真菌と真菌症
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24 巻, 3 号
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  • 新井 正
    1983 年 24 巻 3 号 p. 151-152
    発行日: 1983/10/20
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    Numerous reports, but contradictory each other, have appeared in the literature on the defense mechanisms of the host against fungal infection. This symposium was organized in an attempt to systematize these results from the view point of immuno-biochemistry. With reference to the infection of dermatophytes, the relationship between invasion sites and tissue chemical components, including keratinase inhibitors, was discussed. As for opportunistic fungal infection, sensitization or immunization of the host and the development of the specific symptoms were described with Aspergillus fumigatus and Candida albicans. Autoptic as well as clinical studies on fungal infection were also reported with respects to peripheral leukocyte counts and levels of immunoglobulins. Finally, strong protective immunity elicited by purified ribosome fraction from Histoplasma capsulatum and its effectiveness against the infection was emphasized.
  • 小川 秀興, 服部 道廣, 根木 信, 高森 建二, 滝内 石夫
    1983 年 24 巻 3 号 p. 153-158
    発行日: 1983/10/20
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    皮膚真菌症における host-parasite relationship について, 近年論じられているいくつかの問題点のうち以下の点について自験例を中心に整理して報告した. (1) C. albicansTrichophyton, Microsporum 属は如何なる機序の下に角層に侵入するのか, (2) 何故頑癬が陰のう部に生じ難いのか, (3) 癜風菌による病変部では何故脱 (低) 色素化が多く生じるのか, などの点である. まず (1) については, C. albicans を皮膚角層添加培地内において培養したところ, 角質溶解性タンパク分解酵素を産生した. 本酵素は至適pH4.0近辺を示し, 各種阻害剤による検討の結果 carboxyl proteinase であることが示唆された. 一方, Trichophyton, Microsporum 属共に角質 (毛) 添加培地により serine系proteinase が誘導され, この酵素は分子量45,000,至適pH7.8を示し, C. albicans 由来の proteinase とは異なる. 以上より,これら真菌は各々特異的角質溶解性タンパク分解酵素を産生しつつ角層内に侵入するものと考えられる. (2) については, 従来一説として遊離脂肪酸が多い為と考えられてきた. そこで, 正常人陰のう, 大腿内側部, 背部皮表より皮脂を採取し比較定量してみたが, 陰のう部における遊離脂肪酸値はむしろ低値を示した. (3) では従来癜風菌による皮脂分解産物が tyrosinase 阻害に働くと考えられているが, 病変部と非病変部では皮脂7大成分に異常なく, 又その各々の tyrosinase 阻害も陰性であつた. しかし乍ら, ジカルボン酸類とくにC9~14では阻害が起こり, 癜風鱗屑中には若干ながらこれらが有意に高値に検出されることから脱色素機序と関連づけられる可能性はあろう.
  • 発地 雅夫
    1983 年 24 巻 3 号 p. 159-164
    発行日: 1983/10/20
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    肺アスペルギルス症は, 真菌症の中でも最も多様な病態を示すものの一つであるが, その発症病理は必ずしも明確ではない. 基本的には, 健康な個体に発症することはほとんどなく, 個体の条件によつて各種の病型が規定されることになろう. 初期病変の解析は, ヒトの症例では, なかなか困難である. したがって初期病変解明のため家兎を使つて, 次の4群について行つた実験の一部を紹介する. 無処置群, フォルマリン死菌による経静脈感作群, 同経気道感作群, および抗癌剤 (cyclophosphamide と mitomycin C) 処置群について, 気道から Aspergillus fumigatus の生菌浮遊液を1回肺内に接種した後, 経時的に病理組織学的に検索した. その結果, 生菌の排除は, 多核白血球が主体であるが, 病巣の吸収にはマクロファージが主要な役割を演ずることが判明した. また, 経静脈的感作群では, 血清抗体も産生され, オプソニン化ないしIII型アレルギーの関与に基づく激しい白血球反応で始まつたが, 吸収過程では肉芽腫性反応により病巣が縮小した. この過程でIV型のアレルギーの関与も想定された. 経気道感作群では, 感作の過程ですでに末梢気管支から肺胞にかけてマクロファージの集簇があり, 生菌の接種に対して, きわめて早い排除がなされた. 血清抗体の産生と同時に, マクロファージの活性化が示唆された. 抗癌剤投与群では, 菌糸形成を含む菌の発育が進行し, 病巣の発現はやや遅れるとともに, すべての浸潤細胞の壊死と組織破壊がもたらされた.
  • 三上 襄, 多部田 弘士, 新井 正
    1983 年 24 巻 3 号 p. 165-171
    発行日: 1983/10/20
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    Candida 感染症の免疫学的解析と効果的なワクチンを開発するために, 生菌免疫の代りにγ線照射により不活化したワクチン (GRワクチン) を用いてマウスの Candida 症に対する感染防御効果を検討した. その結果GRワクチンを皮下に免疫することにより, 引続く Candida 感染に対して, 生菌免疫に匹敵する感染防御免疫を誘導することができた. 免疫マウスにおいて抗体は検出できなかつたが, 遅延型過敏症反応は強く陽性となつており, また in vivo および in vitro のいずれのアッセイ系によつてもマクロファージの活性化が観察された. この感染防御免疫は細胞の移入により伝達できること, および脾細胞を anti-Thy 1.2と補体の処理により伝達が阻止されることなどより細胞性免疫の重要性が強く示唆された. さらにトリパンブルーなどを用いた実験から, 感染部位におけるマクロファージの役割をも明らかとした. またマクロファージ以外の他のエフェクターについても検討した.
  • 久米 光, 望月 真弓, 木村 千恵子, 奥平 雅彦
    1983 年 24 巻 3 号 p. 172-178
    発行日: 1983/10/20
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    わが国で経験される内臓真菌症の多くは, 個体の易感性, とくに全身性の防御機構としての免疫能の低減によつて, その感染・発症が大きく左右される.
    そこで, 病理組織学的検索ならびに臨床微生物学的検索によつて確認された真菌感染例, 細菌感染例および非感染例 (健康人を含む) の計44症例を検索対象として, 流血中の免疫グロブリンおよび末梢白血球の量的ならびに質的な差を比較検討した. そして, 末梢白血球数とくに成熟好中球数の低減の程度と真菌感染例, 細菌感染例および非感染例との三者間に極めて密接な関連性があることを明確に示唆する成績を得, 人体例におけるその実態を報告した.
    また, opportunistic fungus infection の制御の為には immunocompromised host における易感染性の早期診断法の確立は重要な事柄の一つと考えられることから, 動物実験を含めた今回の一連の検索で感染の重篤度と極めて密接な相関性を示した末梢白血球数を指標とした易感染指数の算定法を試案した. そして, この末梢白血球を量的また質的に総合評価する算定法によつて算出された易感染指数は真菌感染例と非真菌感染例との間で有意な差を示し, 真菌感染の危険性を予測するに足る有用な判定指標であろうことを指摘した.
  • Ram P. Tewari, Robert LaFemina
    1983 年 24 巻 3 号 p. 179-187
    発行日: 1983/10/20
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    We have previously demonstrated a high degree of protection in mice immunized with partially purified ribosomes and ribosomal protein from H. capsulatum. In order to define more precisely the nature of the protective antigen(s), we have further investigated the immunogenicity of different subcellular fractions from yeast cells of H. capsulatum. The ribosomes and a membrane-rich cytoplasmic fraction from Histoplasma protected 90-100% of the immunized mice against a lethal challenge with yeast cells of H. capsulatum. The ribosomes incorporated 14C-L-phenylalanine in a poly U directed cell-free protein synthesizing system and could be dissociated into 40 and 60S subunits. Significant but somewhat lower levels of protection were obtained with the mitochondrial fractions. In contrast, only 30-50% protection was observed with cell wall preparations and 20-40% protection with microsomal and ribosomal supernates. High levels of protective immunity were observed when mice were immunized with combination of suboptimal doses of ribosomes and cell walls. Immunization with ribosomes from Saccharomyces cerevisiae and Candida albicans in combination with Histoplasma cell walls did not elicit significant protection against H. capsulatum, indicating the specific nature of the immune response. These results demonstrate that ribosomes and membrane-rich cytoplasmic fractions are the major protective cellular constituents of Histoplasma. Furthermore, the combination of purified immunogenic subcellular constituents in the ritht proportion may provide a safe and effective veccine against histoplasmosis.
  • 序言
    山口 英世
    1983 年 24 巻 3 号 p. 188-193
    発行日: 1983/10/20
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    Recently intensive studies have been made on the mechanism of action of an increasing number of antifungal agents. Among them are electronmicroscopical studies which provided useful data to meet the criteria derived mostly from biochemical studies. Based on the results of all these studies, it was interestingly found that some antifungal agents specifically inhibit synthesis of cell wall polysaccharides, particularly chitin or β-glucan, and some others do synthesis of informational macromolecules, RNA or DNA, in susceptible fungi. Antifungal chemotherapy has recently made rapid progresses, but there are still needs to continue the search for new agents. The laboratory testing procedures and methodologies for more correct in vitro as well as in vivo evaluations should be improved to detect the potential advantages of new antifungals whether they be derivatives of known agents or a totally new class of agents. Several outstanding papers dealing with these subjects of chemotherapeutical importance will be presented and discussed in this Workshop.
  • 生化学的研究
    平谷 民雄, 山口 英世, 内田 悦子, 大隅 良典, 渡辺 晋一, 奥住 捷子, 八巻 寛, 田中 信夫, 山本 容正, 岩田 和夫
    1983 年 24 巻 3 号 p. 194-204
    発行日: 1983/10/20
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    主として糸状菌に対して抗菌作用を示す variotin, haloprogin, naftifin および tolnaftate の作用機作を生化学的に解明するために, (i) Sporothrix schenckii 酵母型細胞, (ii) Trichophyton rubrum の酵母型細胞 (分節型分生子) および (iii) Saccharomyces cerevisiae より調製した無細胞高分子合成系, DNAポリメラーゼ, RNAポリメラーゼおよび細胞壁多糖合成酵素系を用いて検討を行つた. その結果, これらの薬剤は核酸 (DNAまたはRNA) 合成系および細胞壁骨格多糖 (β-グルカンまたはキチン) 合成系のいずれかまたは両者に対し特異的阻害作用をもつことが認められた. また, aculeacin A については, キチン, マンナン合成系を阻害せず, β-グルカン合成のみを選択的に阻害することが示された.
  • 大隅 正子
    1983 年 24 巻 3 号 p. 205-221
    発行日: 1983/10/20
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    抗生物質や抗真菌剤を含む種々の培養条件が, 酵母細胞のミトコンドリア形成に及ぼす影響について, 簡単に解説し, 次に (1) Imidazole 系抗真菌剤 econazole, および, (2) Aculeacin A の作用機序についての超微構造的解析を述べる.
    (1) S.cerevisiae における抗真菌剤 econazole の殺菌作用を, フリーズ・フラクチャー法および超薄切片法により電顕的に研究した結果, econazole は細胞膜の両破断面, とくにPF面に構造変化をもたらし, 膜内蛋白粒子の密度が減少することがわかつた. これは, 殺菌的濃度の econazole が膜リン脂質との相互作用により, 真菌の細胞膜に対し非常な障害を与えるという生化学的見地と一致している.
    (2) 増殖期の C.albicans 細胞においては, aculeacin A が正常な細胞壁の形成を顕著に阻害した. さらに, C.albicans のプロトプラストは, aculeacin 添加あるいは無添加の浸透圧調整済液体培地において, 細胞壁を再生した. 無添加のプロトプラストは, その表面に微小線維を再生し, それらは太い帯となり, 長い線維の網を形成した. この微小線維様構造はB-1, 3グルカナーゼで処理すると破壊され, さらにcell-free系において細胞膜フラクションをUDP-グルコースを単一の基質として, in vitroでグルカン合成を行うと, 形態学的に同一の微小線維が合成されることから, これはβ-1, 3グルカンの鎖と思われる. 一方 aculeacin A 存在下では, 正常な線維状の帯や網の形成は非常に阻害され, 短い線維が出現した. 以上より aculeacin A はβ-1, 3グルカンの合成だけでなく, この多糖類の微小線維の網状構造体への発達も阻害するということが示唆された.
  • 皮膚糸状菌を中心に
    楠 俊雄
    1983 年 24 巻 3 号 p. 222-229
    発行日: 1983/10/20
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    In vitro 抗菌活性の成績は, 薬剤感受性測定方法により, その価が異なることが知られている. 今回, Trichophyton mentagrophytes に対する bifonazole (bay h 4502) と oxiconazole (ST 813) の最小発育阻止濃度 (MIC) を broth microculture 法と寒天平板希釈法にて測定したところ, 寒天平板希釈法によるMIC値が broth microculture 法による成績より1.3倍高値を示した. 以下 broth microculture 法を用い, 臨床分離の皮膚糸状菌に対する ketoconazole, griseofulvin, clotrimazole, miconazole, econazole, exalamide, isoconazole, bifonazole, sulconazole (RS 44872), oxiconazole, 710674-S の in vitro 抗菌活性を測定した. Ketoconazole と griseofulvin の両者は T. rubrum, T. mentagrophytes, Epidermophyton floccosum に優れた抗菌活性を示したが Microsporum gypseum, M. canis に対しては, griseofulvin の方が ketoconazole より2.3~6.3倍優れた抗菌活性を示した. Clotrimazole, miconazole, econazole, exalamide の皮膚糸状菌に対する in vitro 抗菌活性の比較では, clotrimazole, econazole, miconazole, exalamide の順に高い抗菌活性を認めた. Isoconazole, bifonazole, sulconazole, oxiconazole, 710674-Sの新イミダゾール誘導体の皮膚糸状菌全体に対する geometric mean MIC値は, 1.01μg/ml以下と優れた抗菌活性を示した.
  • 高橋 久
    1983 年 24 巻 3 号 p. 230-233
    発行日: 1983/10/20
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    外用抗白癬菌剤の in vivo スクリーニングのための動物実験法として従来科研法が行われて来た. しかしこの方法は接種菌量が多くてモルモットに作製した病巣は痂皮化隆起してツェルズス禿瘡様症状となり, これに対する外用剤の塗布は刺激などの副作用を伴うので実情に合わないと考えられる.
    今回接種菌量を加減し, 105~6/ml以下の菌数の液を0.05mlモルモットの背部の病巣1ヵ所に接種すればツェルズス禿瘡に移行し難いことを見出した. この方法を用いてチメロサールの1, 0.1, 0.01%の吸水軟膏, クロトリマゾールの2, 1, 0.5, 0.1%クリーム, 5%サリチル酸, サリチル酸ソーダ吸水軟膏, 2%トルナフテート・クリームについて検討して次の結果を得た.
    1) 未だ病巣の所見と病巣の菌陽性度が一致しない憾みがある. 2) チメロサールは濃度順に効果が低下した. 3) クロトリマゾールは1%が適当と考えられた. 4) サリチル酸は同ソーダより有効であり, それには本剤の経毛嚢吸収性が関与すると想像された. 5) トルナフテートには塗布部位以外の病巣も治癒に至る隣接部波及効果が認められた.
  • 第4報 Candida albicans の発芽, 伸長ならびに多形核白血球の貪食殺菌能に及ぼす Ketoconazole の影響
    皆川 治重, 北浦 晧三, 峯浦 和幸, 丸茂 博大
    1983 年 24 巻 3 号 p. 234-240
    発行日: 1983/10/20
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    ウシ胎児血清添加のイーグルのMEM培地 (Eagle's minimum essential medium) において, ketoconazole は 5ng/ml の濃度で, Candida albicans の発芽管形成を完全に阻害した. アミノ酸合成培地 (Amino acid synthetic medium) であらかじめ発芽管を形成した C.albicans に対して, ketoconazole は500ng/ml の濃度で発芽管の伸長を阻害した. Miconazole, econazole, clotrimazole, amphotericin B および flucytosine については ketoconazole の如く低い薬剤濃度で, 同様の作用は認められなかつた. Ketoconazole は, 多形核白血球の C.albicans 貪食殺菌能を上昇させた.
  • 第1報 人血清補体の活性化とマクロファージの走化性
    高橋 めぐみ, 牛嶋 彊, 尾崎 良克
    1983 年 24 巻 3 号 p. 241-244
    発行日: 1983/10/20
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    Pityrosporum 属の P. orbiculare, P. ovale, P. pachydermatis の3菌種の菌体で処理した正常人血清に対するマウス腹腔マクロファージの走化性を Boyden chamber 法で検討したところ, 未処理血清に比較してマクロファージの強い走化性が観察された.
    免疫電気泳動法により補体の活性化経路を調べた. EGTA処理および未処理血清では, Pityrosporum の菌体で処理することにより, C3とfactor B に対する沈降線の泳動像が変化したが, EDTA処理血清では変化せず, 補体の代替経路が活性化されたことが明らかとなつた. この補体の代替経路の活性化に伴う走化性因子の生成が, 強いマクロファージの走化性をもたらしたものと考えられる.
  • 第16報 寄生体側因子としての Asp-hemolysin の生物学的性状
    蝦名 敬一, 横田 勝司, 坂口 平
    1983 年 24 巻 3 号 p. 245-252
    発行日: 1983/10/20
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    Aspergillus fumigatus の産生する Asp-hemolysin を静脈投与したマウスの病理組織学的所見において, 腎臓, 心臓, 肝臓, 脳にさまざまな程度の病変が認められ, 特に心臓, 肝臓および脳では血管周囲の病変が主なものであつた. すなわち, 心臓では心筋層における細動脈周辺の心筋細胞, 肝臓では中心静脈周辺帯肝細胞の変性, 壊死がそれぞれみられ, 脳では小脳白質毛細血管からの出血巣が観察された. 免疫組織学的所見においては, 腎臓および脳の動脈壁中膜に本毒素が存在することを認め, さらに脳では, 脳軟膜にもその存在が観察された. また Asp-hemolysin のマウス腹腔内投与により, 腹腔内の血管透過性が顕著に亢進することを, またジフェンヒドラミン, レセルピン, 酢酸コーチゾンの前処理では, その透過性亢進がわずかに抑制されることを認めた. モルモット摘出腸管に対しても, 本毒素は収縮作用を有し, ジフェンヒドラミンでわずかにその収縮が抑制されることが観察された. また本毒素は, ヒト多形核白血球, モルモット腹腔マクロファージに対し著しい細胞毒性を示した. 以上のような Asp-hemolysin の多面的な生物活性から, Aspergillus fumigatus 感染における発症, 進展に菌側因子としての本毒素の活性が関与している可能性が示唆された.
  • 山口 英世, 平谷 民雄, 岩田 和夫
    1983 年 24 巻 3 号 p. 253-262
    発行日: 1983/10/20
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    新イミダゾール系抗真菌剤 Sulconazole の作用機序の特徴を知る目的で, Candida albicans 細胞の主要な生化学的活性, とくに生体高分子物質合成, 細胞壁多糖合成, 細胞膜機能および呼吸に対する本剤の影響を検討した. Sulconazole は静菌的濃度で生体高分子物質合成をRNA>DNA>タンパク質, の順に阻害し, 細胞壁マンナンおよびアルカリ不溶グルカンの合成をRNA合成に対する以上に強く阻害した. 本剤処理細胞においては核酸, とくにRNAの自己分解が著明に促進された. Sulconazole は, 2-デオキシグルコースの influx 抑制と efflux 促進, ソルボース細胞内保持能の低下, K+ および PO3-4の急速な放出, H+の influx 促進など細胞膜機能の障害を示唆する種々の効果を示し, また単離した細胞膜結合性 ATPase 活性を明らかに阻害した. 一方, 呼吸に対する本剤の影響は比較的軽度であつた.
    以上の成績から sulconazole の一次的作用は細胞膜障害であり, その結果として二次的に生体高分子物質, 細胞壁多糖合成阻害, 細胞内核酸の分解, 呼吸活性の低下などが引き起こされると推論された.
  • Mami Tsukiji
    1983 年 24 巻 3 号 p. 263-273
    発行日: 1983/10/20
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    Fifty strains of nine Saccharomyces species such as S. exiguus, S. unisporus, S. rosei, S. delbrueckii, S. dairensis, S. inconspicuus, S. vafer, S. fermentati and S. saitoanus were examined with respect to their serological properties and patterns of 1H-nuclear magnetic resonance (1H-n. m. r.) spectra of cell wall polysaccharides. The strains examined could be divided into three groups by slide agglutination tests using factor sera. Group I of S. exiguus including several strains of two different species, S. delbrueckii and S. dairensis, possessed antigens 1, 4, 5, 6, 10 and 26. Similarly, Group II strains of S. unisporus, S. exiguus and S. delbrueckii contained antigens 1, 4, 5, 6, 10 and 23. Group III composed of six different species possessed antigens 1, 4 and 24. After all, nine species including type strains were divided serologically into three groups. Antigenic differences were found among the strains of single species such as S. exiguus and S. delbrueckii. Therefore, the strains of S. exiguus in Group II and the strains of S. delbrueckii in Group I and II are assumed to be mislabeled strains. These strains were confirmed by the 1H-n. m. r. spectral patterns that correlated well with the serological relationships. The strains of S. rosei, S. inconspicuus, S. vafer, S. fermentati, S. saitoanus and S. delbrueckii in Group III are considered as one species because they were closely related by their serological characteristics and 1H-n. m. r. spectra of cell wall polysaccharides. In addition, slide agglutination methods with factor sera are excellent as the rapid and accurate test procedures for yeast identification.
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