管理会計学 : ⽇本管理会計学会誌 : 経営管理のための総合雑誌
Online ISSN : 2434-0529
Print ISSN : 0918-7863
6 巻, 1 号
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論壇
  • 西澤 脩
    1998 年6 巻1 号 p. 3-14
    発行日: 1998/03/20
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    1956年に早稲田大学の商学部に助手として奉職して以来,40有余年を経ましたが,この間一貫して管理会計を研究してまいりました.私の学風を一口で申せば,学際的管理会計(Inter-disciplinary Management Accounting)の研究でありまして,管理会計を中核として,隣接諸学との学際的な研究を進めてまいりました.その結果,マーケティング会計,研究開発会計,物流会計,広告会計等を開拓することができ,これらは現在では,それぞれ新しい独立した学問として定着するまでに至りました.このような学際的管理会計研究の系譜とその成果について次の4点から講演を行います.

    1 マーケティングと管理会計の学際的研究

    2 研究開発と管理会計の学際的研究

    3 物流と管理会計の学際的研究

    4 広告等と管理会計の学際的研究

    なお,この論壇は,日本管理会計学会の1997年度全国大会において,1997年9月5日(金)15:00より16:15まで,城西大学の4号館4–104教室で行われました特別講演を記録したものです.

論文
  • 三田 洋幸
    1998 年6 巻1 号 p. 15-43
    発行日: 1998/03/20
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    半導体産業は,典型的な装置産業であり,営業リスクの大きな収益構造を持つ.したがって,採算管理システムは,製品の販売価格と価格弾力性,生産数量と生産工程のキャパシティ制約,長期的には生産数量に応じて変化する活動能力費と設備投資コストなどの拘束能力費といった製品戦略要素を考慮しつつ,プロダクト・ミックスの決定,生産ラインへの生産数量の割り当て,新ラインの投入といった製品戦略の意思決定を的確に支援できなくてはならない.それには,半導体事業の成功要因に立脚した製品戦略要素を考慮しつつ,事業全体の収益構造の変化を的確に評価できることが必要条件となる.

    半導体産業の経営者・管理者は,製品の採算性を判断するための会計情報として製品原価を用いることの有用性に疑問を抱いている場合が少なくない.半導体の製品原価は,著しく大きな潜在需要と微細化技術のもたらすスケールメリットとの相乗効果によってダイナミックに低減する特徴を秘めている.したがって,どんなに緻密な方法を用いて製品の実際全部原価を計算したとしても,将来の収益性を判断するうえで有用な情報にはなり得ないのである.製品戦略の観点からは,将来にわたる収益構造のダイナミズムを把握することが重要であり,そのような目的に資する会計情報を整備することが望まれるのである.

    本研究は,このような問題意識のもとに,まず半導体事業の収益構造の分析を通じて,半導体製品原価がどのようなメカニズムで急激に低減するかを明らかにする.その上で,半導体事業の成功要因を設定し,それらに立脚した製品戦略の意思決定を支援する採算管理システムの考え方を提示する.本稿の採算管理システムは,短期および長期的な収益構造のダイナミズムを理解することによって,戦略代替案ごとの製品原価の予測と最適価格設定,長期的な利益を最大化するプロダクト・ミックスの選定と不採算製品の峻別,新製品ライン投資の経済性,といった半導体事業にとって戦略的に重要性の高い経営情報を提供するものである.

事例研究
  • 竹内 祐二
    1998 年6 巻1 号 p. 45-66
    発行日: 1998/03/20
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    戦後の日本経済の復興期に小売業の新興勢力として登場した大手スーパー各社は,高度成長の波に乗ってまたたくまに大企業の仲間入りを果たした.しかし,1980年代前半になると,景気後退の影響や新たな業種との競合などにより,業界全体の業績は急速に悪化し,いわゆる“スーパー冬の時代”を迎えた.

    大手スーパー各社は,環境変化に対応するために業務改革(通称“業革”)と呼ばれる構造改革運動への取り組みを開始し,危機的状況は回避することができた.しかし,業革後の各社の業績を見ると,イトーヨーカ堂だけがずば抜けて高収益体質となっているが,例えばダイエーはイトーヨーカ堂ほどの成果は得られていない.

    本稿は,業界を代表するイトーヨーカ堂とダイエーの2社を対比させることによって,大手スーパーの業革運動の経営的な位置づけと,高収益を可能にするマネジメント・システムの解明を目的としている.

    第1節で,問題意識を明確にしたうえで,第2節では,大手スーパーの急成長を可能にした環境条件と経営戦略,および戦略実行のためのマネジメント・システムを分析している.第3節では,大手スーパーの収益力を直撃した環境変化を整理する.第4節では,計数モデルを使って,業績低迷のメカニズムを解明する.そして,第5節及び第6節では,イトーヨーカ堂の高収益体質はどのように構築されたのかを分析し,大手スーパーの業革運動の本質に迫っている.

  • 丸山 義博
    1998 年6 巻1 号 p. 67-89
    発行日: 1998/03/20
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    鉢花の生産で面積が一定の用地に温室を設置し,底面給水方式を導入することで灌水と施肥の作業を省力化し,それによって余裕のできた人手を生産の増大に向けるとき,作業の省力化と棚の設置に要する費用はより少なく,生産量はより増大するような温室のサイズと棚の設置の仕方について,優劣分岐分析により検討した.はじめに,温室サイズと棚面積あるいは温室サイズと費用の関係を,固定棚を設置した場合と可動棚を設置した場合に分けて図で示した.次に,この分析で得られた最適な奥行について,可動棚を設置した温室で間口が10.0m以上(12.6m以下)の温室について,間口をより広くするとき,棚面積はより大で費用はより小となることが判明した.本稿は,限られた用地面積の下で,作業の省力化と生産能力の増大を目的とした温室のサイズと棚の設置の検討に有用と考える.

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