管理会計学 : ⽇本管理会計学会誌 : 経営管理のための総合雑誌
Online ISSN : 2434-0529
Print ISSN : 0918-7863
9 巻, 2 号
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論文
  • 星 法子
    2001 年 9 巻 2 号 p. 3-13
    発行日: 2001/03/31
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    事業部長の利益業績評価の測定には,事業部長の管理可能な範囲である管理可能利益または管理の及ばない本部費・共通費が配賦される本部費・共通費配賦後利益が用いられている.以前から管理可能利益を用いることが適切であるとの見解があり,最近のHorngrenのテキストでも管理可能利益を用いることが提案されているが,実際には本部費・共通費配賦後利益で評価している企業が多い.そこで本稿では,そのような実務慣行の理由を考察し,日本企業の事業部長の利益業績測定に用いる業績評価指標と企業の財務業績との関係を調べ,質問票調査によりこの関係を実証的に解明した.質問票調査は東誕1部上場企業1,296社を対象に,1997年10月に行った.そのデータをもとに分析した結果,本部費・共通費比率が低く本部費・共通費配賦後利益で事業部長を評価している企業は,財務業績(総資本回転率,総資本経常利益率)が良いという仮説が支持された.

  • 持本 志行
    2001 年 9 巻 2 号 p. 15-28
    発行日: 2001/03/31
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    新製品の価格は,価格差があまり大きくない類似製品と比較して,その「価格対応品質」,すなわちいわゆるprice performanceを同レベル以上に設定する必要がある.先ず,この理論を述べる.この理論には品質展開quality deploymentという考え方が必要である.新製品の総製造原価は,上記の方法で設定された販売価格のαパーセント(例えば,約70パーセント)を目標に定める.成熟市場に投入する新製品計画は市価基準に基づく上記のような価格とその製品コンセプションが先決問題であり,製品設計と原価企画はこれに従うことが要請される.次に,上記の総製造原価に対する原価企画は,VA(Value Analysis)技法によって既存のパーツ類に対する設計変更などに基づいた原価削減を実施する.このVAは原価企画のコアとなっているが,これは上記の製品価格の決定理論(その技法を本稿ではQDmと呼ぶ)と同様の原理の基づくものである.これと類似の技法にVE(Value Engineering)がある.このVA/VEに関して多くの管理会計学研究者の著作が公刊されたが,そのVE公式はVAの考え方とは全く異なるものであり,再考を要する.

  • 原田 雅顕, 田中 雅康, 小林 功二
    2001 年 9 巻 2 号 p. 29-41
    発行日: 2001/03/31
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    本研究は顧客の観点に立脚して新製品の売価を設定するための基礎的情報を得るために,新製品の需要関数(価格と需要の関係)を顧客評価に基づいて推定する方法を提案することを目的とする.需要関数を導出することに関してはすでに多くの研究結果があるが,これらの研究は実績に傾向線を当てはめて需要関数を推定するものであり,これでは新製品の需要関数を推定することは困難である.新製品に対する顧客評価額は不確実で一貫性を欠く傾向があり,しかも顧客間でバラツキが大きい.本研究では,まずこのような特徴をもつ顧客評価額を製品の機能水準間の関係を把握して相互調整し,潜在的顧客ごとに価格と購入意欲の関係を導く.次にこれらの関係を統合して,価格と購入率分布の関係を導くことによって当該新製品に対する需要関数を推定する.さらに導出された需要関数から売価設定の指標となる顧客評価額の代表値を算出する.最後に本方法を家庭の台所用吊戸棚の新製品に適用してその有用性を明らかにする.

  • 山田 恵一
    2001 年 9 巻 2 号 p. 43-64
    発行日: 2001/03/31
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    本論文は,セール・アンド・リースバック取引の会計基準等の比較検討を行い,その取引の経済的実質を明らかにし,会計理論上,その妥当な測定方法を提案することを目的としている.検討の結果,セール・アンド・リースバック取引は,経済的実質の相違に基づいてつぎの3つに分類される,1)その取引の経済的実質は,譲渡担保による資金の借入れである,2)その取引の経済的実質は,財産の売買取引とオペレーティング・リース取引とが一体となった取引である,3)その取引の経済的実質は,財産の売買取引と準フルペイアウトを満たすファイナンス・リース取引とが一体となった取引である.したがって,セール・アンド・リースバック取引の測定方法の妥当性については,それぞれの目的の取引の経済的実質を的確に写像する測定方法が必要である.

研究ノート
  • 山北 晴雄
    2001 年 9 巻 2 号 p. 65-75
    発行日: 2001/03/31
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    企業における継続的改善は,全体最適を目指してムダの除去を図ると同時に,顧客満足を実現するために必要な柔軟性を確保しなければならない.一方,企業が保有するキャパシティや未利用キャパシティを効果的にマネジメントしていくことは,国際的な競争環境の中で持続可能な競争優位を維持していくために欠かせない.その際,企業が選択するキャパシティの定義づけの中に,継続的改善を進める仕組みが組み込まれていることが必要である.企業にもたらされる利益は,各製品やサービスの貢献利益と変動製品原価以外のコストとの間のトレードオフによって決定されるが,最大の利益を実現するために企業が選択するキャパシティの利用水準は,この最適なトレードオフに一致しなければならない.したがって,選択すべきキャパシティ概念は,持続と柔軟性の維持を組み込んだ最適なキャパシティの利用水準に基礎を置くことが求められる.

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