発達心理学研究
Online ISSN : 2187-9346
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10 巻, 2 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
  • 小坂 圭子
    原稿種別: 本文
    1999 年 10 巻 2 号 p. 77-87
    発行日: 1999/11/15
    公開日: 2017/07/20
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, 作動記憶容量と既有知識とが幼児の文章理解に及ぼす影響を検討することであった。リスニングスパンテストの結果から, 年長児 (56歳児) を作動記憶-大/小群に分けた。リスニング理解のレベルは文章検証課題を用いて査定した。実験1では知識活用が可能な状況での文章理解を検討するため, 作動記憶-大/小群に対して日常的スクリブトを含む課題文と含まない課題文とを呈示した。その結果, スクリプトなし案件では高次レベルでの理解を査定する質問文で作動記億大群の成績の方が高く, 一方, スクリプトあり条件ではその差が減少した。作動記憶大群の方がより深い理解に至りやすく, また作動記憶-小群の理解を助けるスクリプトの役割が示唆された。実験2では知識活用が比較的困難な状況での支章理解を検討した。作動記憶大/小群に対して, 新奇情報を含む課題支と, 同じ課題文をランダムに並べ替えたものとを呈示した結果, 作動記億容量の影響のみが認められた。課題文で用いた4種類のトピックの既知度に差が認められたため, 推論問題の得点人数についてトピック毎に分析を行った。その結果, 既知度の高いトピックであれぱ, 作動記憶-小群も作動記憶-大群と同程度の理解に至っていた。以上の結果から, 文章理解を説明する構成概念である作動記憶と知識との問に, 知識の活用しやすさが作動記憶でのテキスト処理の効率性を高めるという関連性が示唆された。
  • 別府 哲
    原稿種別: 本文
    1999 年 10 巻 2 号 p. 88-98
    発行日: 1999/11/15
    公開日: 2017/07/20
    ジャーナル フリー
    自閉症の問題行動に, 「他の人の怒りを引き出すことを明らかな目的として, 執拗になされる行為」 (杉山, 1990) としての挑発行為がある。挑発行為は一方では, 他の人の怒りを理解した上での行動として他者理解と関運しており, またネガテイブではあるが社会的相互作用行動の一形態とも考えられる。本研究では, 一時期挑発行為を頻発した就学前の自閉症児A児 (CA2;11〜6;5) を取り上げ, 社会的和互作用行動と他者理解の側面から事例検討を行い, 挑発行為の意味を検討した。結果は以下の通りである。(1) 社会的相互作用行動を, 始発するのが大人かA児か, そして相手の行動を引き出すために行うのか情動や意図を引き出すために行うのかで, 第I〜IV期の4つの時期を抽出した。(2) A児が始発するがまだ相手の行動を引き出すために社会的相互作用行動を行う第皿期に, 挑発行為が出現した。(3) 第IV期になると相手の意図や情動を引き出すための社会的相互作用行動が出現した結果, 挑発行為は消失し, 代わりにからかい行動が出現した。(4) 他者理解を検討したところ, 第III期には行為者としての他者理解が成立するが, 第IV期にみられる情動や意図を有する主体としての他者理解はまだみられず, その意味で第III期に特徴的にみられた挑発行為は, 他者の情動や意図を理解していないがゆえの行動と推察された。
  • 坂上 裕子
    原稿種別: 本文
    1999 年 10 巻 2 号 p. 99-109
    発行日: 1999/11/15
    公開日: 2017/07/20
    ジャーナル フリー
    歩行開始期における情動制御の発達的変化を調べるため, マイルドなフラストレーション状況における19人の子どもの行動を, 生後18カ月, 24カ月の二時点において観察した。子どもには, 実験課題として, 他者からの支援を積極的には受けられない状況下で, 玩具の入ったロックのかかった箱を開けることが課された。子どもの行動は, 対処様式 (問題焦点型・情動焦点型) と, 行動が向けられた対象の, 二つの観点から評価, 分析された。分析の結果, 18カ月齢から24カ月齢にかけて, 問題焦点型の対処行動の頻度には増加が認められた。中でも特に, より成功可能性の高い, 洗練された方略の使用が多く見られろようになった。一方で, 対処行動のうち, 母親に対して向けられた行動 (母親への援助や慰撫の要請) に関しては, 減少が認められた。以上の結果より, 歩行開始期には, 対処行動が状況に応じてより有効に組織化されるようになり, これにともなって, 自律的な対処への移行が推し進められることが示唆された。また, 本研究では, 情動焦点型の対処として複数の気晴らし行動が観察されたが, この時期に見られろ気晴らし行動には, 不快情動の沈静だけでなく, 自発的な快情動の創出という, より積極的な機能があるのではないかという考察がなされた。
  • 岩田 美保
    原稿種別: 本文
    1999 年 10 巻 2 号 p. 110-124
    発行日: 1999/11/15
    公開日: 2017/07/20
    ジャーナル フリー
    本研究では, 幼児の内的状態を表す言葉の獲得と弟の意図のくみとりとの関連について調べた。月齢21カ月の1名の男児と誕生したばかりの弟について17カ月間家庭において縦断的に自然観察を行い, ピデオに記録した。データについては2つの分析が行われた。第一に, 幼児の弟及び自己についての内的状態語についての発話を調べた。第二に, 幼児における弟の意図のくみとりの発達的変化を調べるために, 幼児の弟についての意図への言及や, その文脈が示されているエピソードを分析した。これらの分析によって心的な言及の発達の重要な側面が明らかになった。内的状態語のうち心的状態語, 特に「知っている」のような心的動詞が自己および弟についての双方に発現するのは, 対象児が32カ月の時点であり, 37カ月時に増加していることがわかった。そのような心的状態語が発現する時期は, 弟の意図を的確に把握し, また, より洗練されたやり方で予測することが可能になる時期とはぼ同時期であることがわかった。総じて, これらの結果により, 幼児の自己及び弟についての心的動詞の獲得が, 弟の意図の洗練されたくみとりと強く関連していることが示唆された。
  • 藤江 康彦
    原稿種別: 本文
    1999 年 10 巻 2 号 p. 125-135
    発行日: 1999/11/15
    公開日: 2017/07/20
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, 一斉授業において, 子どもが独自の発話スタイルをもつことを明らかにし, 独自の発話スタイルをもつことの意味を検討することである。小学5年生の社会科単元「日本の水産業」の一斉授業 (計7時間) に対し事例の解釈的分析とカテゴリーの数量的分析を併用し, 発話対象と発話内容の点から2名の対象児の発話スタイルを比較検討した。その結果, 対象児の発話スタイルは次の点で異なっていた。一人は学級全体, 教師, ひとりごとと, 発話対象を柔軟に切り替えていた。発話内容は学業的内容と「おかしみ」を混在させたり切り替えたりしていた。もう一人は教師を主たる発話対象とし, 課題解決の結果を直截的に表出していた。また, それぞれの発話スタイルには次のような意味があった。一人の, 発話対象や発話内容の柔軟な使い分けには, 自分の好きなように課題に敢り組むと同時に他者との関係性上の軋礫を回避し, 安定した授業参加を目指す意味があった。もう一人の, 教師との閉鎖的なやりとりには, ほかの子どもとの関係性が不安定であるため, 教師との相互作用によって心理的安定を求めるという意味があった。
  • 渡辺 恒夫, 加藤 義信
    原稿種別: 本文
    1999 年 10 巻 2 号 p. 137-138
    発行日: 1999/11/15
    公開日: 2017/07/20
    ジャーナル フリー
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