管理会計学 : ⽇本管理会計学会誌 : 経営管理のための総合雑誌
Online ISSN : 2434-0529
Print ISSN : 0918-7863
3 巻, 1 号
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論壇
  • 西澤 脩
    1994 年3 巻1 号 p. 3-19
    発行日: 1994/08/29
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    バブル経済の崩壊に伴い,産業界はいまダウンサイジングによるリストラが強く求められ,適正規模までの事業規模の縮小による減収増益を図る必要に迫られている.そのために,“原価削減の宝庫”と称される物流に取組み,大幅なコストダウンを断行することが肝要である.財務諸表上の支払物流費は,メーカーでは売上高の2-3%にすぎないが,総物流コストは売上高の9%にも達しているので,売上高純利益率2%の会社では物流コストを10%削減すると,年商を45%増加させたのと同じ利益効果があげられる.このような物流コスト削減の乗数効果を達成するには,物流会計を導入し実践することがその前提となる.その一環として,筆者等は,1992年に通商産業省で『物流コスト算定・活用マニュアル』を制定し,物流商品有料化運動に着手した.このため,イレギュラー物流を要請した原因者には,当マニュアルに基づいて計算した物流コスト増加額を転嫁することによって,価格メカニズムを通じ物流の社会的適正化を実現することが急務となる.なお,本稿は,1993年11月5日に九州産業大学で開催された日本管理会計学会第3回全国大会において行った「記念講演」の内容を草稿したものである.

論文
  • John Innes, Pierre Mevellec
    1994 年3 巻1 号 p. 21-34
    発行日: 1994/08/29
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    This case study describes the implementation of ABC in two factories within the one British multinational group in France and Britain. It also explores the similarities and differences between the assessment, implementation and use of the ABC system in these two factories. The French managers assessed ABC with the major objective of product costing whereas in the British factory ABC was used mainly for cost management. However, it is important to realise that the French homogeneous cost pools, based on a vertical analysis of the firm's organisational structure, make it relatively easy for French managers to move from ABC for product costing to ABC for cost management.

    The driving force behind ABC differed between the two factories with the French Factory Manager and the British Finance Director being the two respective 'champions'. This had implications for the development of the ABC system with the French factory concentrating on the production overheads (and the resulting ABC product costs varying from +127% to -13% from the existing product costs); whereas the British ABC system included most overheads (such as production, administration and marketing) and developed useful brand profitability information. The French managers were interested in the fact that the ABC system attributed higher overhead costs to the sub-contracted products. The British managers developed more team working and a revised organisation structure following the introduction of the ABC system.

    However, similarities also existed between the ABC systems in the French and British factories. The ABC process was viewed as a management rather than just an accounting tool and was considered to be complementary to Just-in-Time and Total Quality Management. Cost drivers were incorporated into the performance measurement system and the fact that ABC examines activities across departmental boundaries forced managers to think about business processes and to change their mental 'model' of the organisation. Despite such similarities this research project has shown that even in the same group and with similar factories ABC information can be used in different ways.

  • 羽藤 憲一, 金川 一夫, 弘津 真澄
    1994 年3 巻1 号 p. 35-53
    発行日: 1994/08/29
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    この論文は,A教育学校でのケース・スタディの結果を中心に報告するものである.

    今日のように複雑な企業組織の業績を評価することは極めて困難である.これまで企業組織を評価する場合,財務諸表分析が中心に行われてきたが,この情報からは企業経営の一側面しか分析できない.なぜなら,組織目標は利益目標のみならず,組織成員のモラール,顧客満足,研究開発など財務諸表からだけでは得られない種々の目標が存在するからである.

    本研究の目的は,A教育学校の7支店の業績評価に階層的意思決定法を適用することで,企業組繊の業績評価システムの構藻におけるこの意思決定法適用のの有効性を確認することである.

    なお,この企業にとって有効な企業業績評価システムとは以下の4点を満足するものである.

    (1)会計資料だけではなく,経営実体により近い定性的要因も含めた業績評価.

    (2)非貨幣尺度による企業評価.

    (3)定量的(貨幣尺度,非貨幣尺度)と定性的要因による業績評価の統合,総合化した評価システム.

    (4)経営者および組織の管理者が,組織もしくは組織成員の目標達成度を単に評価するためだけでなく,組織成員を組織目標の達成へとモチベートさせるのに役立つ評価システム.

事例研究
  • 渡辺 康夫
    1994 年3 巻1 号 p. 55-74
    発行日: 1994/08/29
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    民営化によって生まれ変わった日本電信電話株式会社(通称NTT)は,形態は株式会社になったものの,一般的な営利企業とは異なる点を多く抱えている.それらは主に,公益事業であるという企業形態の問題と,ネットワーク・ビジネスであるという事業特性から生じるものだと言われている.このような事情をもつ企業が,組織効率の向上のためというキャッチフレーズのもとに典型的な事業部制マネジメント・コントロール・システムを採用した結果として,いろいろと問題を抱えることになった.

    本稿は,同社の事業部制マネジメントに内在する主要な問題を浮き彫りにし,それらの基礎にある本質的な問題を整理することを目的とするものである.

    第1節で,問題意識を明確にしたうえで,第2節ではNTTの事業部制の特性を理解するために,いわゆる米薗型のオーソドックスな事業部制が備えるべき基本的要件を確認する.そして,①本社と事業部との間に資本運用に関する包括的な権限委譲があること,②本社による調整・管理の主目的は,資本運用に関する目標斉合性を達成することであり,③企業内に市場原理を導入するものであること,という3つの要件に注意を向ける.第3節では,NTTの事業部制組織の構造と事業部収支の実態および,収支に大きな影響を与える電気通信料金制度について言及する.第4節では,利益の要素である収益,数量,新製品開発,固定費などが,事業部長にとってコントローラブルでないことを指摘することによって,NTTの事業部が利益責任の面で抱える問題点を明らかにする.それに加えて第5節では,NTTの筆頭大株主が政府であるという特殊事情から,事業部の業績評価指標や投資の意思決定基準と業績評価に用いられる資本コストが,米国型の理論から求めることが難しいとの問題提起を行った.

特別記事
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