管理会計学 : ⽇本管理会計学会誌 : 経営管理のための総合雑誌
Online ISSN : 2434-0529
Print ISSN : 0918-7863
6 巻, 2 号
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論文
  • 佐藤 康男, 森 淳
    1998 年6 巻2 号 p. 3-22
    発行日: 1998/03/31
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    本稿は会計情報システムのうち,管理会計情報システムの予算管理情報システムにおける会計情報システム上のデータベースモデルの問題点に焦点を絞り,データウエアハウス(Data Warehouse)の適用可能性について論述している.近年の著しい情報システムの発達が会計情報システムに大きな影響を与えている.情報技術の進歩が特にデータベースシステムに対して決定的に影響を及ぼすことでこれまで当然とされていたリレーショナルデータベース(Relational Database)を核とした情報システムに疑問が投げかけられている.会計学は財務会計と管理会計のという二つの分野に分類することができるが,会計情報システムもまた,財務会計情報システムと管理会計情報システムという二つの分野に分類することができる.この二つの大きな違いは,財務会計情報システムでは財務データを扱うが,管理会計情報システムでは財務データに加えて非財務データを含めて扱わなければならない点である.したがって予算管理情報システムは財務データだけでなく,非財務データを取り扱うことができなければ評価価値は相対的に大きく低下する.一般に会計情報システムにおいてデータベースはすなわちリレーショナルデータベースが当然とされていたが,リレーショナルデータベースに向く業務はいわゆるOLTP(Online Transaction Process)としての業務であり,予算管理のようなOLAP(Online Analytical Process)に分類される業務にリレーショナルデータベースを適用することに関して様々な技術的問題が存在する.管理会計情報システムのうち特に予算管理情報システムが多元的な情報を必要としており,これに適しかデータベースを考えると現在の情報システムにおけるデータベースモデルとしてはデータウエアハウスが最も適したデータベースである.データマイニングツール(Data Mining Tool)がまだ十分に成熟してはいないが,今後はこのデータウエアハウスが管理会計情報システムの核となるであろう.

  • 日下 泰夫
    1998 年6 巻2 号 p. 23-46
    発行日: 1998/03/31
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    価値観の多様化,企業間競争の激化の下で,顧客の要求する諸機能を有する製品を総合的な観点からバランスよく低コストで供給することは,製品開発の1つの重要な視点である.この領域では従来からコスト性能比(価格性能比)という用語が使用されてきたが,ここでの「性能」はコンピュータの演算速度のように単一の性能に限定され事後的に使用されることが多かった.この概念を,評価項目の多目標性と定性的特性を考慮した総合性能として,製品開発の意思決定に明示的,操作的に使用出来るようにすることが重要である.この観点から,コスト・パフォーマンス曲線(CPC)を利用して,コスト制約下で総合性能を最大にする製品開発組合せ代替案を選択する方法が,階層分析法(AHP)と動的計画法(DP)を使用して提案されている.

    本研究は、上記の問題に対して,コスト制約下の製品開発で重要な役割を果たす製品の目標販売量を新たに導入することによって,拡張化されたCPCを利用する方法を提案する.定式化と解析には,階層分析法(AHP)と列挙法(EM)を結合的に使用する.次いで,このモデルを複写機の実際の開発事例に適用することによって,提案法の具体的利用法と他の諸問題に適用する際のいくつかの重要な視点を明らかにする.さらに,複数の機能ユニットの代替案間に技術的あるいは経済的従属性が存在する場合に対処する方法も示す.提案法は,多目標的・定性的評価を処理するAHPと表計算などの簡単なソフトウェアの使用を前提としたEMの結合的適用を通じて.拡張化されたCPCを製品開発の意思決定に利用するプロトタイプ・モデルとして特徴づけられる.

  • 片岡 洋一, 片岡 洋人
    1998 年6 巻2 号 p. 47-74
    発行日: 1998/03/31
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    個別原価計算の伝統的方法には,以下で示すような特性が存している.

    第一の特性は,ある製造指図書で指示された生産数量の大部分が完成品となり,一部が仕掛品である状態で原価計算期末をむかえた場合であっても,それら全てが仕掛品として取り扱われていることである.第二の特性は,減損費を独立に把握しないことがあげられる.また第三の特性は,仕損品を補修した場合に,補修指図書に集計された原価を当初の旧製造指図書に賦課させることにより,補修活動を受けていない良品にも直接に補修費を負担させる方法をとっており,補修が必要となった仕損品そのものの原価とそれに対応する補修費が把握されないことである.第四の特性は,仕損品を補修せずに代品製作する場合に,当初の製造指図書で指示された生産数量のうちの一部が仕損品となったケースと,全部が仕損品となったケースとで,別々の計算方法を採っており,それらの方法が一貫しないことである.さらに第五の特性として,製造指図書で指示された生産数量のうちの一部が仕損品となり代品製作する場合に,代品製造指図書に集計された原価から仕損品評価額を控除したものを仕損費としていることがあげられる.

    そこで本研究は,仕損と減損が発生する状況において,特定製造指図書に原価をあとづける場合に,上述の5つの特性を検討し,それらが問題点となるような状況を明らかにして,正確に製品原価を測定し,かつ有効に原価管理を行うために,個別原価計算に非度外視法を適用した新しい測定方法を提案する.この方法では,個別原価計算に進捗度の概念を導入し製造指図書ごとに完成品換算量を用いて,製造指図書に集計された原価を完成品原価,期末仕掛品原価,仕損品原価,そして減損原価のそれぞれに分離計算し,因果関係の原則に基づいて負担計算(追加配賦)を行う.その結果,正常仕損費と正常減損費を正しく製品原価に算入することが可能になる.

  • 佐山 展生, 長島 輝幸
    1998 年6 巻2 号 p. 75-91
    発行日: 1998/03/31
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    新規公開時に企業は,公募増資で資本市場から設備資金など必要な資金を調達し,業容拡大等企業の成長のための資金を使っているはずである.また企業が店頭公開し知名度や社会的信用が向上すれば,資金調達手段や顧客層が多様化し,優秀な人材も採用しやすくなる.このため,店頭公開によって企業は,豊富な資金や優秀な人材を獲得し,店頭公開前よりも収益性を向上させ更に企業を成長させていくことができるはずである.しかし,高成長を遂げた企業が店頭公開すると推測できようが,公開後にも高度な成長を続け,高収益性を維持するとは限らない.店頭公開すること自体が企業の収益性にどのような影響をもたらすかは,店頭公開を目指す企業および店頭公開した企業の将来の業績を予測する上で極めて重要なことである.

    そこで本研究では,わが国企業の店頭公開前後の収益性を,各種財務データを用いて分析し,店頭公開と企業の業績との関係を示す.そのため,1986年から1991年の間に店頭公開した321社について店頭公開前後の各5年間の財務データを調べ,店頭公開後の企業の収益性が公開前とどのように変化するかを比較する.その結果を分析し,店頭公開し資本市場から資金調達した後,企業の収益性はむしろ低下する傾向にあることを示す.また,この収益性の低下の理由は,主に有形固定資産への投資が増大し,多大な減価償却費にあること,この店頭公開後の収益性の低下傾向は,製造業の方が非製造業よりも著しいこと,しかしながら,キャッシュフローは,非製造業の方の低下の方が著しいことを財務比率の変化等によって説明する.

  • 李 健泳
    1998 年6 巻2 号 p. 93-113
    発行日: 1998/03/31
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    今日の標準原価による原価管理は,FA・CIMおよび製品の多様化・短寿命化などの製造環境の変化に伴って,その役割が低下していると指摘されている.その指摘は次のように仮説としてまとめられる.

    仮説1:自動化が進むにつれて,標準原価による能率管理の役割は低下している.

    仮説2:多品種少量生産により,原価標準の能率設定は困難である.

    仮説3:製品ライフ・サイクルの短縮化により,原価標準の能率設定は困難である.

    しかし,一方では,行き過ぎた自動化に対する反省とともに,現場の従業員のモチベーションを重視する人間本位の生産環境への移行も多ぐ見られている.さらに,日本企業における今日の標準原価管理は,従来の標準原価管理とは違い,標準原価管理が原価維持と原価改善に分けられ使われている.したがって,今日の標準原価管理は原価改善の側面を考慮して分析される必要がある.

    本研究では,タイトネス管理を中心に,企業実務で使われている標準の水準とその用語の関係を検証し,企業実務での標準のとらえ方を確認するとともに,製造環境の変化による標準原価の役割の低下論を検証している.検証の結果,製造環境変化による標準原価の役割低下論において,自動化による標準原価の役割低下論はある程度認められたが,その他の役割低下論は支持されなかった.一方,標準原価と予算原価の関係では,材料消費量および操業度においては,有意な差は得られなかったが,作業時間に関しては有意な差が得られた.

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