管理会計学 : ⽇本管理会計学会誌 : 経営管理のための総合雑誌
Online ISSN : 2434-0529
Print ISSN : 0918-7863
23 巻, 2 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
論壇
  • 大下 丈平
    2015 年 23 巻 2 号 p. 3-16
    発行日: 2015/03/20
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    本稿は,環境,社会およびガバナンスに対して管理会計はどう向き合うかを考えるうえで,筆者が適切と考える「ガバナンス・コントロール」の可能性を提示することを目的としている.コントロール論は,企業競争力の維持を前提に,同時に投資家・株主の意向に沿った形で資本市場での企業の価値創造,さらには経営の持続性を絶えず追求していかねばならない.これらは互いに矛盾する要素を抱えており,柔軟に対処していかなければならない.けだし,これらの要素が長期・短期の時間的なパラドックス,財務・非財務のパラドックス,企業内外のパラドックスといったものを抱え込んでいるからである.本稿は,従来のマネジメントのコントロールの枠を超え,ガバナンスのレベルでのコントロールに焦点をあてることで,内だけでなく外をも向いた,つまり,社会性を意識したコントロールの展開を強調している.要するに,本稿は統一論題での議論を通して,「ガバナンス・コントロール」の可能性を明らかにすることで,新しいコントロール論の構築を目指している.

  • 宮地 晃輔
    2015 年 23 巻 2 号 p. 17-32
    発行日: 2015/03/20
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    長崎県に造船事業部を有する国内造船の準大手であるA社造船所(以下A社と称す)が,新造船事業の採算性改善と競争優位の創出を目指して,2010年6月以降に取り組みを本格化させた戦略的原価管理としての原価企画(Target Costing)を対象に論究を展開する.

    具体的には,A社の原価企画への取り組みが,同社が当初期待していたレベルで採算性改善および競争優位の創出につながっていない中で,これらの解決のための方策に関して論究を行うものである.A社の当初予定レベルでの効果が創出されていない要因を外部環境と組織内部リソースの両側面から解明する.その際に,造船業において比較優位を持つと言われる韓国造船企業との比較を行うことで,A社の課題をより明確にする.今回,本研究の成果ですでに公表済みの内容に加えて,新たにA社を完全子会社化したZ造船所(以下Z社と称す)およびA社よりも早い時期に原価企画に取り組んだ造船企業であるF社造船所(以下F社と称す)でのインタビュー調査の結果をふまえて論究の進展を図っている.

  • 今井 範行
    2015 年 23 巻 2 号 p. 33-44
    発行日: 2015/03/20
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    トヨタ生産システムに代表される製造業の経営システムが,中長期視点の重視によりその優位性を実現する一方,株主価値経営の登場と興隆を契機に,企業経営における利益管理の短期化が進行している.株主価値経営が利益管理の短期化に繋がる背景の1つとして,資本市場における株式価値評価の理論と実務がある.すなわち,割安株(低PER株)やサプライズ効果(好決算)が期待される株式を探求する機関投資家の日常的な投資行動が,当該投資家と企業との相互作用としてのインベスターリレーションズ活動を媒介として,企業経営における利益管理の短期化に繋がる.このような中長期と短期のスキーマの対立関係(逆機能)を経営システムにおいていかに統合関係(順機能)に導くかは,現代の企業経営とりわけ製造業のマネジメントにとっての重要課題の1つであり,そのためのアプローチとして,①新たな株式価値評価指標としての潜在株価収益率,②デュアルモード管理会計モデルの2点が展望される.

  • 内山 哲彦
    2015 年 23 巻 2 号 p. 45-59
    発行日: 2015/03/20
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    企業の社会的側面(社会性・人間性)が強調されるようになっているが,経済性と社会性・人間性とが長期的には一致しなければ,持続可能な企業価値の創造は望めない.持続可能な企業価値創造には,多様なステークホルダーの認識とともに,コーポレート・ガバナンスが重要である.コーポレート・ガバナンスの問題は,会社観が深くかかわり,それには国による違いもある.統合報告には「投資家との対話による長期的な企業価値の創造」と「価値創造に影響する多様なステークホルダーの認識(多元的な企業価値の追求)による長期的な企業価値の創造」という大きく2つの役割があり,両者はつながっている.さらに,会社観が異なると統合報告の役割の内容や大きさが異なることが指摘できる.

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