本研究は, 小学校の児童が, 道徳判断課題について, 自分と異なる意見を持っている児童と話し合う時, どのような発話を行い, どのようにして結論にいたるのか, また, そこに発達的な違いがみられるかについて検討することを目的とした。意見の異なるペアをつくるために, 1年生, 3年生, 5年生の被験児に, 事前に道徳判断課題のプリテストを行わせた。そして, 意見の異なる者同士をペアにし, 意見を1つにまとめるように教示し, 話し合いを行わせた。その結果, 1年生では, 理由を述べる発話は少なく, 理由の道徳発達レベルは低く, 互いに理由を述べる前に結論が得られてしまうという特徴がみられた。一方, 3・5年生は, 互いに理由を述ベ, しかも高低両方のレベルの理由をあげ, 互いに意見を出し含った後で, 多くの新規な理由を出した側に結論を収東させていた。つまり, 1年生から3年生にかけては, 理由の数, 特に, 高いレベルの理由が増えるといった量的な変化に伴って, 話し合い過程が結論先行型から説明先行型になるというような, 質的な変化がみられた。また, 3年生から5年生にかけては, 同じ説明先行型の話し合いスタイルの中でも, 意見を主張するという種類の発話量だけが量的に変化することが示された。
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