管理会計学 : ⽇本管理会計学会誌 : 経営管理のための総合雑誌
Online ISSN : 2434-0529
Print ISSN : 0918-7863
11 巻, 2 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
論壇
  • 岡田 依里
    2003 年 11 巻 2 号 p. 3-17
    発行日: 2003/08/20
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    本稿は、知的資産を軸とした企業の内部改革を、いかに市場からの企業評価と結びつけるかを論じるものである。ここに知的資産を、企業の知的活動により生み出され、企業に将来価値をもたらす無形の要素、と定義すると、多くの企業では、顧客資産、ビジネスプロセス、高付加価値事業、等といった知的資産を取得・活用して内部改革を行っている。一方で、機関投資家等の市場関係者も、企業の知的資産を非財務要因として着目し、将来キャッシュフローの推定や資本コストの修正に利用していることがわかっている。今後、企業の課題として、知的資産を利用した内部改革努力を、制度開示を含むインベスター・リレーションズ活動でいかに市場での評価と結びつけるか、が指摘される。

  • 猿山 義弘
    2003 年 11 巻 2 号 p. 19-27
    発行日: 2003/08/20
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    本稿の目的は,広告費予算の設定において定性的な広告のコミュニケーション効果を貨幣的尺度で表されたブランド価値に換算して評価する可能性を探ることにある.本稿の前半では,広告・マーケティング分野でのブランド概念にあまり配慮しない形で,投資としての広告費予算の現在価値モデルの構築を行う.そして,後半では,広告費予算の設定に非貨幣的要素が組み入れられるようにモデルの修正を試みる.主な修正は割引キャッシュ・フロー分析における割引率の新たな推定法である.ブランド・エクイティ概念に基づいて修正されたモデルで使用される割引率は,将来の増分キャッシュ・フローについての認知リスクを意味する.企業の利害関係者は,強いブランドから得られる将来キャッシュ・フローには相対的に低いリスクを認知する.したがって,広告を通じて強いブランドを築くことは,貨幣的尺度で測定されるブランド価値を高めることにつながる.この新たな考え方は,戦略的投資としての広告費予算の設定にも適用可能なものである.

  • 佐山 展生
    2003 年 11 巻 2 号 p. 29-42
    発行日: 2003/08/20
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    企業の価値は一般の動産や不動産とは異なり,所有者によってその価値が変わるのが特徴である.それは,将来の収益性が企業価値の源泉であるからに他ならず,静態で評価される美術品や貴金属と異なり,企業は動態で評価される.本稿では,シリンダーモデルを用いて企業価値について考え,M&Aにおいていかに企業が評価されるか,また企業価値とインタンジブルズの価値とはどのような関係にあるのかについて考察する.

    企業価値を評価する際に,事業に使用する資産価値よりも将来生み出すキャッシュフロー(CF)の方が評価に重要な要素である.一方,DCF(Discounted Cash Flow)は,まさしく将来のCFで評価するものであるが,その前提条件により大きく評価結果が変化することを具体例で説明する.また,日本の株式会社の評価は,その持分によって不連続点が存在すること,個々のインタンジブルズの評価結果が企業全体の評価に影響を与えないことも解説する.

  • 西村 優子
    2003 年 11 巻 2 号 p. 43-55
    発行日: 2003/08/20
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    本稿では,研究開発投資のコスト・ベネフィット分析の視点から,研究開発投資プロジェクトのインプット→中間的成果(技術知識ストック)→研究開発投資から得られる最終的成果(企業価値)に至る一連のイノベーション・チェーンを提示する.研究開発投資プロジェクトのインプットから生み出される技術知識は非競合性と非専有性の特性を有し,高いリスクを伴う.非競合性と非専有性を非財務的測度によって測定すると,特許残存期間,特許終了期間,製品化までの期間,研究開発投資の進捗状況と開発製品やサービスの成功件数,FDAの承認やベータテストなどによって測定される.企業目標は企業価値増大と考えられるため,研究開発投資のコストとベネフィットの測定にこの評価基準を適用すると,最終的成果(企業価値)はプロジェクトライフ期間に生じるDCFあるいは超過利益の現在価値によって測定される.DCFあるいは超過利益の現在価値によって測定する場合,プロジェクトライフ期間,将来のキャッシュ・フローあるいは超過利益,ならびに資本コストの測定が問題となる.

論文
  • 堀井 悟志
    2003 年 11 巻 2 号 p. 57-69
    発行日: 2003/08/20
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    1965年にAnthonyは,戦略的計画設定/マネジメント・コントロール/オペレーショナル・コントロールという体系を提示した.その後,機能拡大したマネジメント・コントロール論が展開された.それに応じて戦略管理会計論が提唱されたが,その位置づけに関してはさまざまな見解がある.そこで本論文では,戦略管理会計論の位置づけを切り口として,管理会計体系論について検討した.管理会計が会計である以上求められる期間業績測定の機能は,管理会計体系論として重要視されるべきである.そのために,プロジェクトに焦点を当て,期間業績測定を前提としない戦略管理会計論はマネジメント・コントロールの中で論じられるべきではなく,戦略的計画設定を支援するための会計として位置づけられるべきなのである.

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