超音波医学
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41 巻, 2 号
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特集「実践3次元心エコー法:今,診療に導入すべき評価項目」
  • 福田 祥大
    原稿種別: 実践3次元心エコー法:今,診療に導入すべき評価項目
    2014 年 41 巻 2 号 p. 143-154
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/03/25
    [早期公開] 公開日: 2014/01/14
    ジャーナル 認証あり
    日常臨床の場において,心腔,特に左室容積の計測や駆出率(ejection fraction: EF)に代表される心室機能の評価は,心疾患の診断や管理に必須な項目である.しかし,2次元心エコー図では様々な限界のために左室容積やEFを正確に計測することができない.3次元心エコー図では,容易に心臓の3次元情報を得ることができ,正確な左室容積の計測ができる.多くの報告によって,3次元心エコー図による計測が正確であることが証明されてきた.しかし,登場初期の3次元心エコー図では,画像取得から解析までの手順が非常に煩雑であり,日常臨床での使用には困難が伴った.近年はエコー機器が進歩し,時間・空間分解能が向上した.さらに,解析ソフトも大きく発展し,画像取得後の解析が簡便になった.また,左室だけでなく,左房や右室の容積も計測することができ,これまでにその正確性が報告されている.これら左房や右室の容積の臨床使用にはまだ少し時間を要するが,それでも,様々な心疾患の病態解明に役立てることができる.3次元心エコー図を取り巻く環境は急速に進歩しており,特に左室容積やEFの計測において日常臨床で使用することができる.
  • 瀬尾 由広, 石津 智子, 渥美 安紀子, 川村 龍, 青沼 和隆
    原稿種別: 実践3次元心エコー法:今,診療に導入すべき評価項目
    2014 年 41 巻 2 号 p. 155-163
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/03/25
    [早期公開] 公開日: 2014/02/11
    ジャーナル 認証あり
    スペックルトラッキング法の登場によって,単に左室駆出率(EF)による心機能評価から,左室の捻れ,長軸方向への収縮機能,左室非同期評価など新たな病態生理学について検討されるようになった.さらに,3次元スペックルトラッキング法が臨床で使用可能となり,2次元スペックルトラッキングでは評価できない様々な知見が集積されつつある.3次元スペックルトラッキング法では,左室内膜側の面積変形率や3D strainといった新しい局所壁運動評価法が提案され,従来のstrain評価法に比較して有用であると報告されている.また,3次元画像の利点を活かした心臓収縮伝播を画像する試みも行われており,心臓再同期療法に対するレスポンスの予測,不整脈における病態生理の解析,不整脈基質のリスクの層別化,そして心筋虚血の診断などにおいて新たな知見を提供する方法として期待される.さらに,右室における局所心機能評価にも応用され,今後の発展が望まれる.一方,3次元スペックルトラッキング法は2次元法に比べて複雑な画像処理を要するため,時間分解能や空間分解能に限界がある.しかし,アルゴリズムの改善や計算処理能力の向上などの技術革新によって,日進月歩で時間分解能や空間分解能の改善が計られており,臨床研究への応用だけでなく今後幅広く実臨床での普及が期待される.
  • 尾長谷 喜久子, 大倉 宏之
    原稿種別: 実践3次元心エコー法:今,診療に導入すべき評価項目
    2014 年 41 巻 2 号 p. 165-174
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/03/25
    [早期公開] 公開日: 2014/02/28
    ジャーナル 認証あり
    経食道心エコーで左房側から描出されるsurgeon’s viewは,リアルタイムで描出が可能で僧帽弁の解剖を容易に理解できることから,3次元心エコー図法のなかで最も臨床に応用される手法である.また,取り込まれた3次元画像から2次元画像を切り出すmultiplaner reconstruction(MPR)法は,2次元心エコーでは描出の難しい断面を描出することができ,僧帽弁病変の詳細な観察が可能である.僧帽弁逆流ではカラードプラ法を用いてvena contracta areaを切り出して計測することにより重症度の指標となる.3次元心エコーの弱点にスティッチアーチファクトがあるが,僧帽弁狭窄例の弁口面積の計測では心房細動例であっても関心領域をできるだけ小さく設定すると,1心拍で弁口の3次元データを取り込むことが可能で,これから正確な弁口を切り出し,面積を計測することができる.弁下構造を捉えるためには,経食道心エコーの経胃アプローチが有用であり,通常の中部食道アプローチと合わせて観察することで僧帽弁複合体全体を把握できる.弁輪のサドル型形状の評価や弁尖のtenting volumeといった3次元計測は臨床応用には至っていない.経食道心エコーと比較し非侵襲的な経胸壁心エコーの解像度がさらに改善され,3次元指標の自動解析が正確にできるようになれば臨床応用も進むであろう.
  • 竹内 正明, 大谷 恭子, 尾辻 豊
    原稿種別: 実践3次元心エコー法:今,診療に導入すべき評価項目
    2014 年 41 巻 2 号 p. 175-184
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/03/25
    [早期公開] 公開日: 2014/01/08
    ジャーナル 認証あり
    大動脈弁を含む大動脈弁複合体(以下,大動脈基部)の形態学的,機能的評価は経カテーテル的大動脈弁置換術が普及するにつれその重要性が増している.大動脈基部の評価は造影多列CTが最も簡便かつ有用な方法であると報告されているが,高齢の大動脈弁狭窄症患者は腎障害を合併する例も決してまれではなく,対象患者全例に造影多列CTを施行することは,放射線被曝,医療費も含め,現実的に困難である.3次元経胸壁心エコーは左室容積を正確に評価し得る方法であり,本手法により求めた一回拍出量を用いて大動脈弁弁口面積を評価する方法は,2次元断層心エコー,ドプラ法により求めた一回拍出量による大動脈弁口面積測定より優れた方法になり得ると考えられるが,大動脈基部の形態評価には時間空間分解能が劣るため,臨床的有用性は少ない.一方,3次元経食道心エコー図法による大動脈基部の評価は造影多列CTに匹敵する情報を提供する優れた方法である.本稿では3次元心エコー図法による大動脈狭窄症患者の大動脈弁,大動脈基部の臨床的評価に関し,その利点欠点を他の検査法と比較しながら論述したい.
  • 芦原 京美
    原稿種別: 実践3次元心エコー法:今,診療に導入すべき評価項目
    2014 年 41 巻 2 号 p. 185-191
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/03/25
    [早期公開] 公開日: 2014/02/13
    ジャーナル 認証あり
    人工弁評価では,超音波の多重反射・音響陰影で,人工物の遠位の観察困難が問題である.通常の経胸壁心エコー図法(TTE)で評価困難なこの部分を,食道側,つまり反対側から評価するのが経食道心エコー図法(TEE)である.しかし,TTEでは,各断面から異常部位が比較的容易に判断できるのに対し,TEEでは異常部位の理解には熟達が必要となる.3次元経食道心エコー図法(3D-TEE)では,フルボリューム画像から2次元画面を切り出すことで,従来法にはない自由な断面からの画像取得が可能であり,今まででは不可能であった方向からの人工弁観察が可能である.心房・心室・大動脈から,人工弁の動く様を描出するsurgeon’s viewは,人工弁構造の理解のみならず,合併症や感染性心内膜炎の観察に大きな威力を発揮する.置換弁性感染性心内膜炎では,疣腫のみならず,人工弁周囲膿瘍や人工弁周囲逆流,人工弁の離開や脱着,人工弁stuckについても良好に描出可能である.人工弁周囲逆流に関して,3D-TEEは逆流部分の大きさ,位置の評価に重要な情報を提供し,surgeon’s viewによる僧帽弁,大動脈弁の弁離開部分の描出画像は,離開部の位置・大きさ・形・数についても情報をもたらしてくれる.特に,3次元のmulti planar image(MPR)の使用により,弁離開部分の範囲の正確な評価が可能である.画質や画角など未だ解決すべき部分はあるが,3次元による人工弁構造提示が,医療者間のみならず患者や他の科の医師達との情報共有を可能とし,治療の向上につながることからもきわめて重要な検査法と考える.
  • 瀧聞 浄宏
    原稿種別: 実践3次元心エコー法:今,診療に導入すべき評価項目
    2014 年 41 巻 2 号 p. 193-207
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/03/25
    [早期公開] 公開日: 2014/02/28
    ジャーナル 認証あり
    実臨床の場において,先天性心疾患に対し,リアルタイム3次元心エコーをどのように使うか.最も有効な活用方法の1つは,複雑な心内形態を3次元表示し,それに基づいて修復術のプランニングとガイドを行うことである.例えば,両大血管右室起始症における心室中隔欠損を用いた心内ルート作成,複雑な房室弁閉鎖不全の形成,心内狭窄病変の解除などである.また,カテーテル治療の適応判断や治療中のモニタリングにも有効である(日本ではまだ心房中隔欠損の経皮的閉鎖だが,欧米では心室中隔欠損にも使用されている).さらに,経食道の使用できない小児において,心内表示の最も優れたアプローチ法は経心膜であり,直接3次元探触子を当ててvolume dataを収集することでSN比,解像度ともに良質な画像を得ることができる.Surgen’s veiwで内科医と外科医が共通の視点から,手術場で対話することができ,利用価値は高い.近年,胎児心臓超音波検査でも心臓の動きから同期をかけて3次元を再構築し,心臓病のスクリーニングをするというspatiotemporal image correlation(STIC)といわれる心エコー法も臨床応用されてきている.今後は,心機能や弁機能に関する3次元解析が先天性心疾患の分野でも進み,定量評価の結果が疾患のモービリティーやモータリティーの予測および改善に貢献していくことが望まれる.
原著
  • 山口 匡, 蜂屋 弘之
    2014 年 41 巻 2 号 p. 209-224
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/03/25
    [早期公開] 公開日: 2014/01/14
    ジャーナル 認証あり
    目的:超音波を用いた肝線維症の定量的診断法を開発することはきわめて重要である.パワースペクトル,テクスチャパラメータ,局所減衰,および統計学的特徴などの超音波信号の特性を用いて組織の特徴を解析することを可能にするためには,複雑な散乱体の構造と超音波信号との関係を十分に理解する必要がある.方法:本研究では,計算機シミュレーションによる散乱体モデルを用いて,超音波エコー信号の振幅包絡特性を解析した.ここで,我々の提案する定量的パラメータを用いたイメージング法を評価するために,様々な肝臓の状態を模したモデルを作成している.エコー信号の統計的特性は,スペックルを呈する肝臓内に内包された媒質の散乱体密度の増減に伴って変化した.結果:計算機シミュレーションにおける解析結果を考慮し,不均質な組織構造を有する媒質についての新しい解析法を本稿で提案する.この新しい方法により,嚢胞や血管の影響を除外し,これまでに提案されてきた手法に比して高精度に線維組織の存在を検出することが可能である.
症例報告
  • 表原 里実, 西田 睦, 佐藤 恵美, 工藤 悠輔, 作原 祐介, 三橋 智子, 柿坂 達彦, 横尾 英樹, 神山 俊哉, 清水 力
    2014 年 41 巻 2 号 p. 225-232
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/03/25
    [早期公開] 公開日: 2014/01/31
    ジャーナル 認証あり
    32歳,女性.胃部不快感と発熱で近医受診するも改善せず,右季肋部痛も出現したため当院受診.腹部超音波(US)では,肝S5,8を主体に径106 mmの境界明瞭輪郭整な等‐低エコー腫瘤および右肝静脈内に連続する超音波像がみられた.Sonazoid®造影では,動脈優位相血管イメージで腫瘤内に流入する屈曲した索状の造影効果,潅流イメージにて不均一な強い造影効果,門脈優位相で造影効果は軽度減弱.また,造影効果不良域を認め出血,壊死を疑った.Micro Flow Imagingでは右肝静脈内の超音波像内に豊富な血管構築を認め腫瘍栓の所見であった.後血管相では分葉状の欠損像を呈した.CTでは,動脈相で不均一濃染,平衡相でのwash outは認めなかった.造影MRIでは,T1強調像で均一な低信号,T2強調像で不均一な高信号を呈し,肝細胞相では造影剤の取り込みは低下していた.肝細胞癌,癌肉腫,混合型肝細胞癌など悪性腫瘍が疑われ右葉切除施行.病理組織学的に,豊富な粘液浮腫状間質を背景に,紡錘形細胞が個在性に増殖,小型リンパ球様細胞を伴う樹枝状血管が豊富に介在していた.炎症性筋線維芽細胞性腫瘍(Inflammatory myofibroblastic tumor: IMT)と診断された.肝原発IMTはきわめてまれで悪性腫瘍との鑑別が困難とされる.造影USを施行し得た肝IMTを経験したので報告する.
  • 佐々木 綾香, 内田 浩也, 三木 万由子, 井谷 智尚, 三村 純, 大石 悠香, 山野 愛美, 登尾 薫, 佐藤 信浩, 橋本 公夫
    2014 年 41 巻 2 号 p. 233-238
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/03/25
    [早期公開] 公開日: 2014/02/17
    ジャーナル 認証あり
    腹部超音波検査で診断された小腸憩室炎の1例を報告する.症例は79歳男性で,右下腹部痛と発熱のため来院した.右下腹部に限局した腹膜刺激症状を認め,症状からは急性虫垂炎,大腸憩室炎が疑われたが,腹部超音波検査,CT検査にて虫垂の腫大や上行結腸の炎症性変化は認めず,終末回腸に強い壁の肥厚性変化と小腸憩室,膿瘍形成を認めた.小腸憩室炎の腸間膜内穿破による腸間膜膿瘍の術前診断で回盲部切除術を施行した.バウヒン弁から10 cmの終末回腸に憩室を認め穿通し腸間膜膿瘍を形成していた.病理組織学的所見と併せて,回腸憩室穿通による腸間膜膿瘍と診断した.腹部超音波検査は術前診断に非常に有用であった.
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