管理会計学 : ⽇本管理会計学会誌 : 経営管理のための総合雑誌
Online ISSN : 2434-0529
Print ISSN : 0918-7863
15 巻, 1 号
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論文
  • 朴 元煕
    2006 年15 巻1 号 p. 3-19
    発行日: 2006/11/30
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    原価企画活動によって生み出された製品の機能,品質,価格,信頼性,納期などの最終評価は顧客によって行われる.したがって,有効な原価企画活動の遂行のためには,価格およびコスト,機能,品質,技術などの情報が必要となる.しかもこれらの情報がタイムリーに獲得できれば開発活動をより迅速に行うことができる.製造段階における原価管理は部品中心のコストテーブルだけでも可能だが,開発設計段階では機能中心のコストテーブルが必要である.また,部品および機能中心のコストテーブルだけでなく品質,技術などの情報も必要である.そこで本研究ではまず第1に,保守の不経済性という壁を低くするためにITを用いてデータベースを構築する.すなわち,機能を中心に目標原価を達成するVE,要求品質をシステマティックに作り込むQFDを用いて部品コスト,機能コスト,品質,技術に関するデータベースの構築方法を明らかにする.第2に,コスト,機能,品質,技術などのバランスの取れた開発設計のために部品コスト,機能コスト,品質,技術のテーブルを相互に関連付けるデータベースの構築を試みる.第3に,製品開発に関する部門およびサプライヤーが空間的・時間的に離れているときに役立てるために,部品コスト,機能コスト,品質,技術に関する情報のインターネットによる共有化を図る.

  • 海老原 崇
    2006 年15 巻1 号 p. 21-34
    発行日: 2006/11/30
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    本研究は,利益の質と,Sloan(1996)で示された発生項目の持続性に関するミスプライシング,そしてミスプライシングに起因する発生項目アノマリーとの関係の検証を目的としている.同様の研究を行ったAhmed et al.(2004)が利益マネジメントの程度を利益の質の尺度としたのに対し,本研究はDechow and Dichev(2002)で提示された発生項目の予測誤差を利益の質の尺度とした.分析ではサンプルを利益の質が高いサブサンプルと利益の質が低いサブサンプルへ分割し,部分期間ごとにHerrmann et al.(2001)とSloan(1996)に従って効率性テストとヘッジ・ポートフォリオ・テストを行っている.分析の結果,本研究の仮説は概ね支持され,発生項目の持続性に関するミスプライシングや発生項目アノマリーに対して,利益の質としての発生項目の予測誤差が大きく関係していることが確認された.

  • 河路 武志
    2006 年15 巻1 号 p. 35-56
    発行日: 2006/11/30
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    企業における個人情報の保護が重視され,情報セキュリティマネジメントとして漏洩事件のリスクアセスメントが必要となっている.これまで,漏洩事件の被害について,技術的対応や顧客対応などの直接的費用は算定可能であるが,信頼性の低下による長期的な売上減少やブランド価値の下落は計り知れないと言われてきた.本研究では,イベントスタディの研究方法を用いて,個人情報漏洩事件直後の株式市場における企業価値の減少を被害予測として測定することを試みた.1997年から2004年に発生した上場企業による漏洩事件118件をイベントとして株式市場の反応を分析した.その結果,平均して-0.667%という有意な負の異常収益率が観察された.また,以前よりも近年の事件の方が,小規模よりも大規模な事件の方が,異常収益率により大きな負の反応があった.近年発生した大規模な事件に限れば,異常収益率は-1.726%と大きく,また,異常収益率のチラバリの1/3が回帰モデルによって説明された.

  • 野坂 和夫
    2006 年15 巻1 号 p. 57-70
    発行日: 2006/11/30
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    本稿では,日本企業による退職給付会計における割引率の会計方針選択行動を著者の実務経験に基づいて考察し,実証的にデータ解析を行うことを目的とする.具体的には,割引率の選択についての会計基準の考察を行ったうえで,日本企業の割引率選択に関する事例を紹介し,いかに割引率の選択に裁量が介入しているかを導き出す.そして,日本企業の割引率選択行動に関する時系列データを概観した結果を踏まえて,時の経過とともに割引率選択の裁量の余地が次第に小さくなっていくこと,および,割引率が一定の適正水準に近似していくことを実務経験に基づいた仮説(横並び選択行動および水準適正化選択行動)をたて,実証的にデータ解析を行った.この結果,『退職給付会計基準が導入されて時が経過し当該会計実務が醸成されていくと,重要な会計方針である割引率は注目されやすく,証券アナリストの目および公認会計士の判断が厳しくなるため,裁量の余地が小さくなる,および,適正水準に落ち着いていく』という横並び選択行動および水準適正化選択行動が確認された.

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