管理会計学 : ⽇本管理会計学会誌 : 経営管理のための総合雑誌
Online ISSN : 2434-0529
Print ISSN : 0918-7863
25 巻, 2 号
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論壇論文
  • 辻 正雄
    2017 年 25 巻 2 号 p. 3-17
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    管理会計における実務と研究の乖離が指摘されて久しいが,この乖離を解消へと向かわせるための新展開とはどのようなものであろうか.個別の事象を説明し予測することから,普遍的な一般性を求める理論化を探究する過程で抽象化が進行する結果,理論と実務の乖離が生じてしまうのであれば,実務に軸足を置きそこでの複雑な因果関係を解き明かしていく研究が求められるであろう.本論文では,管理会計研究の体系を考察するとともに,管理会計が企業価値の向上に資する役割を担うために有効となる一つのモデルを提示する.管理会計研究の領域を,(1)実践および応用研究の領域,(2)実証研究の領域,(3)理論研究の領域に分け,より現実に近い仮定の上に理論を構築することと,仮説検証において説明力を高めて過誤の確率を低くする頑健な方法を適用することの重要性を指摘する,また,実践および応用研究の事例として,管理会計が事業価値の向上を指向する投下資本税引後営業利益率(ROIC) を分解し,KPIとして使用することを提案する.

  • 青木 章通
    2017 年 25 巻 2 号 p. 19-33
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    高コンタクト型のサービス組織のマネジメント・コントロールにかかわる課題は,顧客とコンタクトを行うフロントラインの従業員の行動を,組織にとって望ましい方向に導くことである.サービス・エンカウンター(顧客とサービス提供者との遭遇)の質を向上させ,サービス・プロフィット・チェーンで描かれている因果連鎖を有効に機能させるためには,アンソニーのフレームワークでは不十分であり,マネジメント・コントロール・システムをパッケージとしてとらえるアプローチを採用すべきである.また,サービス・ドミナント・ロジックで前提となっている価値共創を実現する行動を支援するためには,マネジメント・コントロール・システムの構成要素のうち,文化によるコントロールに着目すべきである.そのとき,マネジメント・コントロールが働きかける対象は顧客を含むように拡張される可能性がある.

  • 堀井 悟志
    2017 年 25 巻 2 号 p. 35-45
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    本論文では,「管理会計の新展開」という統—論題のテーマに対し,予算管理研究を題材として,新たな管理会計の理論構築の具体的方法を検討することで,漸進的な展開を図った.具体的には,定性的管理会計研究の意義・必要性とそこでの「理論」の位置づけについて整理したうえで,状況に埋め込まれた「常識的知識」に着目して管理会計実践を理解することで,これまでの管理会計の科学的知識では明らかにされてこなかった,もしくは誤っているとされてきた管理会計の役割やありように光をあて,それをきっかけとした管理会計の新たな理論構築が可能となることを示した.また,そのなかで,予算管理研究の将来展望について,いくつかの可能性について指摘を行った.

  • 前田 陽
    2017 年 25 巻 2 号 p. 47-61
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    近年,自律的組織の経営システムやMMループに着目した研究が行われている.管理会計システムの進展や進化を説明する際,MMループは有用なフレームワークである.本稿では,まずMMループを説明し,次に大手小売業のI社が中国に進出した際の会計情報システムの進展をMMループで検討した.この事例を通じて,荒利益計算システムの進展が計算式の変更やシステムの運用環境の改善によってもたらされたことを示した.そして,その知見からMMループを用いて管理会計システムを分析することの意義を次のように論じた.①システム全体における各システムの相互関係を明らかにすることができること.②システム全体にとって,次にどのようなループが必要か示唆すること.③MMループを運用し続けた場合におけるシステムの進化を考察できること.その一方で,関係するループとそうではないループを適切に峻別することや組織コンテクストを特定することの難しさといった課題も指摘した.

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