと, 子ども・育児に対して父親が青定的な感情面だけを強く持っているのに対して, 母親では肯定面と同時に否定的な感情もあわせもつアンヴィバレントなものであること, 父親の育児・家事参加度の高さは母親の否定的感情の軽減につながる, 同時に父親自身の子どもへの肯定的感情が強まり, 母親のそれと近いものになること, 父親及び母親の性役割についての価値観は, 父親の育児・家事参加及び母親の有職と相互に一貫した形では対応しており"言行一致"があること, などが見出された。
  • 中山 まき子
    原稿種別: 本文
    1994 年 5 巻 1 号 p. 84-85
    発行日: 1994/06/30
    公開日: 2017/07/20
    ジャーナル フリー
  • 岩立 志津夫
    原稿種別: 本文
    1994 年 5 巻 1 号 p. 85-86
    発行日: 1994/06/30
    公開日: 2017/07/20
    ジャーナル フリー
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