企業の価値は一般の動産や不動産とは異なり,所有者によってその価値が変わるのが特徴である.それは,将来の収益性が企業価値の源泉であるからに他ならず,静態で評価される美術品や貴金属と異なり,企業は動態で評価される.本稿では,シリンダーモデルを用いて企業価値について考え,M&Aにおいていかに企業が評価されるか,また企業価値とインタンジブルズの価値とはどのような関係にあるのかについて考察する.
企業価値を評価する際に,事業に使用する資産価値よりも将来生み出すキャッシュフロー(CF)の方が評価に重要な要素である.一方,DCF(Discounted Cash Flow)は,まさしく将来のCFで評価するものであるが,その前提条件により大きく評価結果が変化することを具体例で説明する.また,日本の株式会社の評価は,その持分によって不連続点が存在すること,個々のインタンジブルズの評価結果が企業全体の評価に影響を与えないことも解説する.
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