本稿は,Burns and Scapens(2000)による制度的フレームワークと知識創造理論の視点から管理会計知識が変化するプロセスを分析した.日本電産株式会社における経済危機後の経営改革事例では,経営者によって示された正当化基準(WPR^<TM>ガイドライン)と,マニュアルなどに表現されたルール(組織レベルでの形式知),言語的に表現されていな知識としてのルーティン(組織レベルでの暗黙知)の相互作用を通じて,管理会計知識の変化が生じていた.そして,このような変化を促進した要因は,経営者によって危機後に示された意図や新たに生じた組織横断的なネットワークだけではなく,危機以前の経営(事業所制)の中で培われた自律性や冗長性,その下で個々の事業所において蓄積された知識であったことが明らかとなった.