管理会計学 : ⽇本管理会計学会誌 : 経営管理のための総合雑誌
Online ISSN : 2434-0529
Print ISSN : 0918-7863
27 巻, 2 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
論壇
  • 中村 博之
    2019 年 27 巻 2 号 p. 3-11
    発行日: 2019/03/31
    公開日: 2019/05/15
    ジャーナル フリー

    現代企業の経営において,企業グループの経営活動は以前から続く興味深い研究対象の1つである.そのため,今回の統一論題のテーマは「企業グループの管理会計」として設定された.ここで,企業グループの経営はどのような形で機能しているのか.さらには,これからの管理会計は,企業グループの経営管理のためにどのような変化をしていくことになるのか.このような深遠な研究課題に関する展望を示すことが今回の統一論題の課題である.このために,今回の全国大会では,4つの研究報告を頂いた.これら4つの貴重な研究報告により,「企業グループと管理会計」の重要な論点が解明された.しかし,この「企業グループと管理会計」に関する研究が,今後も多くの有意義な研究の蓄積へと結びつくためには残された課題がある.この解決により,引き続き,企業経営の発展に結びつくべく,「企業グループと管理会計」に関連する研究が継続され,実際に企業の発展が実現することを期待したい.

  • 塘 誠
    2019 年 27 巻 2 号 p. 13-26
    発行日: 2019/03/31
    公開日: 2019/05/15
    ジャーナル フリー

    株式市場全体の純粋持株会社(HD)は,2018年春時点で445社であった.そのうち296社(67%)が東証1部に属していた.HDは,異企業間の企業統合や,企業内の組織再編で利用される傾向にある.直近1年で見ると,企業統合型と組織再編型は半々であった.HDでは,事業の入替,ピークアウト,クロスサブシダイゼーションにGrowth share Matrixを活用している事例があった.2017年の日本企業のM&Aのうち,国内企業が海外で行うIN-OUTのM&Aが56%を占めている.グループ管理においては,異文化マネジメントの重要性が増す.その中核は,企業の中で蓄積されてきた暗黙的なインセンティブシステムの明示化である.日本企業の管理職レベルではすでに,職務型の人事制度が従来の職能型を上回っている.職務型を採用した企業では,インセンティブシステムの明示化のため,管理会計情報の精緻化(財管分離)が必要となる.

  • 福田 淳児
    2019 年 27 巻 2 号 p. 27-44
    発行日: 2019/03/31
    公開日: 2019/05/15
    ジャーナル フリー

    本稿の目的は,純粋持株会社制を採用している企業グループにおける,グループ・レベルでの全体最適と事業会社レベルでの部分最適との間の整合性を取るためのマネジメントの設計を明らかにすることにある.キリングループへのインタビュー調査から以下の点が明らかになった.キリングループではグループ全体最適な意思決定を促進するために,ホールディングスと事業会社間での取締役の兼任を行わない.また,事業会社の獲得した利益は全額配当金としてホールディングスに集約されている.さらに,グループ・レベルの戦略が事業会社の戦略に組み込まれ,その実行が確実に行われるために,KISMAPを始め,それに関連した業績測定・評価などのMCSsの設計に工夫が見られた.事業会社間の連携を促進するうえで,ホールディングスが積極的にブランド・マネジメント・システムを利用している点も特徴的であった.しかし,iMUSEブランドによる取り組みの背後には,組織メンバーの過去のプロジェクト経験に基づく非公式的なネットワークが果たす役割も重要であった.

  • 岡 照二
    2019 年 27 巻 2 号 p. 45-60
    発行日: 2019/03/31
    公開日: 2019/05/15
    ジャーナル フリー

    現在,企業を取り巻く地球環境は大きく変化している.現代企業は,地球温暖化に伴う気候変動,水,生物多様性など従来の管理会計では対象としてこなかった社会的コストまで把握する必要がある.また企業グループ・マネジメントにおいて全体最適と部分最適の間で整合性を保った経営を行う必要があるが,上記の課題を抱える現代企業においても同じだろうか.

    本稿では,持続可能な社会を実現するために,企業グループ・マネジメントにおいて,これまでの全体最適の範囲を地球全体へと拡張する必要があり,持続可能な経営に資する環境管理会計手法として,フルコスト会計および自然資本会計に注目した.そこで,日本の環境会計および環境管理会計,日本企業の環境活動の現状と課題を明らかにし,企業グループの環境経営・環境会計については質問票調査を実施した.また,自然資本会計については事例研究を行ない,気候変動に伴う企業グループの環境管理会計の新たな展開について検討した.

  • 宮元 万菜美
    2019 年 27 巻 2 号 p. 61-72
    発行日: 2019/03/31
    公開日: 2019/05/15
    ジャーナル フリー

    グループ企業のマネジメントの形態や組織デザインは,ビジネスモデルに依存するところが大きい.また,顧客の分布やサプライチェーンが国や国際的な地域をまたがるとマネジメントは複雑化する傾向にある.ある企業がM&Aによってグループ経営を拡大していく場合には,明確な役割分担の体系と共通のマネジメントフォーマットにより「問いかけ,任せる経営」を行うことが必要となる.また,これと結果の評価は直結していることが望ましく,外国出身の幹部のインクルージョンやトップの直接的コミュニケーションも重要な観点となる.本稿では日系企業の事例をもとに,どのような海外子会社のマネジメント形態があり,どのようなことに注意を払いながらマネジメントしていくことが望ましいと言えそうなのかを考察する.

事例紹介
研究ノート
  • 山本 宣明, 横井 隆志
    2019 年 27 巻 2 号 p. 83-98
    発行日: 2019/03/31
    公開日: 2019/05/15
    ジャーナル フリー

    中小企業の管理会計を向上させる有力な支援者となる可能性を会計事務所(税理士事務所)は有している.現在,会計事務所が月次決算サービスを中小企業に対して提供することが普及しているものの,多くは管理会計の立場から首肯できる内容となっていない.月次決算サービスを管理会計的に意味あるものとするには,何らかフィードバックとフィードフォワードを機能させる必要がある.そして,会計事務所の立ち位置と業務実態を踏まえると,フィードフォワード主体の経営協議を行うことが有効と考えられる.フィードフォワード主体の経営協議とは,顧問先の目指すべき財政状態を会計事務所が独自に持ち,顧問先が業績の向上に注力できるよう協議を行うことを指す.ITツールの民主化を受けて台頭しつつあるBIツールTableauを用いれば,数字を嫌う経営者にも直感に訴える形で協議を行うことができる.会計事務所が中小企業の管理会計を向上させる有力な支援者となるには,分析力を高める必要がある.

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