管理会計学 : ⽇本管理会計学会誌 : 経営管理のための総合雑誌
Online ISSN : 2434-0529
Print ISSN : 0918-7863
11 巻, 1 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
論文
  • 陸 根孝
    2003 年 11 巻 1 号 p. 3-14
    発行日: 2003/06/20
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    本研究は,原価企画を推進した企業の集団成熟度を基準とし,企業を2分類したうえで,重要成功要因としての組織能力と推進成果間の関連性を把握し,探索的な観点から集団成熟度による推進成果の差を検証する。この目的のため,製造業から回収した103企業に対するアンケート分析を実施した。分析結果を見ると,第一に,集団の成熟度の高い企業では成熟度の低い企業より推進成果が相対的に高かった。第二に,分散分析の結果によると,集団成熟度はすべての推進成果と正の関連性を持っていて,ローカル能力を除いた組織能力(アーキテクチャ能力やプロセス能力)は集団成熟度との結合による交互作用効果を示した。これらをまとめると,原価企画システムを推進する企業が,当初期待したとおりの成果を収めるためには,集団の成熟度に関する事前管理が必要であることを示唆している。

  • 高見 茂雄
    2003 年 11 巻 1 号 p. 15-24
    発行日: 2003/06/20
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    投資意思決定は企業経営に及ぼす影響が大きいにもかかわらず,投資のリスクの把握,測定に関してはあまり議論がされていない.回収期間法,NPV法においてはリスクを回収期間,βなどの単一の数値でとらえているが,本来は事業価値の確率分布形状を想定すべきである.また,リアル・オプションでもある程度確率分布を想定してはいるものの歪度,尖度などのリスク特性値まで踏み込んだ考察は見られない.本論文では売上予測方法の先行研究を発展させ,売上予測に基づいた事業価値の確率分布,リスク特性値をいかに測定するかを示すとともに,NPV法とリアル・オプションでのリスクの把握,コントロール手法の差異を検討し,それらのリスク情報が投資意思決定に与える影響度を論じる.本論文での新しい知見はリスク特性値の測定方法を考案したこととともに,標準偏差を軽減するリスクコントロール手法が2つの評価方法では異なり,リアル・オプションではコントロールの自由度が高まる反面,確率分布の変化に伴う歪度,尖度などのリスク特性値の変化に注意を払うべきという経営管理上の課題を展開したことである.

  • 上枝 正幸, 高尾 裕二
    2003 年 11 巻 1 号 p. 25-41
    発行日: 2003/06/20
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    本稿は,開示に信憑性がありかつコストがかからなければ,起こりうる最悪の情報を保有していると想起されないように私的情報の完全開示が生じる,との理論モデルの主張を検証するために設計された16の実験市場の結果を報告する。実験では2つの操作がなされ,2×2因子のセル・デザインを創出した。操作における処理変数は(1)起こりうる実現値の数および(2)反不正ルールの存否である。前者は先行研究へのわれわれの疑問点によるもので,後者はモデルの決定的な条件として置かれている反不正ルールへのわれわれの関心によるものである。反不正ルールを伴うセルは,反不正ルールを伴わないセルのベンチマークとしても用いられる。結果は,理論仮説および行動予測を一般に支持し,かつ幾つかの興味深い知見を提供するものであった。

  • 木村 史彦
    2003 年 11 巻 1 号 p. 43-55
    発行日: 2003/06/20
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    本稿は,経営者の近視眼的な研究開発投資行動と企業のガバナンス構造の関係について分析することを目的とする.資金調達,経営者のインセンティブ,そして安定株主による株式保有が「目標利益を達成するために研究開発投資を削減する可能性」に及ぼす影響について仮説を導出し,日本企業のデータを用いて分析する.

    1992年から1998年までを対象とした分析の結果,(1)負債比率が高い場合には経営者が近視眼的行動をとる可能性が高い,(2)日本におけるガバナンス構造の特徴とされる,安定株主による所有割合が高い場合,近視眼的行動をとる可能性が低くなるという知見を得た.しかし,分析期間の後半では,(2)の妥当性が観察されず,研究開発投資における近視眼的行動と企業のガバナンス構造の関係が変化していることも見いだされた.

  • 椎葉 淳
    2003 年 11 巻 1 号 p. 57-71
    発行日: 2003/06/20
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    本稿の目的は,振替価格を原価よりも厳密に高い水準に設定することが望ましくなる理由について,これまでとは異なる説明を与えることにより,管理会計における理論と実務の乖離を埋めることにある.本稿では,費用削減投資を行う権限を川上部門に,最終製品価格を設定する権限を川下部門にそれぞれ委譲している分権的な企業組織を想定している.このとき,川上部門の投資が川下部門の費用削減に貢献するという意味において部門間の協力が重要である場合には,本部は振替価格を川上部門の限界費用よりも厳密に高く設定すること,すなわち原価プラス利益の水準に設定することが望ましくなることをモデルの構築を通じて論証する.本稿のモデルは,実際に用いられている振替価格の設定方法の合理性をこれまでとは異なる点から説明するものである.

feedback
Top