管理会計学 : ⽇本管理会計学会誌 : 経営管理のための総合雑誌
Online ISSN : 2434-0529
Print ISSN : 0918-7863
3 巻, 2 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
論文
  • 金澤 雄一郎, 門田 安弘
    1995 年 3 巻 2 号 p. 3-25
    発行日: 1995/03/29
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    競合する製品と比べて品質面で大きな差別化がはかれない市場,および成熟・飽和市場では,しばしば競合品の価格に追随する形で,自社の類似製品の販売価格が決定される.この価格決定方式は市価基準方式とも呼ばれる.このような市場で新製品を企画・開発する企業は,市価基準方式によって目標販売価格が決定されるという前提にたって,これに見合った目標原価水準を実現してゆく必要がある.市価基準方式では,競合する製品の価格は製品の機能水準によって決定される.製品の主要機能水準は代表的設計特性値に依存する.複数の代表的設計特性値がある場合の価格決定方法として,売価を各設計特性値で単回帰した式を専門家が加重する方法,主成分分析法,設計特性値の重み付け分析法,調整計画法等が提案されている,本稿では,グラフを多用した対話型の「重回帰分析法」の適用を提案する.この方法では「調整済み散布図」・「C_pプロット」・「正規分位点・分位点プロット」・「残差プロット」等のグラフを順次利用して,望ましい重回帰価格決定モデルを作成する.この方法の優れている点は,少数の数値のみに依存せず,意思決定者が画面上で情報量の豊富なグラフを視覚的に検討しながら,望ましい重回帰モデルを平明に構築してゆける対話型の意思決定システムになっている点である.本稿では成熟・飽和市場である日本の乗用車市場に例をとり,この重回帰分析法をいかに適用するかを詳しく説明する.

  • 山下 裕企
    1995 年 3 巻 2 号 p. 27-42
    発行日: 1995/03/29
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    損益分岐分析はこれまで様々な拡張がなされてきており,全部原価計算の下での損益分岐分析もその一拡張形態である.これは製造固定費を製品原価とすることによって,「期首在庫高と期末在庫高は等しい」という仮定が満たされなかった場合に損益分岐分析で計算される利益と損益計算書の利益とが乖離するという問題に対して一つの解答を示している.ところが,この手法は販売費及び一般管理費に属する事業税や法人税等に属する法人税,道府県民税の法人税割および市町村民税の法人税割といった企業の所得に対して変動する租税を考慮しておらず,したがって利益の乖離はいまだ存在している.利益計画の際に,あるいは経営分析を行う際にも,当期純利益や租税に関する情報を経営者に提供することは極めて重要である.そこで本研究は,わが国の現行制度のもとで発生基準にしたがい上記租税を計上し,製造固定費を実際配賦率あるいは期待実際操業度を用いた予定配賦率によって配賦する場合について,全部原価計算に基づく損益分岐分析に原価ビヘイヴィアとしての租税関数を導入することによりこの分析をより有用性の高い技法へと拡張する.さらにそれを基礎として,売上高-生産高平面に目標利益や売上高利益率等の様々な目標の達成領域と販売制約や製造制約によって示される実行可能領域を図示し,任意の売上高・生産高が与えられたとき,それがどの目標や制約を満たしているのか,あるいは目標間の相互関連性はどうなっているのかといった利益計画に有用な情報を視覚的に提供する方法を提案する.

  • 西澤 茂
    1995 年 3 巻 2 号 p. 43-60
    発行日: 1995/03/29
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    本稿は,オプション取引の会計測定,特に買建オプションと売建オプションへのヘッジ会計の適用方法の違いを明らかにすると共に,オプション取引に関する会計情報を用いた一管理手法を提案することを目的としている.具体的には,ヘッジ目的でプロテクティブ・プットおよびカバード・コール・ライティングと呼ばれる通貨オプション取引を締結した取引モデルを想定して検討を行っている.

    2つのオプション取引の経済特性を検討してみると,プロテクティブ・プットの場合には,ヘッジ対象から損失が発生した時点で,同額の本源的価値の増加が発生するので,ほぼ完全なヘッジが働く.しかし,カバード・コール・ライティングの場合には,オプション料の受領という収益機会が得られる反面,そのヘッジ効果は受領した金額の範囲内でしか働かないばかりでなく,さらに為替変動が不利な方向に進んだ場合には,多額の損失を被る可能性がある.会計では,これらの経済的実質を反映した測定を行うべきであり,プロテクティブ・プットには,ヘッジ対象から生じる損失が発生した時点で,同額増加する本源的価値を測定するヘッジ会計を適用すべきであるが,カバード・コール・ライティングには,ヘッジ会計は適用すべきでない.さらに,それらの取引から生じるリスクを適正に管理するには,プロテクティブ・プットの場合には,オプション対象と同一通貨でのオプションを設定している限りヘッジ効果が有効に働くため問題はないが,カバード・コール・ライティングの場合には,為替変動に対してオプション取引から発生する利益または損失のポジションを適時・適正に把握する必要がある.

  • 佐藤 紘光, 齋藤 正章
    1995 年 3 巻 2 号 p. 61-79
    発行日: 1995/03/29
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    本稿では,経営者と管理者の間の情報伝達に焦点を当て,エイジェンシー・モデルに基づいてその経済的価値を分析する.管理者が実行した行動の結果は,管理会計が測定する業績情報に集約され,これを報告するという形式で経営者に伝達される.それがリスク・シェアリングと動機づけに果たす役割については,これまでのエイジェンシー研究が明らかにしたところであり,業績情報の伝達が経済的価値をもつことについては異論がない.

    経営者と管理者の間で伝達される情報には,会計報告のような事後情報だけでなく,有用であれば,事前情報も含まれるであろう.たとえば,契約を締結する前段階において、環境条件や生産性についての両者の認識にギャップが存在するのは珍しいことではない.そうした認識の相違は、契約条件,すなわち,業績評価(成果配分)ルールに重要な影響を及ぼすはずであるから,このギャップを埋めるために相互に意志疎通を図る場が用意されるであろう.予算ないし業績目標の決定に管理者の私的情報を反映すべく,決定過程へ管理者の参加を求めるのは,その一例である.本稿は,そうした事前情報の伝達に経済的価値があるか否かを分析する.したがって,本研究は参加の有効性に関する検証とみることもできる.

    論文の構成は以下の通りである.第2節では基本モデルとして,情報伝達を要求しないモデル(PROGRAM 1)と要求するモデル(PROGRAM 2)を提示し,同時に情報レントという概念を導入する.第3節では数値例を用いて情報伝達の経済的価値を測定し,それが価値をもつ場合ともたない場合を明らかにする.第4節では情報伝達の価値の有無を決定づける要因を一般式を用いて検証する.

feedback
Top