歩行開始期における情動制御の発達的変化を調べるため, マイルドなフラストレーション状況における19人の子どもの行動を, 生後18カ月, 24カ月の二時点において観察した。子どもには, 実験課題として, 他者からの支援を積極的には受けられない状況下で, 玩具の入ったロックのかかった箱を開けることが課された。子どもの行動は, 対処様式 (問題焦点型・情動焦点型) と, 行動が向けられた対象の, 二つの観点から評価, 分析された。分析の結果, 18カ月齢から24カ月齢にかけて, 問題焦点型の対処行動の頻度には増加が認められた。中でも特に, より成功可能性の高い, 洗練された方略の使用が多く見られろようになった。一方で, 対処行動のうち, 母親に対して向けられた行動 (母親への援助や慰撫の要請) に関しては, 減少が認められた。以上の結果より, 歩行開始期には, 対処行動が状況に応じてより有効に組織化されるようになり, これにともなって, 自律的な対処への移行が推し進められることが示唆された。また, 本研究では, 情動焦点型の対処として複数の気晴らし行動が観察されたが, この時期に見られろ気晴らし行動には, 不快情動の沈静だけでなく, 自発的な快情動の創出という, より積極的な機能があるのではないかという考察がなされた。
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