発達心理学研究
Online ISSN : 2187-9346
Print ISSN : 0915-9029
9 巻, 3 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 井上 雅彦
    原稿種別: 本文
    1998 年9 巻3 号 p. 179-190
    発行日: 1998/12/15
    公開日: 2017/07/20
    ジャーナル フリー
    自閉症児について, 機能的な教示言語行動の獲得とその般化について検討した。実験1では, 2名の自閉症児について, パズル片が足りないで困っているという課題場面を設定し, 他者に対する教示言語行動が自発するか否か, またその成立条件について検討がなされた。その結果, 言語モデルによるプロンプトとフェイデングアウトにより, 教示が可能となり, その行動は, パズルプレイヤーの困難状況, 自らの解決情報の保有という2つの変数によって制御されうる機能的な行動として成立していくことが示された。実験2においては, 実験1で成立した教示言語行動が他の状況でも般化するか否か評価された。その結果, 本研究に参加した自閉症児について, 他者の行動や自らの解決情報の保有の有無という複雑な社会的文脈においてそれらを弁別し, 教示言語行動を自発することが可能であることが示され, それらの弁別性を促進するためには, 行動自発の手がかりとなる刺激と, 結果に対して明確な視覚的言語的フィードバックを行うことが有効であることが示された。また, 実験の結果から機能的教示言語行動の成立条件, 般化のための条件について, 複雑な社会的刺激の弁別と社会的強化の成立という視点から考察された。
  • 倉盛 美穂子, 高橋 登
    原稿種別: 本文
    1998 年9 巻3 号 p. 191-200
    発行日: 1998/12/15
    公開日: 2017/07/20
    ジャーナル フリー
    本研究は, 小学校の児童が, 道徳判断課題について, 自分と異なる意見を持っている児童と話し合う時, どのような発話を行い, どのようにして結論にいたるのか, また, そこに発達的な違いがみられるかについて検討することを目的とした。意見の異なるペアをつくるために, 1年生, 3年生, 5年生の被験児に, 事前に道徳判断課題のプリテストを行わせた。そして, 意見の異なる者同士をペアにし, 意見を1つにまとめるように教示し, 話し合いを行わせた。その結果, 1年生では, 理由を述べる発話は少なく, 理由の道徳発達レベルは低く, 互いに理由を述べる前に結論が得られてしまうという特徴がみられた。一方, 3・5年生は, 互いに理由を述ベ, しかも高低両方のレベルの理由をあげ, 互いに意見を出し含った後で, 多くの新規な理由を出した側に結論を収東させていた。つまり, 1年生から3年生にかけては, 理由の数, 特に, 高いレベルの理由が増えるといった量的な変化に伴って, 話し合い過程が結論先行型から説明先行型になるというような, 質的な変化がみられた。また, 3年生から5年生にかけては, 同じ説明先行型の話し合いスタイルの中でも, 意見を主張するという種類の発話量だけが量的に変化することが示された。
  • 石原 治, 権藤 恭之, 中里 克治, 下仲 順子, 厳島 行雄
    原稿種別: 本文
    1998 年9 巻3 号 p. 201-208
    発行日: 1998/12/15
    公開日: 2017/07/20
    ジャーナル フリー
    四則演算の数操作の処理について検討することを第1の目的とした。四則演算の加齢の影響について検討することを第2の目的とした。被験者には成人と老人の18名ずつを用いた。答えが整数となりかつ四則演算に共通して用いることができる, 一桁の数の組み合わせを刺激とした。組み合わせた数が同じ条件(同数問題)とそれ以外の条件(非同数問題)の2つに分けた。さらに, 組み合わせた2つの数を単に加算し, その数の大きさによって大小2つの条件に分けて平均反応時間を求めた。主な結呆は以下の通りであった。(a)非同数問題, 同数問題いずれの条件においても, 加減乗除すべてにおいて老人群の方が成人群より反応時問が長かった。(b)成人群の非同数問題については, 加算と乗算のみで問題の大きさの効果が得られた。しかしながら, それらの条件を除いては, 加減乗除の4条件が異なっても反応峙間に顕著な差はみられなかった。(c)老人群の非同数問題については, 加算, 減算, 乗算で問題の大きさの効果が得られたが, 除算では問題の小さい方が大きい方より長かった。さらに, 加減乗除の4条件では, 反応時間に顕著な差がみられた。以上の結果から, 成人の四則演算では, 同じ処理を仮定することが可能であった。また, 加齢の影響によって処理が遅くなることが示唆されたが, その影響は四則演算すべてに一様ではなかった。
  • 外山 紀子
    原稿種別: 本文
    1998 年9 巻3 号 p. 209-220
    発行日: 1998/12/15
    公開日: 2017/07/20
    ジャーナル フリー
    保育園の2歳児・4歳児クラスの食事場面を観察し, 子ども達がどのようにして席を決めるのかを分析した結果, 以下のことが示された。第1に, 4歳児の方が2歳児に比べて, 自分または他者の着席位置に関して身体的・言語的行為による意見表明をより多く行っていた。第2に, 2歳児も4歳児も, 対面あるいは斜めに柏対する位置関係(タテの位置関係)よりも, 隣合わせあるいは直角に並ぶ位置関係(∃コの位置関係)を好んだ。第3に, 2歳児については, 相互交渉の頻繁さと着席位置の問に関違がみられた。すなわち, タテよりもヨコの位置関係において, より多くの相互交渉が生起し展開していた。第4に, 2歳児は身体接触や目前にある亭物への注目から相互交渉を始めることが多く, 4歳児は日前の事物に縛られない話題から始めることが多かった。第5に, 2歳児の場合, 身体接触や事物への注目をきっかけとした相互交渉はタテの位置関係よりも, ヨコの位置関係において頻繁にみられた。以上の結果に基づき, 食事場面における着席位置の好みと, 社会的相互交渉との関違性を議論した。
  • 藤崎 春代
    原稿種別: 本文
    1998 年9 巻3 号 p. 221-231
    発行日: 1998/12/15
    公開日: 2017/07/20
    ジャーナル フリー
    本研究では, 1日および1週間単位での日課が異なる2園(幼稚園と保育園)に所属する4・5歳クラス児に対して, 園生活の流れについて個別面接調査を行い, 多様な出来事についてどのような一般的出来事表象(GER)を形成しているのかについて検討した。すべての子どもに, 「いつも園では何をするか?」と園生活全体の流れを聞く質問を行うとともに, 幼稚園の一部の子どもには「今日は何をしたのか?」, 残りの子どもには「*曜日は何をするか?」という質問を行った。分析の結果, まず, 行為を述べる際に主語無しで現在形表現をしており, 時間的順序も一定であるなど, 幼児が園生活GERを形成していろことが確認された。しかしながら, 幼椎園児の特徴として, 子どもが共通に述べる行為数は少なく, これは幼稚園生活において生活習憤的活動が少ないことによると思われた。多様性の表象の仕方については, GERとしてではなくエピソード的に記憶する, 多様性を園生活GERの変化項としてとらえる, 条件により園生活GERを形成し分ける, の3タイプが検討された。
  • 江尻 桂子
    原稿種別: 本文
    1998 年9 巻3 号 p. 232-241
    発行日: 1998/12/15
    公開日: 2017/07/20
    ジャーナル フリー
    従来より, 音声発達期の乳児において, 規準哺語の出現とリズミカルな運動のピーク期のあいだに発達的同時性が見られることが示唆されている。本研究ではこの現象についてより詳細に検討するため, 乳児5名の月齢6〜11カ月の縦断的観察データをもとに, リズミカルな運動の質的分析を行った。また, これらの運動と発声との同期的関連を調ベ, 先の研究で議論された音声とリズミカルな運動の同期現象のメカニズムについて検討した。分析の結果, 哺語の出現とリズミカルな運動のあいだに発達的同時性が見られることが実証された。ただし, 音を産出しないリズミカルな運動(e.g., 上下に手が揺れる)は哺語出現期をピークに減少してゆくのに対し, 音を産出する運動(e.g., 玩具を打ちつけろ)は哺語出現以降, 増加することが明らかとなった。また, これらの運動と音声の同期性を見ると, 特に, 音を産出しないリズミカルな運動において同期する割合が高いことが明らかとなった。この運動が, 乳児によって, より非目的的に行われるものであると想定すると, 哺語出現期に見られる音声とリズミカルな運動の同期現象は, 乳児によって意識的に行われる行動というよりもむしろ, 彼らの音声生成や身体運動のコントロール機能がまだ未成熟なものであろために生じるものなのではないかと推測される。
  • 松田 文子
    原稿種別: 本文
    1998 年9 巻3 号 p. 242-243
    発行日: 1998/12/15
    公開日: 2017/07/20
    ジャーナル フリー
  • 斉藤 こずゑ
    原稿種別: 本文
    1998 年9 巻3 号 p. 244-246
    発行日: 1998/12/15
    公開日: 2017/07/20
    ジャーナル フリー
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