管理会計学 : ⽇本管理会計学会誌 : 経営管理のための総合雑誌
Online ISSN : 2434-0529
Print ISSN : 0918-7863
24 巻, 1 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
論文
  • 安酸 建二
    2016 年24 巻1 号 p. 3-25
    発行日: 2016/03/31
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    日本の証券取引所に上場している企業は,証券取引所の要請に従って決算短信において次期の利益予想を発表する.近年の質問票調査は,この経営者利益予想が組織内部の利益計画や予算と密接に連動していることを明らかにしつつある.これは,予算をはじめとする管理会計の立場から経営者利益予想を研究する必要性を喚起する.本研究の目的は,管理会計の領域で蓄積された利益目標の設定におけるラチェット効果の知見に基づいて,経営者利益予想およびその予想誤差に見られる傾向が説明可能であることを示すことにある.分析の結果,経営者利益予想においてラチェット効果が見られ,さらに,ラチェット効果が経営者利益予想誤差に影響を与えていることも明らかになった.管理会計からのアプローチは,従来,財務会計の研究領域とされてきた経営者利益予想に関する理解を一層深めることに貢献する.

  • 佐久間 智広
    2016 年24 巻1 号 p. 27-46
    発行日: 2016/03/31
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,ビジネスユニットのマネジャーの個人差が自身のユニットの業績に与える影響を検証することにある.経営者やマネジャーが誰であるかによって意思決定が異なり,その結果として業績も異なるということは,多くの企業実務や経営学の研究において前提となっている.しかしながら,マネジャーが誰であるかによって担当するビジネスユニットの業績にどの程度の違いが生じるのかについて,理論的予測は必ずしも一貫しておらず,実証的な証拠も示されていない.そこで本研究では,株式会社ドンクにおける店舗別の財務・人事データを用いて,マネジャーの個人差が組織業績に与える影響の有無とその大きさを推定した.検証の結果,マネジャーの個人差は,ビジネスユニットの業績に対して経済的に重要な影響を与えるということを発見した.加えて,推定された個人差は,マネジャーのキャリア,年齢の違いと有意に関係していることを発見した.

  • 北田 智久
    2016 年24 巻1 号 p. 47-63
    発行日: 2016/03/31
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    本稿は,日本企業におけるコスト・ビヘイビアの非対称性について分析する.具体的には,日本企業におけるコストの反下方硬直性に関して,Banker et al.(2014)の分析枠組みを用いて分析する.すなわち,売上高が増加する際のコストの増加率に比べて,同額の売上高の減少の際のコストの減少率の方が大きいという現象が観察されるかどうかを検証する.分析の結果,日本企業の売上高と販管費の間には,下方硬直性と反下方硬直性の両方が観察された.さらに,分析期間を拡張すると,下方硬直性と反下方硬直性が観察されるのは,それぞれ過去の売上高が連続した増加または減少傾向を示すときのみであるということがわかった.また,前期に売上高が減少する場合よりも,前期に売上高が増加する場合,今期の売上高の増加の程度を所与とすると販管費は平均してより大きく増加する.さらに,Banker et al.(2014)を拡張して,業種ごとのコスト・ビヘイビアを分析すると,販管費の反下方硬直性が観察されない業種が存在することがわかった.

  • 福田 正彦
    2016 年24 巻1 号 p. 65-77
    発行日: 2016/03/31
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,ブランドを貨幣価値で評価したブランド価値に対し,広告宣伝費が正の影響を与えるかいなかを明らかにすることである.このため,ブランド価値としては,CBバリュエーターによって算出された2006年から2011年の企業ブランド価値(CBV)トップ200社を使用し,広告宣伝費との関係を共分散構造分析によって検討した.タイムラグについては,先行研究より,4年前からの影響があることとし,分析した.この結果,広告宣伝費は,CBVに対して統計的に有意な正の影響を与えることが判明した.次に,広告宣伝の効果には差があることが先行研究によって明らかにされている.そこでCBVが前年に対し上昇した企業と下降した企業とを比較し,CBVが上昇した企業のほうが下降した企業よりも,広告宣伝費のCBVに対する効果が大きいとの仮説を設定し,多母集団分析をおこなった.その結果は,この仮説は支持されなかった.

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