管理会計学 : ⽇本管理会計学会誌 : 経営管理のための総合雑誌
Online ISSN : 2434-0529
Print ISSN : 0918-7863
31 巻, 2 号
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特別講演
  • 井上 潤
    2023 年 31 巻 2 号 p. 3-21
    発行日: 2023/03/28
    公開日: 2023/03/28
    ジャーナル フリー

    本稿は,明治大学で開催された日本管理会計学会2022年度年次全国大会での井上潤氏の特別講演をとりまとめたものである.特別講演では,まず渋沢栄一の人格や思想の形成に重要な影響を与えた生誕地(武蔵国榛沢郡血洗島村)の先進性,藍玉の製造販売を主とする富裕な農家に育った家庭と儒学に基づく教育環境の紹介から始まり,日本の近代化に尽力した渋沢栄一の波瀾万丈の生涯と業績を説明された.とくに財務的・実務的能力が評価された渋沢栄一はパリ万国博覧会の幕府使節団の一員として渡欧した経験から銀行や株式会社,鉄道に大きな関心を寄せ,それら社会的基盤の確立には合本主義が重要だと認識し,また事業を進めるにあたっては何よりも公益を優先し,「論語と算盤」,「道徳経済合一説」の立場から事業活動を実践してきた.さらに渋沢栄一は日本における商業教育や女子教育の普及,社会福祉事業,国際交流にも多大な貢献をした.

論壇
  • 田坂 公
    2023 年 31 巻 2 号 p. 23-34
    発行日: 2023/03/28
    公開日: 2023/03/28
    ジャーナル フリー

    コスト・マネジメントは,言わずと知れた古くもかつ新しい研究領域であり,依然として研究の蓄積が進んでいる.コスト・マネジメントの展開と今日的課題を扱う意義は小さくない.2022年度日本管理会計学会年次全国大会の統一論題では,そのテーマを「コスト・マネジメントの現状と課題」として検討することになった.まず,わが国におけるコスト・マネジメントの歴史的変遷に焦点を当てる.次に,このような変化の下で,3名の統一論題の報告者には,統一論題のテーマをもう少し掘り下げるとともに,理論と実務の融合の観点をふまえて,それぞれの立場で検討していただく.併せて,将来のコスト・マネジメントのあり方はどうなるのかについて,検討する機会となることを期待している.

  • 今井 範行
    2023 年 31 巻 2 号 p. 35-46
    発行日: 2023/03/28
    公開日: 2023/03/28
    ジャーナル フリー

    トヨタのコスト・マネジメントの中核は,原価企画・原価維持・原価改善を3本柱とする改善の継続的なサイクルであり,全社の経営計画の体系のもとで,目標利益達成活動の一環として実施される.トヨタのコスト・マネジメントの要諦は,①コストのマトリクス管理(タテの車種別損益管理とヨコの費目別管理)と,②コスト・マネジメントのヨコ展開(車種を構成する部品・ユニット単位での車種横断的活動)の2点である.トヨタのコスト・マネジメントの今後の課題は,①海外原価企画の体制構築と充実化,②クルマのエレクトロニクス化・ソフトウェア化・EV化への対応(原価構成の変化に対応した原価低減手法の再構築),③組織改革への柔軟な対応,④製造業のサービス化への対応,⑤自動車事業のバーチャル化への対応の5点である.

  • 柊 紫乃
    2023 年 31 巻 2 号 p. 47-67
    発行日: 2023/03/28
    公開日: 2023/03/28
    ジャーナル フリー

    本稿は日本管理会計学会2022年度年次全国大会の統一論題テーマ「わが国におけるコスト・マネジメントの現状と課題」をふまえ,企業競争力の源泉のひとつとされる現場改善に注目し,それを支援するコスト・マネジメントについて考察する.京都大学の上總康行名誉教授とともに筆者が提唱する現場改善会計論(Gemba Kaizen Costing, GKC)は,トヨタ生産システムと「設計情報転写論」に依拠する.GKCでは,原価計算に「機会損失」概念を導入することで改善効果の会計的測定を可能とした.さらに,コスト・マネジメントの視点を,改善により創り出された余剰生産能力というアウトプット管理へと変化させた.本稿では,GKCの概要のほかに,企業の実践事例を通じて,理論の実務貢献可能性についても検討する.

  • 片岡 洋人
    2023 年 31 巻 2 号 p. 69-83
    発行日: 2023/03/28
    公開日: 2023/03/28
    ジャーナル フリー

    企業経営において,原価管理は最重要課題の1~つである.伝統的な原価管理における研究・教育・実務は,標準原価計算を中心に発展してきた.その後,わが国では原価管理が体系化され,また,戦略的な要素を組み込むことや,価値連鎖,源流管理などが強調されることにより,戦略的コスト・マネジメントへ発展したといえる.しかし,原価管理は,製品の製造・販売に焦点を当てた製造業者を出自として発展してきたため,有形の製品のみならずサービスを付加したり,さらに進んでソリューションを提供したりするサービス事業者への転換を図っている状況には必ずしも適応できていない.本論文では,サービタイゼーション原価企画研究の知見に基づき,サービタイゼーションに適応した価値主導型原価計算への展開を整理することで,新しいコスト・マネジメントに求められる役割期待を明らかにしている.

特別講演
  • 菊池 誠
    2023 年 31 巻 2 号 p. 85-98
    発行日: 2023/03/28
    公開日: 2023/03/28
    ジャーナル フリー

    職場の高い離職率の背景には,そこで働く職員のモチベーションの慢性的な低下や新しい挑戦に消極的な組織風土があると考えられる.そしてそのような組織では,コミュニケーションの不全,組織を導く人材の不足などの構造的要因が存在している.この要因を解決するためには,コミュニケーションの活発化,組織を活性化するリーダーの育成などを具体的に実現する施策を講じるツールと,施策を進めていくために全職員のベクトルを合わせる取組が欠かせないと考える.それを実現するツールとして,採用したのがBSCである.この取組で最も重視したのはトップ層と職員との対話である.そしてこの対話は信頼を生み出すのである.

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