Markus, & Nurius (1986) が, 可能自己の研究に用いた自己概念の調査項目を援用し, 青年と高齢者の, 現在の自己認知, 将来の可能自己を調ベ, それと自尊感情, 達成関連動機などとの関係を究明することを目的とした。青年 (大学生, 18〜24歳, 男子118名, 女子136名) と高齢者 (60〜77歳, 男子118名, 女子58名) を対象に, 自己概念 (現在の自己の認知, 将来なりたい自己, なれそうな可能自己, なることの重要性) , 自尊感情, 達成関連動機 (達成動機, 失敗不安動機, 成功不安動機) , などについて質問紙法により調査した。その結果, 成功不安動機は大学生の方が得点は有意に高いが, 可能白己, 自尊感情, 達成関連動機 (成功不安動機以外の) については, 高齢者の方が得点は有意に高かった。現在の自己の認知を因子分析した結果4因子が抽出され, そのうちのコンピテンスの因子および幸福感・満足感の因子は, 大学生も高齢者も, 可能自己と有意な相関を得た。家族関係の因子に関しては, 高齢者では可能白己と関係があったが, 大学生では関係はなかった。共分散構造分析モデルにより分析した結果, 自尊感情と達成関連動機 (成功不安動機以外の) は, 現在の自己から可能自己へのパスにおいて影響を与えていた。
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