発達心理学研究
Online ISSN : 2187-9346
Print ISSN : 0915-9029
11 巻, 1 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
  • 武田-六角 洋子
    原稿種別: 本文
    2000 年11 巻1 号 p. 1-11
    発行日: 2000/06/30
    公開日: 2017/07/20
    ジャーナル フリー
    本研究では, 児童期抑うつの特徴をより明確にするため, 成人の抑うつに比し特異的とされる"攻撃性"に注目し, 児童 (小学3〜6年生) とその保護者をペアにして調査した。具体的には, 子どもには自己報告形式の抑うつ尺度と, 攻撃性の特徴を見るP-Fスタディを, 保護者には (予どもの) 気質尺度を実施した。次に, 抑うつ尺度をもとに子どもを2群 (高抑うつ傾向群と低抑うつ傾向群) に分け, 各々に保護者報告により得られた気質 (内向気質か外向気質か) を付与した後, P-Fスタディで得られた各評点因子につき分散分析を行った。気質と攻撃性については, 有意な結果は得られなかったが, 抑うつと攻撃性については興味ある結果が得られた。すなわち, 抑うつ傾向の高い児童の方が他者に対する攻撃性が高く, 自己に対する攻撃性が低かったのである。この時期の子どもにとって, 抑うつの低さは内省力を促し, 攻撃性も他者より自己に向かう傾向に結びつくが, 抑うつ傾向の高い子どもでは, 攻撃性が未熟な形で他者に向かい, 自分自身に目が向きにくくなるという特徴が見られた。成人の抑うつが過度の内省や罪悪感を特徴とするのに対し, 児童期の抑うつは, 目常場面での他者への高い攻撃性を特徴としていることが明らかになった。
  • 武居 渡, 鳥越 隆士
    原稿種別: 本文
    2000 年11 巻1 号 p. 12-22
    発行日: 2000/06/30
    公開日: 2017/07/20
    ジャーナル フリー
    本研究は手話言語環境にある聾児の非指示ジェスチャーの特徴について明らかにし, 手話の初語との関連について検討することを目的とした。ろうの両親を持つ聾児2名 (5カ月〜15カ月) のコミュニケーション場面がピデオに収録され, 子どもの手の運動を記述し, 分析した。その結果, 非指示ジェスチヤーに関して以下の4点が明らかになった。第一に, 手がコミュニケーション手段として使用される前に, 非指示ジェスチヤーが出現した。第二に, 非指示ジェスチヤーの多くはシラブルを構成し, リズミカルな繰り返しがみられた。第三に, 非指示ジェスチヤーは, 6カ月前後では「記述の困難な単なる手の動き」として観察されたが, 10カ月前後にはそれが「リズミカルな繰り返し運動」ヘと変化し, 1歳を過ぎると「一見サインのようなジエスチャー」が多く見られ, 発達に伴い質的に変化していった。第四に, 非指示ジェスチャーと初語との間に, 連続性が確認された。これらの結果から, 非指示ジェスチヤーは, 音声哺語の特徴と多くの点で類似していることが明らかになり, 手話言語獲得において, 非指示ジェスチャーが手話の音韻体系を作りあげ, 哺語の役割を果たしていることが考えられた。
  • 古屋 喜美代, 高野 久美子, 伊藤 良子, 市川 奈緒子
    原稿種別: 本文
    2000 年11 巻1 号 p. 23-33
    発行日: 2000/06/30
    公開日: 2017/07/20
    ジャーナル フリー
    本研究は絵本の登場人物という架空の他者について, l歳代約1年間を通して子どもがその情動を理解していく発達的変化を検討した。「泣き」と「怒り」に焦点化した絵本2冊を材料とし, 4人の子どもを対象に月に約1度の割合で1年間母子による絵本読み場面の観察を行った。 (1) 「泣き絵本」では, 子どもは1歳半ば頃には泣き表情の原因と結果としての安堵, 喜びの情動を認知し, 共感を示す表情変化が見られた。「怒り絵本」では, 共感の表情変化に個人差が大きく見られた。また1歳後半では, 子どもは登場人物の不快な情動より登場人物2名の間のやりとりの面白さに注目することもあった。 (2) 「泣き」は子どもにそれらしい模倣が出現しやすかった。子どもは「泣き」の表現に結ぴついた悲しみの情動に容易に気づくことができると考えられる。これに対し「怒り」は形だけの模倣が多く, 不快の情動より母子間でのコミュニケーションそのものが子どもにとって関心の的となりやすかった。 (3) 4名中3名において, 1歳半ぱ頃から叙述的発話が出現した。多くは登場人物の行動や状況のコメントであるが, 登場人物に対する非難や気持ちの説明も出現した。叙述的発話は登場人物に関する子どもの認知的理解を示すものであり, この認知的理解が登場人物の情動理解を深める可能性がある。1歳代の子どもたちは発達にともない, 登場人物の情動について単なる情動の伝染ではない, 囚果的状況を踏まえた代理的情動反応を示すこと, 認知的理解が進むことが示された。
  • 山田 典子
    原稿種別: 本文
    2000 年11 巻1 号 p. 34-44
    発行日: 2000/06/30
    公開日: 2017/07/20
    ジャーナル フリー
    老年期の余暇活動の型と生活満足度や心理社会的発達との関係を検討した。l与7分更群 (精神的活動あるいは文科系活動 : N=88) と登山群 (身体的活動あるいは体育系活動 : N=88) , さらに, コントロール群 (自分史を書いたこともなく登山にも参加しなかった在宅老人 : N=62) を被験者にして, サクセスフル・エイジングの指標である`生活満足度 (LSI) 'と`エリクソン心理社会的段階目録検査 (EPSI)' を施行した。この調査でわかったことは, 次の通りである。(1) LSIとEPSIの総得点・下位尺度全てにおいて自分史群が他の2群より平均値が高く数項目において有意差が見られたが, 登山群とコントロール群間ではどの項目においても有意差が認められなかった。(2) 生活満足度と心理社会的発達課題との関係については, 3群とも心理社会的発達課題のどの項目も中程度にバランスよく生活満足度と関連していたが, 信頼性や統合性といった項目にやや高い相関が見られた。生活満足度と心理社会的発達の関係において3群とも同じようなパターンを示しているにも関わらず, 生活満足度と心理社会的発達達成度において群差が生じたというこの結果は, 余暇活動の心理的効用の差 (個体の発達・創造性・自己表現を特性とする自分史群と楽しみ・気晴らしを特性とする登山群とコントロール群) によることを示唆している。
  • 湯澤 美紀
    原稿種別: 本文
    2000 年11 巻1 号 p. 45-54
    発行日: 2000/06/30
    公開日: 2017/07/20
    ジャーナル フリー
    語長効果とは, 長い語が短い語よりも再生されにくいという現象であり, 大人や年長の子どもの場合, 作動記億内のリハーサル活動を反映したものであると考えられている。実験1では, 直後再認課題を用いて, 3, 4歳児の語長効果を調ベ, 幼児のリハーサル活動の有無について検討した。条件1では29名の3, 4歳児に長い語と短い語の音声情報のみを提示し, 柔件2では, 30名の3, 4歳児に音声情報と視覚情報を同時に提示した。検索手がかりは, 音声モードでの再認を求める音声検索手がかり条件と視覚的モードでの再認を求める視覚検索手がかり条件の2条件を設定した。その結果, 条件lと条件2ともに, 音声検索手がかり条件でのみ語長効果が見られた。さらに, 実験2では, 19名の3, 4歳見に対して直後再認課題と遅延再認課題の両課題について音声検索手がかり条件で再認を求めた。その結果, 直後再認課題で見られた語長効果が遅延再認課題そは見られなかった。以上のように, 逐次的な再生ならびに言語出力を求めない直後再認課題で語長効果が確認されたことから, 幼児の語長効果が再生出力時の処理のみを反映したものではなく, 作動記億内のリハーサル活動を反映したものであることが示唆された。
  • 尾見 康博
    原稿種別: 本文
    2000 年11 巻1 号 p. 55-56
    発行日: 2000/06/30
    公開日: 2017/07/20
    ジャーナル フリー
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