管理会計学 : ⽇本管理会計学会誌 : 経営管理のための総合雑誌
Online ISSN : 2434-0529
Print ISSN : 0918-7863
32 巻, 2 号
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特別講演
  • 庄司 大志
    2024 年32 巻2 号 p. 3-16
    発行日: 2024/03/28
    公開日: 2024/04/12
    ジャーナル フリー

    東日本大震災の被災地である宮城県女川町では,民間が中心となり人口が増えない前提での復興・町づくりに向き合ってきた.その取り組みは人口減少が進む日本全体の再生にとって参考となるだろう.地域企業は震災による諸々の課題を抱えながらも復興を果たそうとする途上で新型コロナウイルスに見舞われた.取引先の業況悪化が懸念される状況下で金融機関が支援を継続するためには経営改善計画の策定が効果的である.

    震災後,女川では主力商品や繁忙期の異なる2社が組んで設立した中小企業が,町全体を考えたバリューチェーンによる地域水産業の6次化を実現し復興の牽引役となった.当該企業は管理会計に基づき各種計画を策定し,金融機関の理解と支援を得ながら震災やコロナを乗り切ってきた.人口減少を背景に不確実性を増す環境下において生き残るためには,中小企業といえども管理会計を構築し,経営(改善)計画を持つことに大きな意義がある.

論壇
  • 山口 直也
    2024 年32 巻2 号 p. 17-23
    発行日: 2024/03/28
    公開日: 2024/04/12
    ジャーナル フリー

    中小企業の競争力向上は,日本経済と地域経済・地域社会の持続性を確保する上で極めて重要である.中小企業が厳しい経営課題に適切に対処し,競争力を向上させるためには,管理会計を効果的に活用していくことが極めて重要である.一方で,近年,中小企業における会計情報や経営管理情報の活用に向けた枠組みや手法の整備が進んでいる.このことから,これら枠組みや手法の導入を手掛かりとして,多くの中小企業が管理会計を活用する素地が整いつつある.

    このような状況の下,中小企業における管理会計の現状と課題について理解を深めることは,研究者や実務家が,中小企業における効果的な管理会計の活用とこれに基づく経営に関する支援を行う上で重要な意義があると考える.そこで,「中小企業管理会計の現状と課題」を統一論題のテーマとした.

  • 牧野 功樹
    2024 年32 巻2 号 p. 25-42
    発行日: 2024/03/28
    公開日: 2024/04/12
    ジャーナル フリー

    本研究は2つの目的を達成するために文献レビューを実施する.1つ目は,中小企業の管理会計研究が対象としてきた「中小企業」概念を整理し,その特徴を明らかにすることで中小企業の管理会計研究の必要性を提示することである.2つ目は中小企業の特徴を踏まえた中小企業の管理会計研究を整理することで今後の研究の方向性を提示することである.そして,中小企業が大企業と異なる固有の特徴を有するが故に,中小企業を対象とした管理会計研究を行う意義が存在することを明らかにする.

  • 飛田 努
    2024 年32 巻2 号 p. 43-60
    発行日: 2024/03/28
    公開日: 2024/04/12
    ジャーナル フリー

    本稿は,あらたな事業機会を見出して事業を立ち上げるような企業家的経営者の行動を分析するフレームワークをもとに,戦略的不確実性が高い状況下での経営管理システム(Management Control System; MCS)の活用について論じる.具体的には,Knight (1921)によるリスクと不確実性についての概念を援用し,企業家が直面する不確実性に対応するMCSのデザインがいかにあるかを探求する.MCSは,予測可能な未来に対する計画(Causation)と不確実性下での意思決定(Effectuation)の両方をサポートするものである.それは,飛田(2021)で示したMCSを通じて経営者が現在の会社と理想の会社とのギャップを認識し,それを埋めるためのシステムデザインを試論的に検討するものでもある.これにより,企業家はMCSを用いてリスクを評価し,事業機会を定義し,経営戦略を策定することで,長期的な判断やアントレプレナーシップを発揚する手段としてMCSを活用するとのモデルを仮説的に提示する.

  • 本橋 正美
    2024 年32 巻2 号 p. 61-76
    発行日: 2024/03/28
    公開日: 2024/04/12
    ジャーナル フリー

    わが国における中小企業は,概して優れた管理会計システムを構築していない.このことは,中小企業における典型的な問題となっている.筆者は本稿で,第1に中小企業管理会計の発展段階モデルについて説明した.第2に,中小企業管理会計の適用基準の説明を行った.すなわち,第1適用基準:TQM/マーケティング管理会計・情報分析アプローチ(TQM/MMAIS),第2適用基準:健康経営アプローチ,第3適用基準:SDGsアプローチ,の3つのアプローチの関係を三角形の図解で明らかにした.そこでは,適用企業モデルを適用対象企業へ適用する関係を適用のトライアングル・システムと呼んで説明を行った.

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