管理会計学 : ⽇本管理会計学会誌 : 経営管理のための総合雑誌
Online ISSN : 2434-0529
Print ISSN : 0918-7863
30 巻, 2 号
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特別講演
  • 加登 豊
    2022 年 30 巻 2 号 p. 3-20
    発行日: 2022/03/30
    公開日: 2022/03/30
    ジャーナル フリー

    本稿は,2021年度日本管理会計学会全国大会(主催校:長崎県立大学佐世保校(リモート開催))の特別企画報告「再び「管理会計のレゾンデートル」について」(2021年8月27日(木))の概要を,それに先行して公表した二編の論文(加登2020, 2021)やここ数年の学会報告も踏まえて取りまとめたものである.管理会計の存在意義の確認が研究遂行上,不可欠であることを強調した後に,管理会計の研究・教育の高度化を達成し,加えて,経営実践での有用性を獲得するために取り組むことが望まれるアクションを示す.具体的には,経営者・経営幹部・他領域の研究者との「対話」を促進すること,管理会計の魅力を広く喧伝すること,管理会計教育の一層の高度化を果たすことなどがある.

論壇
  • 丸田 起大
    2022 年 30 巻 2 号 p. 21-26
    発行日: 2022/03/30
    公開日: 2022/03/30
    ジャーナル フリー

    間接費配賦というテーマは,管理会計・原価計算の研究・実務を問わず,古くて新しい基本問題であり続けている.理論の進展の面では,ABC,TDABC,資源消費会計などの新たな手法が提唱されてきた.実務の解明の面では,分析的研究や学術的調査の蓄積が進められてきた.しかし果たして,理論と実務のギャップは埋められてきたのだろうか.原価計算の適用領域は,サービス業や非営利組織へと拡大している.ビジネス環境,戦略,ビジネスモデルの変化のもと,様々な業種において,原価計算目的や原価計算対象がどのように変化しており,原価計算の知見にどのような再考を促しているのか.あらためて,なぜ配賦するのか,そしてどのように配賦するのか,について考える機会とすべく,「間接費配賦の再考」を統一論題テーマとさせていただいた.

  • 谷守 正行
    2022 年 30 巻 2 号 p. 27-42
    発行日: 2022/03/30
    公開日: 2022/03/30
    ジャーナル フリー

    実際にABCを見直した銀行のケーススタディーを実施することにより,次の3点の特徴を明らかにした.1点目は銀行原価計算の消費量基準からキャパシティー基準に変化している点である.2点目は銀行ABCによる実際配賦計算が推定キャパシティー応分のリソース集計型原価計算になっている点である.最後の特徴は要素還元論アプローチの銀行ABCが,ホリスティック・アプローチの原価計算に変化している点である.このような変化をもたらした最も大きな要因の1つが市場金利の変化であると推察し,実際に2000–2010年代の全地方銀行の貸出金,貸出金利および貸出経費率などの推移を分析した.その結果,市場金利の変化の影響を受けて銀行原価計算が要素還元アプローチの原価低減型からホリスティック・アプローチの原価回収型へ変化せざるを得なかったことを明らかにした.最後に,他の産業でも銀行原価計算の変化と同様のことが今後十分に起こりうる可能性を指摘した.

  • 足立 俊輔
    2022 年 30 巻 2 号 p. 43-58
    発行日: 2022/03/30
    公開日: 2022/03/30
    ジャーナル フリー

    本稿は,アメリカ病院原価計算の先行研究を踏まえて,電子カルテの患者別レセプト情報を病院会計準則に準拠した勘定科目に対応させるためのマスターファイルを活用した病院原価計算システムの特色をまとめることにより,間接費配賦を巡る病院原価計算システムの課題を明らかにしようとしたものである.加えて,コロナ禍での病院運営における病院原価計算の利活用について,タスク・シフティングと診療報酬改定の側面から考察を加えている.アメリカ病院原価計算,とりわけ病院TDABCの対象原価は,キャパシティ費用率との整合性の高さから,主に臨床スタッフの給与費であり,減価償却費や委託費などの間接費は対象とされていない.そして本稿で取り上げた病院原価計算システムでは,医療従事者の納得性や,タイムスタディなどの作業負担軽減に配慮した既存データを活用したものとなっている.

  • 高橋 賢
    2022 年 30 巻 2 号 p. 59-73
    発行日: 2022/03/30
    公開日: 2022/03/30
    ジャーナル フリー

    間接費の配賦問題は,管理会計上古くて新しい問題である.間接費は,その発生原因から見るとキャパシティ・コストの性質を持っている.間接費を製品別に配賦してしまうと,キャパシティを効果的に管理することはできない.原価管理の視点からは,間接費は配賦をせずに総額で管理することが好ましい.一方,近年では,少子高齢化の進展に伴う内需の減退や労働生産人口の減少などといった社会環境から,1企業・1組織ではもはやアイドル・キャパシティの有効利用を図ることはできなくなっている.本論文では,産業集積や産業クラスターのようなネットワーク組織によって,アイドル・キャパシティを有効利用しているケースを取り上げた.これらのケースでは,組織の枠を越えた資源の相互活用によって,アイドル・キャパシティを有効利用していた.21世紀ではネットワーク組織を形成し,資源の相互活用によってキャパシティ管理をすることが有効であることを示した.

特別講演
  • 小川 康
    2022 年 30 巻 2 号 p. 75-85
    発行日: 2022/03/30
    公開日: 2022/03/30
    ジャーナル フリー

    DDP(Discovery-Driven Planning)は,不確実な事業から高いリターンを得ることを目的とする経営管理手法である.予測の根拠は外れる,という現実的な問題を解決するために,DDPは企業内部・外部の変化に迅速に対応する組織プロセスの運用を支援する.企業におけるDDP運用の要点は,企画・管理部門と事業部門が質問と説明を反復・継続することにある.

    経営管理の基礎である予実管理には,「両利きの経営」や「イノベーションのジレンマ」で指摘されている合理的な短期志向をもたらす側面がある.この問題に対して,DDPを活用した予測管理を重視して企業のリスク対応力を強化する意義について考える.また,DDPの普及を目的とした取り組みをご紹介し,経営理論の普及に取り組む方々のご参考になることを願う.

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