管理会計学 : ⽇本管理会計学会誌 : 経営管理のための総合雑誌
Online ISSN : 2434-0529
Print ISSN : 0918-7863
19 巻, 2 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
論文
  • 新井 康平, 大浦 啓輔, 岡崎 路易, 三矢 裕
    2011 年19 巻2 号 p. 3-20
    発行日: 2011/03/31
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    本論文の目的は,経理シェアードサービスセンターの導入成果について,質問票および公開財務諸表から得られたデータをもとに経験的に検証することである.グループ企業内に分散するスタッフ業務を集約するシェアードサービスは,規模の経済による間接費の削減や,業務標準化による業務品質の向上に寄与するといわれてきた.そこで,本論文では,イベントスタディを実施することで,これら導入成果についての実証的な知見を提供する.結果として,先行研究で提唱されてきたようなコスト削減と業務品質の向上という導入成果がみられることが明らかとなった.ただし,シェアードサービスセンターに集約される業務内容によって,その導入成果の程度が異なることも明らかとなった.

論壇
  • 原田 昇
    2011 年19 巻2 号 p. 21-36
    発行日: 2011/03/31
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    本論文の目的は,日本管理会計学会2010年次全国大会の統一論題「コントロール機能としての管理会計」における4名の報告によるコントロール概念を再検討して,管理会計におけるコントロール機能の位置づけを理論的に整序し,新しい管理会計のあり方や方向性を探求する糸口を提供することにある.それぞれの報告者の個別報告論題は,第1報告:鈴木孝則氏「内部統制報告制度における情報システムの意義」,第2報告:椎葉淳氏「比較会計制度分析:コントロール機能の一つの分析視角」,第3報告:関口善昭氏「ブッカンのコントロール論のフレームワークと最新SAPシステム」,第4報告:大下丈平氏「ガバナンス・コントロールの理念と方法:内部統制議論を手掛りとして」であり,各報告者は貴重で意義深い研究成果を報告された.コメンテータの山本達司氏は各報告に有益なコメントと問題提起を行い,活発な議論を促進した.

  • 鈴木 孝則
    2011 年19 巻2 号 p. 37-52
    発行日: 2011/03/31
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    本稿では,プリンシパル・エイジェントモデルを用いて,「株主が経営者に営業努力と統制努力の自発的発現を促し,かつ,コンプライアンスのための強制監査に対応する」という均衡が存在するための条件を見いだし,その条件下で営業情報システムや統制情報システムがどのような意義を持つかを調べた.その結果,(1)統制努力によって営業努力の私的コストが増大しても,監査コスト基準が十分低く設定されるならば株主に正の期待利得を与える均衡が存在することを確認したうえで,(2)営業情報システムと統制情報システムのノイズに極端な差異がないならば,前者への投資を先行させることが「無難」であること,(3)規制強化が予測される場合,すでに規制の進んだ環境にある企業ほど営業情報システムに投資する効果が期待できること,(4)監査コスト基準の上昇が予測される場合でも,精度のよい統制情報システムを有する大企業株主は,統制情報システムへのさらなる投資によって期待効用の低下を効率的に防止できることを示した.

  • 椎葉 淳
    2011 年19 巻2 号 p. 53-74
    発行日: 2011/03/31
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    本稿は,近年のミクロ経済学分野における研究成果,特に契約理論に基づく研究成果を参考にして,会計を比較制度分析と呼ばれる分析手法にしたがって考察すること―本稿ではこれを「比較会計制度分析」とよぶ―の重要性について議論する.また,会計のコントロール機能について研究するときの,比較会計制度分析という視点の意義を明らかにする.このためにまず,会計を分析するための手法としてみたときに,ミクロ経済学,特に契約理論がどのように進展してきたかを簡潔に説明する.次に,現実の経営者報酬契約とコンビニエンスストア業界におけるフランチャイズ契約を例にして,比較制度分析がなぜ会計研究において重要な視点を提供しうるのかを説明する.また本稿では,比較会計制度分析とみなすことのできるこれまでに行われたいくつかの研究成果についても併せて紹介する.最後に,事例・実証分析と数理モデル分析の融合という観点から,今後の比較会計制度分析の方向性についての展望を述べる.

  • 関口 善昭
    2011 年19 巻2 号 p. 75-80
    発行日: 2011/03/31
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    本稿の目的は,最初にブッカン(Henri Bouquin)のコントロール論のフレームワーク(大下丈平,2009)とSAPの最新システムとの関連を明示した上で,制御システムの管理者と業務システムの業務担当者との責任と権限という内部統制の問題に対して,SAPの最新システムを活用して実務的にどのように解決されるかを示すことである.その関係性については,図1ブッカンのコントロール論のフレームワークとSAPソリューション群との対応で明示した.また,責任と権限管理については,GRCソリューション群の1つであるアクセスコントロールで解決できることを示した.

    次に,性悪説を前提とした内部統制では,従業員からの支持が得られないという問題に関しては,性弱説という考え方で対応することが実務的に有効であると論じた.

    最後に,国際財務報告基準(IFRS)によって,見積情報が管理会計に影響を与えるものとして,有形固定資産の減損を例示した.この見積情報の正確性,信頼性,網羅性を担保するために,いかに統制するかについて,日本管理会計学会と内部統制に係る学会,諸団体との連携の必要性を提起した.

  • 大下 丈平
    2011 年19 巻2 号 p. 81-100
    発行日: 2011/03/31
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    本稿では,ガバナンス・コントロールの理念と方法が提示される.まず内部統制の評価とその監査の制度化を契機に,方向は違うが2つの同型の三層構造が現れてくる.下降3層構造<マネジメント/コントロール/監査>はトップダンの3層構造であり,伝統的なマネジメント・コントロールの仕組みそのものであり,上昇3層構造<ガバナンス/内部統制/内部監査>は,構成要素である内部統制を介して下降3層構造と繋がりながらも,方向としてはガバナンス機構を規律づけ,支援する.その後,ガバナンス・コントロールの2つの理念型が示される.一つは米国型のガバナンス・コントロールであり,もう一つはフランス型のそれである.内部統制の法制化の動きを≪ガバナンス・コントロール≫というコンセプトで捉える本稿での試みは,コントロール論に新しい領域を生み出そうとする大胆なものとなっている.

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