管理会計学 : ⽇本管理会計学会誌 : 経営管理のための総合雑誌
Online ISSN : 2434-0529
Print ISSN : 0918-7863
1 巻, 1 号
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創刊によせて
論文
  • 佐藤 進
    1992 年1 巻1 号 p. 5-19
    発行日: 1992/12/25
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    工業社会から情報化社会への発展に直面し,原価計算はいま大変革を迫られている.工業社会の原価計算である三要素原価計算は自動化工場において完全に有用性を失ってしまった.本論文では,自動化工場の原価制度をいかに再構築すべきかについて考察する.そして四要素原価計算制度を提案する.四要素原価計算の特徴は,次の諸点にある.

    (1) 原価要素を取引形態別に「材料費」,「設備費」,「労務費」および「経費」の4要素に分ける.

    (2) 設備費を「設備維持費」および「設備稼働費」の2要素に分ける.

    (3) 製品別に操業時間を把握できる生産設備の費用につては,これを「直接設備費」とする.

    (4) 直接労務費および直接設備費で直接加工費を構成し,これを「段取り費」および「主体加工費」の2要素に分けて計算する.

    (5) 製品別に消費量を把握できる補助作業の費用は,これを「直接内部(複合)経費」として計算する.従来の伝統的直接経費は,これを「直接外部経費」と名づけて区別する.

    (6) その他の費用は,「間接加工費」および「製造管理費」の2つに分ける.

    (7) 「副費」を把握し,これを「主費」へ加算する.

  • 金川 一夫, 羽藤 憲一, 菅 錦吾
    1992 年1 巻1 号 p. 21-41
    発行日: 1992/12/25
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    本研究では,銀行の融資業務を対象にした与信判断を行うエキスパート・システムのプロトタイプを構築し,設例についてこのシステムを実行して,その利用可能性を示した.このシステムでは,財務数値の分析はすでになされているという前提で,非数値データをどのように専門家が判断するかを取り上げている.このため10の基本要素からルールを設定し,これらの結果から最終意思決定ルールを通して,融資が承認か否認かの判断をする.このとき,実務において,否認ではないが,承認のためには取引先に対して,さらに条件を提示して交渉する場合があるが,これを実現するため,本システムにおいても条件付き改善点を表示するようにしている.

    また,本システムの特徴として,スプレッドシートによる「知識整理支援ツール」をシステムに組み入れていることがあげられる.すなわち,エキスパート・システム構築における問題として,知識ベース構築があげられるが,この段階において専門家からの知識の収集洩れ,知識相互間の矛盾がないかどうかをスプレッドシート上のマトリックスにより解決している.

  • 吉川 武男, イネス ジョン, ミッチェル フォークナー
    1992 年1 巻1 号 p. 43-55
    発行日: 1992/12/25
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    アクティビティ・ベースの原価計算システム(Activity Based Costing System:以下,ABCシステムと言う)は,伝統的原価計算システムをより一層精巧なものにする目的で,1980年代の中頃に西洋で誕生した.ところが,ABCシステムを実際に企業に導入してみると,伝統的原価計算システムを精巧にするという当初の目的のみならず,様々な可能性をもっていることが明らかになった.

    本論文は,ABCシステムがもっている様々な可能性の中で,特に,広義の原価管理面での可能性について明らかにしてみたいと思う.なかんずく,コスト・ビヘービアの分析,顧客のプロフィッタビリティー分析,アクティビティ・コストの明確化,予算や原価管理,さらに,業績測定等におけるABCシステムのコスト情報の役割について考察してみたい.

    ここで,ABCシステムを現在企業が抱えている原価計算の問題をすべて解決してくれる万能薬であると考えるのは,些か危険なことである.ABCシステムは,原価をどのように効果的に管理できるかについて,有益かつ貴重な洞察力を我々に提供してくれる一つの手法であって,この点を十分注意しなければならない.

  • 田中 雅康
    1992 年1 巻1 号 p. 57-79
    発行日: 1992/12/25
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    本論文では,原価企画を次のように理解することにした.すなわち,原価企画とは開発設計している新製品の仕様が技術性と経済性からみて,目的にかなった原価で,設計,製造,販売,使用・廃棄されるように,開発設計に着手する前に原価目標を設定し,その範囲内で設計させ,その結果を原価見積することによって評価し,原価目標が未達成ならば原価改善させる一連の管理思想と管理活動のことである.

    この原価企画で管理対象とする原価は理想的にはライフサイクル・コスト(LCC)のすべてであり,これらの原価を性能目標や開発日程目標と同等のウェートを持った目標(すなわち原価目標)として位置づけ,これを開発設計者等に与え,彼らの自己統制指針や評価尺度とするのである.

    原価目標は開発設計段階における製品仕様の決定過程で達成すべき目標となる原価であり,すべてのLCCに対して設定すべきである.これがあるべき姿の原価企画である.とはいえ,現実にわが国の多くの企業が管理指標として設定しているのは製造原価目標が主である.そこで本論文では製造原価目標に限定して述べた.

    原価目標を必達目標として位置づけ,その達成管理を効果的に行なうためには,幾つかの整備すべき事項がある.それをここでは一般的整備事項と個別的修正事項に分けて論述した.このような整備を完了した後で,製造原価目標を設定する代表的な方法を詳述した.それは控除法,加算法,統合法であり,これらの方法はさらに幾つかの方法に細分類される.

    さらに,製造原価目標は達成しやすくするため細分化するのが一般的である.この代表的な方法は機能別,構造別,機能別・構造別,原価要素別の各細分割付法と設計者別細分割付法である.これらの方法と特徴についても詳述した.

事例研究
  • 谷 和久, 三重野 浩
    1992 年1 巻1 号 p. 81-94
    発行日: 1992/12/25
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    当社の業績は,市場の急激な変化への対応が遅れる中で1987〜1989年に急激に悪化した.こうした中で当社は経営組織風土の抜本的な改革のために事業部制の導入,販売体制の強化,人事制度の改定等の施策を講じたが,MRSもこうした経営風土変革のための施策の一環として導入したビール事業本部の利益管理システムである.(1990年に導入)

    従来の「中央集権的な本社中心のマネジメント」から,権限を支社に委譲した「分権的なマネジメント」に変革することを目指している.

    費用をタイムリーに管理区分ごとに把握する「発生ベース費用管理システム」や「販売情報システム」等のコンピューターシステムをベースに,従来の損益計算の仕組みを「支社だけをプロフィットセンターとする直接原価計算による損益計算」(限界利益概念の導入)に変更することにより,販売の第一線である支社の真実の利益貢献度が把握できるシステムを構築した.また,利益を販売数量,シェアとともに支社マネジメントの目標として明確に位置づけるとともに,支社のマーケティング費用等の支出についての権限の強化をはかった.

  • 浮田 萌男
    1992 年1 巻1 号 p. 95-102
    発行日: 1992/12/25
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    当社の管理会計面でのコンピュータ活用は,年間二千余の工事の稼動するなかで

    ①膨大な個別工事の着工時の予算検討及び施工段階における設計変更(原価改善を目的としたVE提案等)に対応した予算変更シュミレーションによる最適原価の設定

    ②個別工事原価に設計部門費用は設計料として,又工事収入・支出金管理の実績・予想をもとに計算した資金利息を管理経費として算入することにより個別工事を実質損益で適正に評価すること

    原価予算実績計算を迅速に実施することを目的としている.

    又情報の高度化が要求される現在,人・物・金・情報等に関する諸データを一元的に共有し,企業経営に有用な情報データをリアルタイムに提供することを狙いとし,その実現のために従来の処理型システムからデータ活用型システムへ移行することを目指して戦略的会計情報システムの再構築を推進中である.

編集委員長あとがき
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