管理会計学 : ⽇本管理会計学会誌 : 経営管理のための総合雑誌
Online ISSN : 2434-0529
Print ISSN : 0918-7863
22 巻, 1 号
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論文
  • 鈴木 研一, 松岡 孝介
    2014 年22 巻1 号 p. 3-25
    発行日: 2014/03/20
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    本研究は,従業員満足度,顧客満足度,および財務業績の関係に関わる検証を,ホスピタリティ産業の一つであるホテル業を営む日本企業A社の,6年間に及ぶデータを用いて検証した.このような一連の関係を扱った研究は会計学の分野では非常に少ないために,マーケティング論および組織論まで含めて幅広く先行研究をレビューした.学際的な視点から見た本研究のオリジナリティは,(1)従業員と顧客が直接に相互作用する代表的な業種であるホスピタリティ産業において,(2)6年間もの長期間にわたって収集したデータを用いて,(3)従業員満足度→サービスの質→顧客満足度→稼働可能客室当り粗利益という一連の関係を同時に分析し示したことである.このことは,一連の関係を同時に明らかにした研究が限られている中で,実務がそのような関係を重視することの裏付けを与えたということだけでなく,サービス・プロフィット・チェーンやバランス・スコアカードといった多様な業績指標を含むフレームワークの妥当性を示す一つの実証的証拠を提示したという点で,一定の意義があると思われる.

  • 小泉 友香
    2014 年22 巻1 号 p. 27-47
    発行日: 2014/03/20
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    本論文の目的は,「製造工程の始点で材料が投入され,かつ工程の一定点で減損が生じ,期首仕掛品が当期に入って減損発生点を通過する.」という生産状況を対象とし,従来の総合原価計算で用いられている「期首仕掛品から減損が生じない」という仮定を取り除いた場合について,正常減損非度外視法による先入先出法を採用した場合の任意の2原価計算期間の単純総合原価計算の理論モデルを示すことである.この際,(1)「工程原価構成図」と「完成品換算量図」を使用して,「前期着手当期完成品原価」および「期首仕掛品から生じた減損原価」の測定方法を示す.さらに,(2)減損の完成品換算量への換算係数の概念を導入し,その計算方法を示し,また(3)作業屑を減損の概念に包摂し,従来の控除法ではなく非度外視法を適用して,作業屑原価を算定するべきことを提示する.そして,(4)上記の生産状況において,期首仕掛品が当期に入り減損発生点を通過した場合,直接材料費の仕掛品の進捗度(換算係数)の上限は,通常は「1」とされているが,これが妥当ではないことを示し,新たな仕掛品換算係数の計算方法を提案する.さらに,(5)従来の方法では,期末仕掛品原価には次期において減損となる部分が含まれていることが写像されないことを明らかにする.

  • 潘 健民
    2014 年22 巻1 号 p. 49-68
    発行日: 2014/03/20
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    本研究では,時価会計の導入に対して日本企業がどのような報告利益管理を行ったのかについて検証した。本研究では,日本企業が時価会計の導入に対し,損失回避の報告利益管理を行ったことを確認した。特に,成長企業や非製造業に属する企業が実質報告利益管理を行い,損失回避行動をとったことが確認できた。

  • 篠田 朝也
    2014 年22 巻1 号 p. 69-84
    発行日: 2014/03/20
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    本論文は,資本予算における洗練された評価方法の利用と企業業績の間の関連性を確認することを目的とした実証研究である.これまでの欧米の先行研究では,両者の間に正の関連性が確認されたものは少ないという結果が得られている.本論文は,当該論点について,日本企業のデータによる初めての実証結果を示したものとなっている.当該分析を通じて,日本企業における両者の間には弱度の正の関連性が確認された.

    他方,本論文では,洗練された評価方法の利用のみならず,事後フォローを活用しているかどうかという点にも注目して,企業業績との関連性について検証を行っている.これは欧米の先行研究にもない追加的検証であり,新たな知見をもたらすものとなっている.分析の結果,事後フォローそれ自体,および,洗練された評価方法を前提とした事後フォローの活用は,企業業績に対して正の関連性をもたらすという結果が確認された.

  • 福田 正彦
    2014 年22 巻1 号 p. 85-101
    発行日: 2014/03/20
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    近年,ブランドをはじめとする無形資産が企業の業績や価値に大きな影響を与えるという認識が高まっている.本稿では,ブランドが日本企業の業績におよぼす影響を実証的に検討する.このため,ブランド・エクイティを表す指標として日経BPコンサルティング発行の『ブランド・ジャパン』からの3つの指標,認知率,好感率,他にはない魅力率を選択し,企業業績を表す財務値との関係を分析した.この結果,3つの指標のうち,他にはない魅力率が財務値と正の関係があることが明らかになった.他にはない魅力率は,ユニークなブランド連想を示す指標であり,他のブランドから当該ブランドを選択する上で重要であるとの指摘がある.企業業績には,ブランド・エクイティのなかでもユニークなブランド連想が重要であることが示唆された.

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