管理会計学 : ⽇本管理会計学会誌 : 経営管理のための総合雑誌
Online ISSN : 2434-0529
Print ISSN : 0918-7863
30 巻, 1 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
論文
  • 窪田 祐一, 劉 美玲, 三矢 裕
    2022 年 30 巻 1 号 p. 3-20
    発行日: 2022/03/30
    公開日: 2022/03/30
    ジャーナル フリー

    本稿の目的は,両利き経営の成果に影響を及ぼす要因を解明することにある.具体的には,イノベーション戦略とマネジメント・コントロール・パッケージ(MCP)の2つの要因に注目する.両利き経営では,知の活用と探索を同時に行う両利き戦略を実現させる適切なMCPパターンの適用が不可欠であろう.本研究では,Simonsの提示するレバーズ・オブ・コントロール(LOC)を適用し,両利き戦略とMCPパターンが両利き経営の成果に与える影響を分析した.分析の結果,両利き経営の成果を効果的に得るには,すべてのLOCを重視するMCPパターンの利用が必要であることが示された.

  • 商 哲
    2022 年 30 巻 1 号 p. 21-36
    発行日: 2022/03/30
    公開日: 2022/03/30
    ジャーナル フリー

    先行研究では,BSCを運用するとき,他のMASとの連携が不可欠と認識したうえ,企業内のBSCと一部のMASに焦点を当てた研究がなされてきた.しかし,企業に存在するすべてのMASを視野に入れ,BSCとの連携はどのように計画されるかはまだ明らかにされていない.本稿では,亀山電機に基づき,先行研究で見られた外部環境,情報技術,文化,コミュニケーション,および意思決定権限に関する考え方によって,連携を計画するとき,そのプロセスにかかわった人がどのような活動を起こし,それによって,どのような情報の流れを作り出して連携を計画したかという問題を解くことで,BSCと他のMASとの連携を計画する実態を明らかにした.また,先行研究で見られた人の考えは,必ずしもBSCと企業に存在するすべてのMASとの連携において機能しないことを発見した.

  • 岩澤 佳太, 桝谷 奎太, 吉田 栄介
    2022 年 30 巻 1 号 p. 37-53
    発行日: 2022/03/30
    公開日: 2022/03/30
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,近年の日本の製造業におけるコストマネジメントの変容について,コンティンジェンシー要因との関係およびコストマネジメント活動と効果の関係に着目して解明することである.とりわけ原価企画に注目した上で,2009年,2014年,2019年と郵送質問票調査を実施した.多母集団同時分析の結果,原価企画活動,効果・逆機能の平均値および原価企画活動と効果の関係性は,概ね一貫していたのに対し,原価企画活動と逆機能の関係性および組織コンテクストと原価企画活動の関係性については,調査時点間で統計的に有意な差を確認した.このことは,日本企業の原価企画について,従来の活動の一貫した有用性を示す一方で,経営環境やビジネスモデルの変化に対応する新たな仕組みの必要性を示唆していた.

  • 若林 利明
    2022 年 30 巻 1 号 p. 55-71
    発行日: 2022/03/30
    公開日: 2022/03/30
    ジャーナル フリー

    本稿は,Heinle et al. (2012)のモデルを発展させ,行動目標の決定権の配分と業績評価の方法にアイデンティティが及ぼす影響をマルチタスクのLENモデルを用いて明らかにする.具体的に,2つの行動目標の決定権のうちどれを委譲しどれを委譲すべきではないのか,その条件はいかなるものかを示す.分析の結果,組織に対する自己のアイデンティティの相対的な強さに応じて目標決定の権限の一部をエイジェントに委譲することが望ましい場合とすべての権限をプリンシパルが留保することが望ましい場合があること,この条件が事業の収益性に影響を受けることなどを示した.本稿は,組織設計におけるアイデンティティの役割を理論的に示すことに貢献している.

  • 近藤 大輔, 浅石 梨沙, 黒木 淳
    2022 年 30 巻 1 号 p. 73-88
    発行日: 2022/03/30
    公開日: 2022/03/30
    ジャーナル フリー

    本研究ではアメーバ経営を導入した六甲バターをリサーチサイトとして取り上げ調査した.その結果,一つ目にアメーバ経営が後継者の利益という採算数字へのこだわりを強くしたことが分かった.二つ目に,全部門が参加する経営会議で細かな項目に着目して後継者の採算意識を強く示すこと,さらに戦略・施策への達成意欲を強く示すことで,従業員たちがチームとして一致団結して業績を向上しようとすることが分かった.三つ目に,アメーバ経営が後継者の経営者意識を高めるという意味で後継者を育成できることが分かった.

  • 中村 正伸
    2022 年 30 巻 1 号 p. 89-103
    発行日: 2022/03/30
    公開日: 2022/03/30
    ジャーナル フリー

    製品開発の予算管理を巡っては,現場の試行錯誤を如何に刺激しイノベーションを促進するかが検討されてきたが,上位管理者のPJチームとの調整や意思決定の詳細は明らかでなく,実行段階を中心に研究を行った.その結果リサーチサイトで上位管理者は,計画段階で,チームに目的・計画達成を厳命しつつ,開発組織全体の目標を示し計画変更や新規PJ提案を奨励した上で,実行段階では,チームに予算管理上の裁量を認めつつ,進捗確認と意思決定の会議を繰り返し,開発組織全体の計画を制約条件に,予算配分を巡り,チーム内,上司の管理職や他チームとの調整や提案をチームに促し,意思決定を行うことで,柔軟性と効率性が両立した業務遂行が実現していることが明らかとなった.

  • 天王寺谷 達将, 諸藤 裕美, 中嶌 道靖, 鈴木 寛之, 木村 麻子
    2022 年 30 巻 1 号 p. 105-121
    発行日: 2022/03/30
    公開日: 2022/03/30
    ジャーナル フリー

    本研究は,三菱ケミカル株式会社の事例を通じて,企業理念を利用したサステナビリティ配慮型製品開発のマネジメントの実践を捉えた.三菱ケミカルでは,価値実現のタイムスパンが異なる3つの基軸を別軸で捉えた企業理念を反映したポートフォリオの利用,製品開発プロセスの初期段階におけるサステナビリティに関するテーマ重視などを通じて,従来の製品開発に関する価値とサステナビリティの価値のバランスを保ち両立させている.

  • 柊 紫乃, 上總 康行
    2022 年 30 巻 1 号 p. 123-140
    発行日: 2022/03/30
    公開日: 2022/03/30
    ジャーナル フリー

    現場改善の目的のひとつは,現場改善活動による工程,工場単位での生産性向上である.従前の各原価計算手法は優れた計算構造や特徴を有するものの,改善効果を網羅的に金額測定できない.そのような課題を解決するために複数の先行研究が試みられ,その一つとして現場改善会計論(GKC)が提唱されてきた.GKCでは,「機会損失」の概念を取り入れ,改善活動を評価する計算式が提示された.

    本研究では,従来研究をより発展させ,改善効果としての「生産能力増大」を定義し,改善効果を計算できる概念式を提示する.さらに,生産能力増大の活用方法に注目して,改善効果の測定について計算事例を示す.その上で,改善効果が会計的にどのように現れるかについて類型化する.

  • 槙下 伸一郎
    2022 年 30 巻 1 号 p. 141-158
    発行日: 2022/03/30
    公開日: 2022/03/30
    ジャーナル フリー

    意思決定を改善する方法の一つとして,情報の可視化についての工夫が考えられる.本論文では,情報の可視化の一手法である情報の表示形式に着目する.具体的には,同一の情報が表やグラフという表示形式が異なることによって意思決定にどのような影響を与えるか,という点に焦点を当てた先行研究のレビューを行い,その整理と考察を試みる.その結果,我が国における財務情報とその表示形式に関する研究がほとんどないこと,先行研究における研究成果が,我が国における情報の可視化の場面においてなんらかの示唆を与えうるかということ,ある財務情報に関する認知の程度を左右する可能性のある表示形式について,企業がこれに影響を与える可能性のあるどのような変数を想定しているのか,という課題が明らかになった.

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