管理会計学 : ⽇本管理会計学会誌 : 経営管理のための総合雑誌
Online ISSN : 2434-0529
Print ISSN : 0918-7863
2 巻, 2 号
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論文
  • 浜田 和樹
    1993 年2 巻2 号 p. 3-23
    発行日: 1993/12/25
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    本稿において,確率制約条件計画法を用いた利益計画モデルと,その最適解を用いたC-V-P分析について考察する.C-V-Pの関係を知れば,利益算出過程の総合的な把握が可能となり,検討箇所が明確になる.

    数理計画法とC-V-P分析は,直接には関係をもたないが,数理計画法によって求められた解を用いて,C-V-P分析を行えば,制約条件付きの多品種製品ミックス問題を,容易に扱うことができるという利点をもっている.しかも,モデルの定式化の仕方を変えることによって,さまざまな問題に対処できることになる.

    本稿は,基本的特徴のみを明らかにするために,モデルを極力簡単化し,販売価格のみを確率変数と仮定している.そして,2種類の確率制約条件計画法を用いた利益計画モデルの特徴を,図を用いて詳細に検討する.図を用いることによって,モデルの特徴がかなり明確になるからである.また,モデルの係数の変化による最適解への影響も図を用いて示し,C-V-Pの関係にいかなる影響を及ぼすかについて考察する.

  • 伏見 多美雄, 横田 絵理
    1993 年2 巻2 号 p. 25-45
    発行日: 1993/12/25
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    この論文は,日本企業のフィールド・スタディを基礎にして,事業部制マネジメント・コントロールに内在する日本的な特質を具体的に検討し,いくつかの基本仮説を導出することを目的としている.

    日本の多くの企業は,1960年頃から,欧米先進国,特にアメリカ企業の実務と,それをベースにしたマネジメント・コントロール論に立脚した事業部制を相次いで「輸入」したが,やがて,これを自社内に定着させていく過程で,それぞれの事情に合わせて種々の変形ないし変質を加えて今日に至っている.その具体的プロセスは,個々の企業ごとに多様であるが,ごくベーシックな部分に注意を向けると,米国型の事業部制とは異なる「日本型」と呼べるような諸特質が観察されることが多いのである.本稿は,このようなプロセスをたどった典型的な一例と思われるS化学工業のフィールド・スタディをベースにして,日本的な事業部制マネジメント・コントロールの特質をさぐり,その結果を仮説構築の基礎として整理した.

    この研究を通じて得られた重要な知見の一つは,米国型MCS論に忠実な事業部制マネジメントを導入した日本企業が,その歴史的展開の中で日本的なものに変質させていくプロセスには,(a)組織構造や管理会計などのハード面に関する変質と,(b)それらの現実的な運用プロセス,つまりソフト面で行われていく変質との2面があり,後者の局面が特に重要だということである.

  • 枇々木 規雄, 福川 忠昭
    1993 年2 巻2 号 p. 47-67
    発行日: 1993/12/25
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    日本の銀行は金融の自由化・国際化の影響を受け,厳しい経営を迫られている.このような経営環境の中で,銀行は様々な規制の下でリスク管理を十分に行いながら,利益をあげる必要がでてきた.本論文では,銀行のリスク管理手法であるALM(資産負債管理)の考え方を利用し,不確実性を考慮した多目標単純リコース確率計画ALMモデルを提案する.このモデルの特徴は,銀行経営にとって重要になってきているBIS(国際決済銀行)の自己資本比率規制に含まれる確率的要素を確率制約式として取り扱うなど,不確実性を考慮しつつ,トレードオフの関係にあるリスクと利益という多目標を取り扱うことができることである.そして,このモデルによってALMの問題を解く方法論として,単純リコース型の確率計画法における確率制約式と目標計画法における目標制約式との両方を一度に取り扱う方法を提案する.

  • 佃 純誠, 阿部 雅之, 福川 忠昭
    1993 年2 巻2 号 p. 69-94
    発行日: 1993/12/25
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    設備の削減を含む設備投資の意思決定は設備単独で行われることは少なく,とくに近年のわが国においては自動化との関連もあり,人員の増減に関する意思決定と組合せて行われることが多いと思われる.本論文では,設備(機械装置)の増加/削減と人員の増加/削減とを組合せた意思決定を「方策パターン」と名付け,1976~1991年の15年間にわが国の製造業1,014社が行った「方策パターン」と設備投資の経済成果との関係を分析した.これによって経営者が投資を効果的に行うに役立つ情報を見いだすことが本研究の狙いである.設備投資の経済成果は,投資計画の合理的な意思決定方法と同じ原理に基づき,投資決定に用いられる正味終価に相当する「正味終価」を有価証券報告書データを用いて計算した.この「正味終価」の赤字・黒字と「正味終価」を産み出すもとになる第1次的な稼ぎである営業収入の成長・停滞とを組合せて4つの「成長・業績区分」を設定し1,014社をこの4つの「成長・業績区分」に分類した.「方策パターン」は有価証券報告書の設備と人員との増減に関するデータを用いて,設備と人員の15年間の平均的な増減値の組合せによって9つのパターンを設定した.4つの「成長・業績区分」に分類した企業をさらに9つの「方策パターン」とこれを集約した6つの「方策グループ」とに分類し,9×4=36個のカテゴリィと6×4=24個のカテゴリィに入る企業の数を勘定する.これから作成した4種類の一覧表と4つの図に対する考察の結果,「成長・業績区分」と方策と間に幾つかの概括的な関係が見いだされた.

研究ノート
  • 枇々木 規雄, 福川 忠昭
    1993 年2 巻2 号 p. 95-110
    発行日: 1993/12/25
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    本研究ノートでは,銀行のリスク管理手法であるALM(資産負債管理)の考え方を利用し,不確実性を考慮した多目標単純リコース確率計画ALMモデルに対し,数値実験による考察を行う.数値実験では,従来の確定モデルとの比較や確率パラメータが持つ確率分布の形状による影響など,確率的にモデルを取り扱う際の特徴を考察するために,(1)金利変動リスクと利益に対する目標値が異なるケースの比較,(2)線形近似解法の方法が異なるケースの比較,(3)確率分布の形状が異なるケースの比較,の3つの分析を行う.この数値実験で取り扱った商品や制約の数などはモデルの特徴を分かりやすく明らかにするために,実際の銀行に比べてはるかに小さいものであるが,これらの数値実験による考察を通じて,実用上も十分に役立つモデルの有用性を明らかにしていく.

事例研究
  • 伏見 多美雄, 横田 絵理
    1993 年2 巻2 号 p. 111-131
    発行日: 1993/12/25
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    本研究は,S化学工業株式会社のフィールド・スタディをベースにして,同社の事業部制マネジメント・コントロールと,これを支える管理会計システムの変遷を描くことを一つのねらいとしている.S化学では,1958年に事業部制を導入して以来,この方式を同社の基本的なマネジメント・コントロール・システム(MCS)として定着させ,またこれを絶えず改善する努力を続けてきた.その変遷を振り返ることは,日本企業の事業部制マネジメントの一つの縮図を見ることになると考える.

    この研究のもう一つのねらいは,S化学の事業部制マネジメント・コントロールの特徴を整理することを通じて,いわゆる米国型マネジメント・コントロールとは異なる「日本的」な特質を明らかにし,本誌に投稿・受理された論文のベースになる情報を提供することにある.

    こうしたねらいのもとに,まず第1節で問題意識を述べた後,第2節では,同社の1960~70年代の事業部制マネジメントの推移と,その特徴について考察する.第3節では,1980年頃に行われた組織構造と管理会計システムとの同時的な改革(以下80年改革と呼ぶ)の大要を明確にし,つづく第4節では80年改革以後に生じた事業部制マネジメントの変化を考察する.そして第5節では,まとめを兼ねて,こうした事業部制マネジメントと管理会計の変遷に見られる主要な特徴を再整理する.

研究資料
  • 金川 一夫, 羽藤 憲一, 菅 錦吾
    1993 年2 巻2 号 p. 133-150
    発行日: 1993/12/25
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    本研究は,融資業務のエキスパート・システムを構築する際に,すでに提案されている改善点を表示するという機能に対して,システムのインプットとアウトプットの属性の問題を解決するために.

    インプットデータは,個々の担当者の主観が入り,担当者が全く同一の基準,改善点表示のための新しい方法を提案し,その有用性を検証したことに特徴があるで情報を収集・分析しても同一のデータを入力するとは限らない.そこでは担当者の主観性の影響を常に受ける.また,推論結果としてのアウトプットデータは,担当者にフィードバックされるが,それは,この融資交渉が少しでも円滑に進められることができるような情報とする必要がある.

    このようなシステムのインプットとアウトプットの属性の問題を解決するための1つの方法として,改善点の表示方法を改善することにより行おうとする意図から,最優先改善点表示法として最も改善すべきものを一つだけ表示する方法と,全改善点表示法として改善し得る全てのものを表示する方法との2つの代替的な方法を提案した.

    そして,これらの代替的な方法を検証し,全改善点表示法として提案される方法が有用であることを明らかにした.

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